営業マンの評価基準、“売上ベース”から変えるには?(2/2 ページ)
営業改革の一環として報酬やインセンティブのベースとなる評価制度を「是正」するなら、反発を覚悟する必要がある。それでもやるのであれば……。
しかしながら現行の営業マンの評価・報酬制度があまりに個人/結果/売上、そして金銭に偏ったものであれば、それがもたらす歪みは中期的には無視できないものとなろう。営業マン同志が足の引っ張り合いをするところまでは行かなくとも、少なくともベテランや中堅が若手を育てる土壌ではなくなり、着実に若手の定着率の悪化をもたらす。これは経営的にはボディブローのように効いてくる。
そして金銭的報酬、インセンティブの厄介なところは、上昇場面では士気向上効果は逓減(ていげん)するくせに、少しでも下降する場面になると途端に不満を掻き立てることにある。しかもそれまでの報酬額の蓄積とは無関係に、である。これは国内外の有力研究機関での研究でも証明されている。ずっと金銭的報酬が上がり続けない限り(これはほとんどの職場で非現実的な話だろう)、いつか不満をもたらすということである。
単純な絶対正解というものはないが、対処できなくなるほど問題が厄介になる前に、営業マンの評価・報酬制度には少しずつ是正の手を入れておくほうが賢明だといえそうだ。
その際の改革の方向も熟考すべきだ。多くのケースで望ましいのは、個人成果に対する金銭的な報酬、インセンティブだけに依存せずに、チームやブランドへの貢献に対する賞賛(社内、顧客、家族などから)、仕事レベルの向上(権限拡大など)、社会的意義への貢献といった要素を適切にとり交ぜることではないかと思う。つまり「チーム貢献」「精神的な報酬」の比重を上げていくのである。(日沖博道)
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