飛行機は本当に「安全」なの? 現役パイロットに聞いてきた仕事をしたら“安全”に飛べた(4/7 ページ)

» 2015年03月25日 07時49分 公開
[土肥義則Business Media 誠]

着陸時は腕の見せ所

土肥: オートパイロットの話がチラっとでてきましたので、そのことについて話を聞かせてください。「飛行機はずーっとオートパイロットで飛んでいる」といった話を聞いたことがあるのですが、これって本当なのでしょうか?

船越: 飛行機の形式によって多少の違いはありますが、オートパイロットで離陸はできません。777の場合で言えば、離陸後200フィート以上(約61メートル)になればオートパイロットを使ってもいいのですが、私は300〜400フィート(約91〜122メートル)の場合が多いですね。長くマニュアルで操縦する人もいれば、短い人もいる。人によって違いますね。

 一方、着陸するときはどうなのか。私は800〜1000フィート(約244〜305メートル)あたりでオートパイロットを切って、マニュアルで操縦します。その際も、長い人もいれば、短いもいますね。

土肥: あれ、着陸のときにもオートパイロットが使えるんですよね。なぜ、わざわざマニュアルで操縦するんですか?

船越: パイロットって、技術職のような感じなんですよね。着陸のときが一番楽しんです……腕の見せ所というか(笑)。

 自分が思ったとおりに着陸できたときには、ものすごく嬉しい。ほとんどのパイロットが、着陸のときにマニュアルで操縦していますね。

 ちなみに、スペースシャトルも着陸のときにはオートパイロットが使えるのですが、最後はマニュアルで操縦する人が多いそうですね。

土肥: 乗客として乗っていて、着陸時に「このパイロットはうまいなあ」「このパイロットはヘタだなあ」と分かるものなのですか?

船越: モニターで着陸時の様子を見ることができる飛行機がありますよね。それを見ていて、「パイロットが思っているコースと少し違うかなあ」ということは分かりますね。ただ、うまい、ヘタは分かりません。なぜかというと、飛行機を操縦しているときは気象条件などさまざまな要因が影響しているんですよね。キャビンに乗っていると、そうしたことが分かりません。

 飛行機の安全な着陸というのは、適度な垂直荷重をもって接地するのがよい、と言われています。きれいに「スー」と着陸するのではなく、「どーん」「どーん」と着くほうがいいんですよ。なぜかというと、車輪が地面に着くと、ショックアブソーバ(振動を減衰する装置)が縮む。それによって、飛行機は地上モードに切り替わるんですよ。例えば、飛行機を減速させるための装置などが使えるようになるので、確実に作動させるために「どーん」「どーん」と着陸したほうがいい。

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