青春18きっぷ、特例を廃止して値下げしないか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2015年07月24日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

1枚のきっぷに4枚のご案内がついてくる

 新幹線や並行在来線の開業によって、さらに複雑なルールが追加された。いわゆる「通過利用特例」である。東北新幹線の八戸駅〜新青森駅間の開業に伴って、東北本線の八戸〜青森が第3セクター化し、青い森鉄道になった。その結果として、八戸線と大湊線がJR東日本の在来線網から孤立した。そこで、これらの路線に乗りたい人のために特例が作られた。「青い森鉄道も利用可能。ただし、JR東日本の駅を乗降するときに限り通過のみ」となった。

 同様の特例が、今年の春、北陸新幹線の開業(関連記事)をきっかけに追加された。北陸新幹線の並行在来線、「あいの風とやま鉄道線」「IRいしかわ鉄道」の一部区間も、JR線接続駅まで通過利用する場合に乗車できる。JR西日本の七尾線、城端線、氷見線が孤立してしまうからだ。

 こうして多くの特例や制限事項を盛り込んだ結果、自動発券機で発行される青春18きっぷについて、2015年春からは、5回(日)分の本券が1枚に対して、同じサイズの「ご案内」が4枚も出てくる。さらにアンケート用紙と説明書があり、発行される用紙は7枚。領収書を希望すれば8枚。クレジットカードで買えばさらに利用控えが1枚追加されて9枚だ。初めて買う人はビックリするに違いない。

 青春18きっぷを説明するなら、これだけの特例や制限を網羅する必要がある。上記は補足したところもあるから長くなっている部分もある。これでもきっぷの文言は省略して書いている。実際の説明文はもっと回りくどい、もとい、細かく説明されている。ご案内の文字が小さくて、老眼には厳しい。

石勝線・津軽海峡線の特例 石勝線・津軽海峡線の特例
新幹線開業による第3セクター鉄道の通過利用特例 新幹線開業による第3セクター鉄道の通過利用特例

北海道新幹線開通でどうなる?

 青春18きっぷを買うと、最大で9枚の紙片が出てくる。そして来年春はご案内がもう1枚増えるかもしれない。北海道新幹線が開業するからだ。

 7月1日の朝日新聞の報道によると、JRグループは青春18きっぷについて、来年春版から青函トンネルの特例を廃止する方向で検討しているという。北海道新幹線の開通後、青函トンネルから在来線特急はなくなり、旅客列車は新幹線のみとなる。従来から青春18きっぷは新幹線に乗れなかったから、青春18きっぷで青函トンネルを通過できない。これは道理にかなう。

 さらに、並行在来線である江差線の木古内駅〜五稜郭駅は道南いさりび鉄道へ転換される。こちらは孤立する支線はないから、通過利用の特例も不要だろう。しかし、青春18きっぷの利用者にとって、本州から北海道への乗り継ぎは魅力的だった。言うなれば、JR北海道の在来線すべてがJR在来線路線網からの孤立路線とも言える。特例として新幹線と道南いさりび鉄道の通過利用を認めるなら、そのための注意書きが増える。認めなくても制限の注意書きが増えそうだ。

北海道新幹線の開業でJR在来線が消える 北海道新幹線の開業でJR在来線が消える

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