ドコモ、KDDI、ソフトバンクの決算会見を振り返る――今後の高速通信サービスは?:石野純也のMobile Eye(7月22日~8月2日)(1/3 ページ)
7月27日にドコモ、30日にKDDIとソフトバンクが決算会見を開き、今後の戦略も語られた。今回は3社の決算会見を振り返るとともに、ここで明らかになった重要なトピックを取り上げていく。
7月27日にドコモ、30日にKDDIとソフトバンクが第1四半期決算を発表。前年同期比での結果は、NTTドコモが増収減益、KDDIが増収増益、ソフトバンクが増収増益だ。3社とも増収なのは変わらず、利益ではドコモのみが減益となった。売上高や営業利益は、第1四半期の総まとめともいえる数値だ。一方で決算会見では、今後に向けた戦略なども発表されている。今回の連載は、キャリア別にここで明らかになった重要なトピックを取り上げていきたい。
150MbpsのLTEをスタート、ツートップも好調なドコモ
ドコモの第1四半期は営業収益が1兆1136億円、営業利益が2475億円で、12年度第1四半期の1兆723億円、2626億円から増収減益となった。同社は毎月の純増数やMNPでのポートアウトに苦しんでいるが、「ツートップの発売以降、ポートアウトや解約率にも改善の兆しがある」(代表取締役社長 加藤薫氏)という。
ツートップに指定された「Xperia A SO-04E」と「GALAXY S4 SC-04E」は、それぞれ累計110万台と55万台を突破。Xperia Aは62%がフィーチャーフォンからの機種変更、GALAXY S4は50%がスマートフォンからの機種変更という形となった。もともと、ツートップはスマートフォンへの買い替え促進と、他社へのポートアウト抑止を目的として導入された施策だ。数値を見る限りでは、一定の成果を果たしているといえる。副次的な効果として、「店頭での対応時間短縮につながった一面もある」(加藤氏)という。
一方で、他社からユーザーを獲得するポートインは「6月は少し少なかったのが実態」(加藤氏)だ。ここには「キャッシュバックを控えた影響があった」という。実際、店頭での状況を見てみると、夏商戦では他キャリアが当初からMNPでのキャッシュバックを手厚くしていた。加藤氏は明言しなかったものの、iPhone 5に積まれた高額なキャッシュバックがポートインをためらわせる要因の1つになっていたようだ。これに対してドコモは「6月末から変え、7月は手応えを感じている」という。実際、ドコモはXperia A以外の月々サポートを手厚くするなど、価格面での優遇策をさらに推し進めている。
ネットワークについては、7月30日から神奈川県の一部で下り最大150MbpsのLTEを試験的に開始している。150MbpsのLTEは、「Bnad 3」と呼ばれる1.7GHz帯を用いたもの。20MHz幅を利用して、この速度を実現した。正式なサービスインは10月だが、当初は「基地局はそれほど多くない」(加藤氏)。次のステップで、「都市部を中心に東名阪を充実させていく」という。今後発表される秋冬モデルは、この150Mbps対応が1つの目玉になりそうだ。
サービスでは、dビデオやdアニメといった動画サービスや音楽サービスのdヒッツが健闘した。加藤氏は「直近の数字でdビデオが455万契約、dヒッツが140万契約、dアニメが92万契約まで伸びている」と話し、これらを「dマーケットの大黒柱」とした。実際、これらコンテンツの充実ぶりには目を見張るものがある。dビデオは機種変更時の値引きとセットになっているケースも多く、必ずしも実力を正確に表した数字ではないかもしれないが、解約も容易だと考えると、ユーザーには受け入れられていると判断してもよさそうだ。dヒッツやdアニメはこうした売り方もあまりされていないが、じわじわと人気が出ていることがうかがえる。
関連キーワード
決算 | NTTドコモ | Xperia A SO-04E | ツートップ | KDDI | LTE(Long Term Evolution) | 石野純也のMobile Eye | GALAXY S4 SC-04E | ソフトバンク | キャッシュバック | dビデオ | dマーケット | 番号ポータビリティ | 試験サービス | 基地局 | 解約率 | iPhone 5 | 音楽配信
関連記事
- 「石野純也のMobile Eye」バックナンバー
純増は苦戦:ドコモ、「Xperia A」を110万台販売――ツートップはスマホ移行に効果あり
ドコモが2014年3月期第1四半期の決算を発表。ツートップの「Xperia A」を110万台、「GALAXY S4」を55万台販売したことを明らかにした。純増は苦戦したが既存ユーザーのスマホ移行が進んだという。「提案が評価されたと思っている」:KDDI田中氏、「スマートフォンでもWiMAX 2+を利用したい」
KDDI、2014年3月期第1四半期の決算を発表し、増収増益となった業績の理由を説明した。また、2.5GHz帯域追加割当にともなうWiMAX事業の展開も語っている。ドコモ超えは「ほぼ明確に見えてきた」、次は世界ナンバー1を目指す――ソフトバンク孫社長
300年成長する企業へ――これを実現するための第1章にかかげた「国内ナンバー1になること」が明確に見えてきた、とソフトバンクの孫社長は話す。そして孫氏が次に見据えるのが「世界ナンバー1」。2014年3月期第1四半期の決算発表で、その具体策を語った。石川温のスマホ業界新聞:孫社長が「UQへの2.5GHz割り当て」に猛抗議――「泣き寝入りはしない。行政訴訟で断固戦う」
7月26日の電波監理審議会で、2.5GHz帯の新たな周波数をUQに割り当てるとの答申が出たが、これに異を唱えたのが、ソフトバンクの孫社長と宮川潤一CTO。総務省の廊下で行われた囲み取材で、2人の「恨み節」を聞くことができた。2013年10月サービスイン、当初は110Mbpsから:UQ、1Gbps超「WiMAX 2+」サービス開始へ
2.5GHz帯/20MHz幅の追加割当がUQコミュニケーションズに決まった。これを受け、UQはより高速化したモバイルブロードバンドサービス「WiMAX 2+」を2013年10月に開始する。透明化を訴える一方で大人の対応も:孫氏と宮川氏、BWA追加周波数割り当てで総務省に要望書
7月25日未明の「追加割り当てはUQに」報道を受けて、Wireless City Planningは審議延期を“激しく”要望。このままでは「50対20」の苦しい状況になるという。石川温のスマホ業界新聞:ソフトバンクがスプリント買収をついに完了――ユーザーメリットはどこまで実現されるか
ソフトバンクがスプリント・ネクステル・コーポレーションへの投資を完了し、スプリントが子会社化された。その後、スプリントは通話、SMS、データ通信を定額で利用できる新料金プランを発表。ソフトバンクらしいスピード経営が実証されたと言えるが、日本のユーザーに今後メリットは生まれるのだろうか。石野純也のMobile Eye(6月10日~22日):ドコモ、ソフトバンク、KDDI――三者三様の株主総会で見えたもの
6月18日にはドコモ、19日にはKDDI、21日にはソフトバンクが株主総会を開催し、新たなトピックも見えてきた。今回は3社の株主総会で明らかになったニュースをピックアップしてまとめていきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.