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iPhone版「Google マップ」の使い勝手/「203SH」IGZO搭載の理由/ドコモ純減の背景石野純也のMobile Eye(12月3日~12月14日)(3/3 ページ)

iPhoneユーザーにとっては待望とも言える「Google マップ」が13日にApp Storeで公開された。使い勝手はどうか。急きょディスプレイに「IGZO」搭載が決まった「AQUOS PHONE Xx 203SH」と、2012年11月にドコモの契約数が純減した背景についても解説したい。

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TCAが11月の契約者数を発表、ドコモの純減はiPhoneが理由?

 電気通信事業者協会(TCA)は、7日に11月末時点の携帯電話・PHS契約者数を発表。11月の純増数やMNP利用状況も明らかになった。純増数は、ドコモが-4万800、KDDIが22万8800、ソフトバンクモバイルが30万1900となった。MNP利用状況はドコモが-21万2100、KDDIが16万5100、ソフトバンクモバイルが4万7900。とりわけ大きな注目を集めたのが、5年3カ月ぶりとなるドコモの純減だ。21万2100という、大きな転出超過もニュースになった。

2012年11月純増数
キャリア 2012年11月純増数 累計
NTTドコモ -4万800 6075万3000
KDDI 22万8800 3657万7900
ソフトバンクモバイル 30万1900 3104万7300
イー・アクセス 非公開 非公開
携帯総計 48万9900 1億2837万8200
MNP利用状況
キャリア 差し引き
NTTドコモ -21万2100
KDDI 16万5100
ソフトバンクモバイル 4万7900
イー・モバイル -900(推定)

 さまざまなメディアで原因として挙げられているのは、やはり9月に発売された「iPhone 5」だ。ドコモも、自社の純減要因を「ポートアウトが多かったのが一番。iPhone 5がその原因」と分析している。ソフトバンクモバイルも「iPhone 5は好調で、GFK調べて総販売台数は6割を占めている」という。大手3キャリアの中で唯一iPhoneを扱っていないドコモから、他社へユーザーが流出しているというのが、その理屈だ。

 ただ、確かにiPhoneの不在は大きいが、あくまで理由の1つにすぎない。筆者はこのように考えている。日本で発売されたiPhoneはすでに3G、3GS、4、4S、5と5世代目に突入しているが、そのいずれもドコモは扱っていない。4SからKDDIが参入し競争が激化したとはいえ、iPhoneだけが原因であるならば、毎年、同程度の純減をしていても不思議ではないだろう。むしろ、iPhone 4Sが発売されたばかりの昨年11月は善戦していたようにも思える。

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MNPの利用状況の推移

 実際、KDDIは「Androidの販売も好調で、J.D.パワーの顧客満足度調査でトップを獲得するなど、キャリアに対する満足度が上がっている」といい、iPhoneだけが主な要因とは考えていないようだ。「LTE対応のAndroidが発売され、MNPでの比率は徐々に上がっている」(KDDI広報部)といい、Androidにも十分な訴求力がある。ドコモも「機種変更は想定の範囲で推移している」というように、端末に魅力がないわけではなさそうだ。料金プランに関しても、各社ほぼ横並びだ。むしろ、3Gバイトまでの「Xiパケ・ホーダイ ライト」を選べる分、使い方によってはドコモの方が安く収まる可能性がある。


ドコモが会見で公開した、基地局数の比較。数の上ではリードしているが、周波数帯が異なるため、基地局が多いほどエリアが広いわけではない。エリア構築では800MHz帯が有利なことを考えると、今以上の基地局数が必要になりそうだ

 とすると、残るのはネットワークやサービスになる。約2年間先行していたXiだが、エリア、速度ともに800MHz/1.5GHz帯を利用するKDDIの「4G LTE」に押され気味だ。スループットに関しても、Xiユーザーの増加を受け、都市部では大幅な低下が見られる。2GHz帯を3Gから移行しているため、10MHz幅(下り最大75Mbps)を確保しにくいのもその原因の1つだ。ドコモが開催した11月16日の記者会見では、基地局数(より正確に言うと免許申請数)が他社より多いことをアピールしていた。東京23区では2681、政令指定都市では6061、中核市では2713と、いずれも他社よりは多い。ただ、KDDIの800MHz帯は東京23区で1325、政令指定都市で3502、中核市では2326で、この周波数の浸透性が高いという特性を考えると、エリアではドコモに十分対抗できている。

 中核市に関しては基地局の数もそれほど変わらないため、LTEを始めたばかりのKDDIに、エリアで大敗している可能性も高い。先行している分、仕方のない側面はあるが、ユーザー数あたりの基地局も他社に及んでいない状況だ。事実、TCAの数値を地域別に見ると、ドコモの純減は関東甲信越の純増が、他の地域の純減をカバーしきれていないことが分かる。auとソフトバンクを含め、iPhone 5の対応する2GHz帯同士で比較すると、基地局数ではドコモのリードは依然続いているが、Androidについてはネットワーク品質で他社に押されつつある。であれば、同じブランドの端末がある他社に移るユーザーが増えるのは、自然なことだ。

 その上で、サービスについては、MNPの障壁になっていたキャリアメールも、LINEをはじめとするサードパーティのサービスが登場したことで重要性が低下しつつある。LTEで2年のリードが生かし切れていない――ポートアウトしたユーザー全員の声を集めることはできないため、あくまで推測になってしまうが、純減の一因には、ドコモのネットワーク競争に対する読みの甘さもあったような気がしている。

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