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コスプレサミットからカワイイ大使まで――外務省のポップカルチャー外交コミックマーケットシンポジウム(4/4 ページ)

外務省ではトップレベルでの折衝などとは別に、他国民に直接アプローチすることで対日感情を好転させるパブリックディプロマシー(対市民外交)という試みも行っている。12月30日、コミックマーケットで行われたシンポジウムで、外務省中東アフリカ局中東第二課長の中川勉氏が漫画やアニメなどを利用したポップカルチャー外交の現状を語った。

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効果測定が難しい

中川 今までいくつかポップカルチャー外交の施策を説明してきたのですが、他方でまだまだ課題というのはあります。最大の問題は各事業や施策の効果が中々測定できない、証明できないということです。

 事業仕分けというものがありましたが、仕分け人に「こんなことやって何の意味があるんですか?」「どんな効果があったんですか?」「数字を示してください」なんて言われてしまうと、「ごめんなさい。ちょっと苦しいです」ということになります。しかし、プレスに取り上げられた回数や、イベントへの動員数などを考えると、従来の文化事業とは比較にならないほど大きな効果があると思っています。

 また、効果測定が難しいということとも関係しますが、いろいろやってみると「結局、何のためにやっているのか」が怪しくなってくることがあるんですね。というのは、事業効果としてすごく実感できるのは、(対日感情の向上というより)コンテンツの普及や振興、発信といったことなんです。しかし、このコンテンツの普及や振興というのは、実は外務省の仕事ではなく、文化庁や経済産業省の仕事なのです。ここもある意味割り切りの世界で、コンテンツが普及したり、広がったり、愛されたりしていないと、そのコンテンツを活用する文化事業というのは効果がないわけですから、「コンテンツの普及や振興、輸出促進などは文化事業と表裏一体と考えてもいいのではないか」という気はしています。

 最後に、ポップカルチャー外交の意義として、「これまでの通常の外交活動では見えてこなかった人たち、潜在的な日本ファンというのが世界中のいろんなところにいろんな形でいるんだなあ」と分かってきたということが挙げられます。そうした潜在的な日本ファンを掘り起こして、よりコアで積極的な日本ファンにしていくということが、私たちのこれからの課題なのではないかと思っています。

 せっかくコミケに来たものですから、コミケへの期待を語って終わりたいと思うのですが、日本の漫画やアニメがソフトパワーになっているのは、それぞれの作品が魅力的であり、憧れるものであるからだと思います。だとすると、日本の漫画やアニメが今後もずっとソフトパワーたりえるために何が必要かというと、絶え間なく次から次へと新しい魅力あるコンテンツが生まれてこないといけないということです。「その活力の源というのが多分このコミケにあるんだろうなあ」と思っています。

 Japan ExpoやSalon del MANGAの例を何回も挙げましたが、こうした大型イベントでは必ず同人誌を紹介するエリアや販売するエリアが隣接して設けられています。まさにフランス版、スペイン版のコミケといった感じなんですね。そしてそこに集まってくる人たちが憧れて目標にしているのが、この東京ビッグサイトでの夏と冬のコミケだと思っています。世界中のアニメファンが聖地と思って、「一生に一度でいいから来たい」と思っているのではないでしょうか。コミケがいつまでも活力のある場として存在し、また世界中の漫画やアニメファンに対しても開かれた場であってほしいと強く願っています。


Japan Expoにて(写真は外務省提供)
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