さて、お気づきだろうか? 人々、特に日本人はお金にまつわる判断を行う時に「みんなの意見や平均」をことのほか重要視する。ということは「周りのみんなの意見や行動に影響されやすい」ということで、それを逆手に取ったアプローチには極めて弱いということになる。
例えば、広告などで「なんと78%の人が投資を始めたいと思っています」「これは、みんなが選ぶ保険商品ランキング1位です」「豊かな老後を送るには、日本人の平均世帯では1億円が必要です」といった売り文句。具体的な数字を示すことで、より信憑性(しんぴょうせい)を高めている。もちろんウソのない数字だろう。見方によっては、生活者に、「平均」「ランキング」といった一見公平なモノサシを示して、生活や人生設計の手助けをしてくれている、とも言える。
しかし、あえて広告でこういったアプローチをするということは、当然ながら人々に新たな驚きを与え、行動を起こさせるきっかけを作っていると考えるのが自然だろう。「みんながやってるから安心」「周りに乗り遅れたくない」という考えを刺激し、これまでの価値観に変化を起こすことが目的なのである。
そもそも、投資にしろ、保険にしろ、預貯金にしろ、金融の世界では“みんなに人気があること”が幸せにつながっているとは限らない。むしろ裏目に出ることのほうが多い。特に運用の世界では、よく「本当にもうけている人は1割、その利益は残り9割の人によって生み出されている」みたいなことをまことしやかに言う人もいるが、まんざら嘘でもない。
ここで必要なお金のセンスは「人は人」という客観的な冷めた感覚を持つことではない。むしろ、「みんなに人気は黄色信号!」くらいの警戒感を持って丁度いいのだ。
何度も言うが、金融における「みんな」は、つまりはシロウトの集団なのだから。
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