「アンゾフのマトリックス」で読む、JR東日本の戦略:公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」(後編)(2/2 ページ)
JR東日本がクルーズトレインを新造し、2016年に運行を開始すると発表しました。今回は、同社が定期収入の減少に対してどのような手を打つのか、アンゾフのマトリックスを使って考えてみましょう。
新製品開発と市場浸透戦略
では、それ以外の、例えば「新製品開発戦略」には何が当てはまるでしょうか。
「現役世代に対して、鉄道以外のサービスを何か行うとしたら……」
「きっぷや定期券以外に、お金を払うものがあるとしたら……」
そう、「物販」という手段があります。例えばJR東日本が最近力をいれている駅ナカ事業は、主に20〜30代の現役世代が対象である一方、従来のような駅を単なる移動のための中継地とするだけでなく、ショッピングスペースとして提供することで利益の拡大を狙っているわけですから、アンゾフのマトリックスでいう「新製品開発戦略」に該当する、ということになります。
駅ナカというくくりだけでは既存の戦略を後追いしただけになるので、少しひねりを加えてみます。例えば、山手線内で電子書籍をダウンロードできるサービスを考えることもできます。
次は「市場浸透戦略」。ここは既存顧客への既存サービスの提供なので何も工夫の余地がないように見えますが、頭をやわらかくするとアイデアは出てきます。例えば、深夜の時間帯に割増運賃で列車を運行するという案は、今まで終電で帰れなかった乗客を取り込むことができそうです。
ちなみに、こういうアイデアを考えるときに「失敗しそう……」という発想はタブーです。JR東日本の社員なら真剣に戦略を練るべきところですが、そうではない一般の人がニュースを見て頭の体操をするつもりで考えるときには、どんどん柔軟なアイデアを出してみたほうが楽しめるのではないかと思います。ニュースを題材にたくさんトレーニングをしておけば、いつかビジネスの場で大成功の種をつかめるかも知れません。
残りのひとつである「多角化戦略」。あなたならどんなアイデアを出しますか? (眞山徳人)
※この記事は、誠ブログの公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」:JR東日本「豪華寝台列車」を分析してみた(2/2)より転載、編集しています。
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