デジタルマーケッターよ、自社がどうやって稼いでいるか知っているか?:ネット広告の先駆者に聞く(5/5 ページ)
マーケティングは長嶋監督の「カンピュータ」から野村監督の「ID野球」に変わるべきだ。日本のインターネット広告業界を常に一歩早く歩んできた横山隆治氏に、デジタルマーケッターのあるべき姿を聞いた。
データを全社員に強制的に浴びせ続けろ
岡田: 企業が大きくなると、どうしても分業制になると思います。だから部門違いで知らないという状況も往々にしてあり得そうです。でも、今のビジネスは高度に専門特化していて、マーケティング、営業、ブランディング、顧客対応と業種が分かれています。最近ではソーシャル担当という新しいジャンルも登場しています。そして、それぞれが専用のツールをもち、個別の指標でデータを持っているのではないでしょうか?
横山: 確かにサイロ化(他部門と連携しなくなり、部門内で完結してしまうこと)は課題の1つに挙げられます。マーケティングツールにもいろいろなものが導入されていますが、最近のトレンドでいえば、ツールは一元化が進んでいます。
ご質問のとおり、それぞれが個別にデータを引き出して活用していますが、それが会社全体でシェアされているかというと、そうではない。だから、プライベートDMPを導入して、会社が持つデータを集約することが求められています。
でも、DMPを導入したからといって、それまで使っていたツールが不要になるということではありませんし、そのスキルがムダになることもありません。むしろ、タコツボ化してしまった組織から、スペシャルタスクフォースのようなものを作って人員を供出し、それぞれが持っているデータや指標をシェアすればいいと思うのです。
その会社にはどんなデータがあって、それを全社レベルで活用することで何ができるようになるのか。そうすると、当然、今後はどのデータを指標とするのかといった議論が起こりますから、デジタルマーケッターにはファシリテーターとしてのスキルも求められるようになるでしょう。
いずれにせよ特別プロジェクトとしてやってみることは、企業のマーケティング文化をデータドリブン(データ駆動型)なものに変える良い機会になると思います。もっとも、これをやるには経営トップの号令が必要ですから、そういう人たちの理解を促すことも重要ですね。
岡田: スペシャルチームの人から、他部署のデータや情報の共有が進み、企業全体がデータを基にしたマーケティング施策を取れるようになるということですね。
横山: 最後にもう1つ付け加えるとすれば、どんどんデータを社員に浴びせかけることが重要です。スクリーンセーバーのようなものでもいいし、大画面モニターを設置してもいいのですが、リアルタイムのデータと一定期間蓄積したデータを強制的にプッシュし続けていくのです。
これまでのように、自分のPCの中だけにデータをもっているようでは、自分に都合の良いデータしか目に入らなくなります。全社員が同じデータを見ている、知っているんだという前提になっていれば、何らかの施策を考えたり、その評価をしたりするときに議論となっても、「君はアレ、ちゃんと見てるよな。あのデータを見ているのに、こういう考えなのか?」と話が通じやすくなるはずです。
大企業になればなるほど、サイロ化が進むというのはあらゆる企業で課題になっています。部署ごとに分かれてしまうのではなく、企業が一丸となって消費者のライフタイムバリューを挙げることが必要だというのは理屈上、絶対に分かっているはずなんです。
横山隆治
1982年青山学院大学文学部英米文学科卒。同年、旭通信社入社。1996年インターネット広告のメディアレップ、デジタルアドバタイジングコンソーシアムを起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2001年同社を上場。
インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。2008年、ADKインタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。2010年9月デジタルコンサルティングパートナーズを主宰。2011年7月、デジタルインテリジェンス代表取締役に就任。2012年4月よりワン・トゥー・テン・ホールディングス社外取締役も兼任。
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