英語の中の「中国語」とどう付き合うか?:ビジネス英語の歩き方(3/3 ページ)
北京や上海といった大都市以外の中国の都市名や人名を、日本人は漢字の日本語読みで覚えています。ところがビジネス英語の中に登場する中国語は、元の中国語の音で出てくるから困ってしまいます。
中国語の固有名詞が出てきたら翻訳サイトを活用する
英語の中に中国の固有名詞が出てきた場合、もう何度か触れたように翻訳サイトに張り付ければ、たちどころに漢字に変換できます。元の言語のところで英語を選び、翻訳したい言語を日本語にするだけで、元の漢字を表記してくれるのですから、ありがたい限りです。
例えば、ウォールストリートジャーナルを読んでいて、こんな記事に出くわしたとします。最近話題の空気汚染に関する記事です。
On Tuesday, Beijing's acting mayor, Wang Anshun, pledged to remove 180,000 old vehicles from the roads and replace dirty coal-burning boilers in some Beijing homes, among efforts aimed at drawing down major air pollutants by 2% this year, according to the state-run Xinhua news agency.
この中に出てくる北京(Beijing)の市長代理を務めるWang Anshunという人は、王安順と書くらしいこと、情報源の通信社は「新華社(Xinhua)」であることが分かります。
日本語から中国語にする場合でも、ほとんど瞬時に翻訳できます。しかし、その中国語がはたして正しいのかどうか、不安が残ります。もちろん非常に大事なビジネス文書などでは日中両国語に堪能な人のチェックが欠かせませんが、日常的なメールなどで使う程度なら、もう少し簡単にチェックする方法があります。
機械翻訳された中国語を、もう一度、日本語に機械翻訳してみるのです。英語に自信があるならば、中国語から英語に翻訳して、それが自分の言いたい内容にあっているかどうかをチェックしてみるのも有効です。
ただし、だいぶ精度が上がったとはいえ、まだ変な翻訳も多いのも事実ですから、とりあえずはメール冒頭の時候の挨拶と、末尾の「よろしくお願いします」の部分くらいに使うのが安全なところではありますが。
ジォノバークの謎
このような異なる言語間での読み(間)違いは、日本語と中国語の間にだけ存在する問題ではありません。
もうだいぶ前になりますが、ニューヨークで仕事をしていたころ、米国人が「ジォノバークは実に勇敢な女性だった」というのを聞いて、何と答えていいか分からず、しばらく絶句した記憶があります。そのときは、ちょっとした歴史の話をしていたのですが、ワシントンやリンカーンくらいは知っていても、ジォノバークなんて人のこと、まったく聞いたこともありません。
仕方なく「それ、どんな人?」と、控え目に聞いてみたのですが、「エッ、知らないの?」という顔をされ、「ジォノバークはたぶんフランスで一番有名な女性じゃないか」といわれて、ハッとひらめきました。「それって、ひょっとして百年戦争で活躍した女性?」と言ってみると、「そうそう、知ってるでしょ?」と相手もほっとした様子。
「だったら、ちゃんと『ジャンヌ・ダルク』と言ってよ」と突っ込みを入れたいところでしたが、そこはぐっとこらえて、会話をつづけました。せっかくJeanne d'Arc(アルクのジャン)というフランス語で覚えているのに、英語ではジャンヌがジョーンと変わり、Joan of Arc(ジョーン・オブ・アーク)に。会話では「ジォノバーク」。ジャンヌ・ダルクとはえらい違い。困ったものです。こういうことは、基本的に同じ文字を使う異文化の間では、頻繁に起こっているわけですね。疲れるのは、日中の間だけではないようです。
著者プロフィール:河口鴻三(かわぐち・こうぞう)
1947年、山梨県生まれ。一橋大学社会学部卒業、スタンフォード大学コミュニケーション学部修士課程修了。日本と米国で、出版に従事。カリフォルニアとニューヨークに合計12年滞在。講談社アメリカ副社長として『Having Our Say』など240冊の英文書を刊行。2000年に帰国。現在は、外資系経営コンサルティング会社でマーケティング担当プリンシパル。異文化経営学会、日本エッセイストクラブ会員。
主な著書に『和製英語が役に立つ』(文春新書)、『外資で働くためのキャリアアップ英語術』(日本経済新聞社)がある。
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