その昔、庶民の間で「舶来物」という言葉が使われていた時代があった。「made in U.S.A」「made in Italy」といった欧米の商品が格上で、「made in Japan」は格下――。そんなイメージがあったが、いつのころからだろうか。日本発の商品が多くの人から愛され、「made in Japan」が格下ではなく、世界の仲間入りを果たした。工業製品はもちろんのこと、食品、教育、アプリなど、多岐にわたって世界中の人たちに親しまれている。
世界でウケている商品は、なぜ人の心の打つのか。それは「普通の商品」とは違う何かがあるから。企画、デザイン、販売、努力、失敗、運……さまざまな要素がからみあって、ほかとは違う存在になりえたのだ。
国境を越えた商品は、どのように誕生し、なぜ浸透したのか。Business Media 誠ではその謎に迫っていくために特集「世界で売れてる、日本発のヒット商品」をスタートする。第一弾として、マーケティングや企業戦略に詳しい、永井孝尚(ながい・たかひさ)さんに話を聞いた。
→なぜ海外でウケたのか? ユニ・チャームの紙オムツとコミーの業務用ミラー(前編)
→後編、本記事
オフィス永井代表。1984年に慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。製品開発マネージャー、マーケティングマネージャー、人材育成責任者などを担当後、2013年に30年間勤務した日本アイ・ビー・エムを退職。オフィス永井を設立しマーケティング・戦略などの講演・研修を提供している。
主な著書に、シリーズ50万部となった『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ、『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上、KADOKAWA中経出版)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)などがある。最新著書は、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』(KADOKAWA中経出版)。
問い合わせ先:永井孝尚オフィシャルサイト
土肥: 前回、永井さんは「グローバルまたは国内で活躍している企業には『お客さまが買う理由を考えるためのフレームワーク』(以下、フレームワーク)がある」と指摘されました。ポイントは、(1)自社ならではの強みは何か? (2)その強みを必要とするお客さんは誰か? (3)そのお客さんは何を必要としているのか? (4)お客さんが自社を選ぶためには、どうすればいいのか?――。この4つを徹底的に考えること。実践している事例として、衛生用品大手「ユニ・チャーム」と業務用ミラーを製造・販売している「コミー」を紹介していただきました。
この両社がフレームワークを実践していることはよく分かったのですが、多くの会社はできていないのではないでしょうか。
永井: 結論から言わせていただくと、できていないですね。話は少し横道にそれますが、私が講師を務めるワークショップの席で、参加者にこうした質問をするんですよ。「どうしても欲しいと思って、買ったモノがありますよね。なぜ買ったのですか?」と。そうすると「自分の価値観に合っているから」と答える人が最も多く、「機能の多さ」と答える人はほとんどいません。
これはお客さんの視点ですが、逆にすると企業の視点になります。私たちは、お客さんの立場になると「ぜひ欲しい」という商品を買います。だから企業も、お客さんが「ぜひ欲しい」という商品を考えなければなりません。当たり前のことですよね。「フレームワーク」は、そのことをロジカルに導き出すための考え方なのです。自社の商品がお客さんに提供できる価値観とは何か。ターゲットになるお客さんの課題を考えて、自社として何ができるのかを考え抜かなければいけません。しかも、競合他社ができないことを、です。
しかし企業で働いている人もイチ消費者なわけですから、お客さんの立場になって理解することはできるはずなのですが、なかなか課題が見えてこないんですよ。
土肥: それはなぜでしょうか?
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