注目されているカープの中で、注目されていない監督に迫る赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2015年03月26日 08時00分 公開
[臼北信行Business Media 誠]

図太いほどの芯が通った男

 現役時代の緒方監督は23年間、カープ一筋。生え抜きとしてチームのためにすべてを捧げた。黒田がメジャーリーグからの高額オファーがありながらも「カープ愛」を貫いて古巣に復帰したことが美談としてクローズアップされているが、この緒方監督にも実は似たようなことがあった。

 広島の主力として自己最多の36本塁打をマークしてFA権を取得した1999年オフ。当時の巨人・長嶋茂雄監督から「現在のプロ野球で最高の野手だ」と熱烈なラブコールを送られた。あの「ミスター」からここまで大絶賛されれば、普通ならばコロッといってしまいそうなもの。

 実際に長嶋監督から口説かれ、巨人入りを決めた他球団の大物FA選手はこれまで枚挙に暇がない。それでも緒方氏は大方の予想を覆し、これをソデにしてカープに残留。巨人側からは広島を上回る破格の条件を提示されていたものの「自分の心はカープにあります」と言い切り、赤ヘルの一員として骨をうずめる覚悟を固めた。

 この熱意は当時の松田耕平オーナーや松田元オーナー代行(現オーナー)を感激させた。「幹部候補生」として将来を約束された緒方氏は、それに甘えることなくカープのために心血を注ぎながら2009年の現役引退後も一軍首脳陣としてユニホームを着続けているのである。

 ちょっぴり余談かもしれないが、緒方監督の妻はタレントの緒方かな子さんだ。1996年に「中條かな子」の名前でグラビアアイドルとして人気絶頂だったかな子さんと結婚した際も緒方氏は「アイドルを好きになったのではなく、たまたま好きになった人がアイドルだった」という“名セリフ”を残している。

 カープのOBは、緒方監督についてはこのように語った。「とにかく格好つけることが人一倍嫌いな性格。前任監督の野村(謙二郎氏)とは違って地味で愚直なところもあるが、図太いほどの芯が通った男だ。従ってブレることもない。金本(知憲氏=元広島、阪神)らそうそうたる面々を育てた名指導者の故・三村(敏之)元監督が生前、自らの背番号9を譲り渡した緒方氏について『ワシの後継者はアイツじゃ』とよく口にしていた。多くの人たちから選手としての能力だけでなく人間性も買われ、高い評価を受けていた」

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