データ増量でサービスを強化する「OCN モバイル ONE」――目指すは大手キャリアに並ぶ選択肢:MVNOに聞く(2/2 ページ)
「OCN モバイル ONE」でデータ通信サービスを提供しているNTTコミュニケーションズが、10月1日から4つのプランでデータ通信量を増量したほか、3日で366Mバイト通信した場合の速度規制を撤廃した。こうした改定の狙いと今後の展開について、NTTコムに聞いた。
IIJが無制限プランを始めたら追随する?
―― NTTぷららさんが3Mbps使い放題のプランを展開しています(→“月額2980円で3MbpsのLTEが使い放題”の衝撃――NTTぷららに聞く「定額無制限プラン」の狙い)が、1カ月に100~200Gバイト使う人がいるという話も出ました。プランの内容に応じて使い方も変わってくるのですかね。
新村氏 だと思います。あれは無制限にするから、そういう人が出てきてしまう。うちも無制限があるといいんですけどね。オープンコンピューターネットワークなので(笑)。
―― ぷららさんとはプランのすみ分けなどで意見交換をされているのでしょうか。
新村氏 光のサービスもそうなんですけど、自由にやっていこうという話になっています。同じチャネルで一生懸命値下げ合戦をするようなことが起きたら、会話をすることはありますが、基本的に自由にそれぞれが展開しています。なので、ぷららさんが使い放題のプランを出すというのも、当日、報道発表と同じくらいのタイミングで知りました。
―― そうなんですね。
新村氏 分かりやすく言うと、自由競争の状態です。
―― 御社が無制限プランを出しても問題ない。
新村氏 全然問題ありません。ぷららが出しているので、あえてうちで出さなくてもいいという考えはあります。しかし、IIJさんなどの他社さんが無制限プランを出して、売れていたら、ぷららでは対抗しきれないから、うちでも対抗していかないといけないと思います。
ぷららとはもともと戦略がバッティングしていません。MVNO事業についても、OCNと同じプランを出すという発想をぷららはしないので、いちいち調整しなくてもいいというのもあります。
―― 今回の増量は、対キャリアという意識もある。
新村氏 「格安SIM」と言われるレベルから早めに脱したいと思っています。大手キャリアさんとガチンコ対決という意思を持っているわけではないけど、そのレベルに近づけないといけない意識を持っていたのは事実です。そうしないと、ユーザーの選択肢の中に残らないと思うんですね。なので、「これを使うと安いじゃん」というレベルには持っていきたい。
うちはシンプルに出しています。街に行ってもショップもないかもしれませんが、電話を掛ければきちんとサポートします。端末は自らがお持ちのものを活用いただくか、2台目でモバイルWi-Fiルーターを持ってつなぐのもいいですし、タブレットを持っていただくのもいいです……というスタンスでやっています。
音声通話は検討中も、「BIC SIM」は注目している
―― 2台目の選択肢とおっしゃっていますが、通話サービスも始めて、MNPで移ってもらって1台目として使ってもらうことも可能だと思うのですが。
新村氏 通話はお客さんのニーズを見ている状況です。「やりたいです」という思いがあるわけでもなく、「やらないです」という意思があるわけでもない。そこはけっこうフラットに見ています。
他社が音声SIMを出している中でも、OCN モバイル ONEの販売は落ちておらず、依然伸びています。となると、「本当に音声SIMっているのかな?」と自分の中ではクエスチョンマークが付いています。確かに、あるかないかで言えば、あった方がいいのでしょうが、「他社が出していてどうなんだ」と上から言われているかと言えば、そうでもありません。
また、「050plus」はOCN モバイル ONEユーザーなら(月300円のところ)150円で使えます。「お持ちのスマホにSIMを挿して通話ができます」と言った方が、今のところまだいいかなと思っています。一方で、格安SIMの次をお客さんがどう認識するかを見極めることが重要だと思います。中に入っているSIMを自分で選ぶことを、みんなが理解し始めたら、音声SIMも必要になるかもしれません。
今、競合他社で一番注目しているのは「BIC SIM」ですね。IIJさんというよりは、ビックカメラで展開していることですね。あれでBIC SIMが売れるということになると、うちも必要かもしれないなと。
―― BIC SIMは、カウンターでのMNPがかなり増えているようです。
新村氏 自分も有楽町まで見に行くと、座っているなーと(笑)。
―― 音声もやると、さらにユーザーが増えるんじゃないかとは思います。
新村氏 そこですね。競合としては一番興味を持っています。
―― 量販店での販売状況はいかがでしょう。
新村氏 量販店のつるし販売といわれるものは、エディオン、ヤマダ電機、ヨドバシカメラでやっています。また、量販店で光サービスとの抱き合わせ販売(冷蔵庫と一緒に買うと割引するなど)も行っています。両方を合わせると、けっこう出ていますね。一番売れているのはAmazonで、その次ぐらいが量販店です。
エディオンさんは積極的に売ってくれています。名古屋、大阪、広島が特に多いです。エディオンが「Ascend G6」を調達して、OCN モバイル ONEとセットで売っている。いわゆるダブルネームパッケージのような形です。
―― NTTコムさんも端末のセット販売はやっていますよね。
新村氏 「LG G2 mini」と「ZTE Blade Vec 4G」があります。ZTEはすごく売れていますね。NTTコムストアで売っているのですが、初期ロットが1カ月ちょっとで完売しました。
―― ZTEはキャリアが販売するスマートフォンは苦戦している印象でしたが、今回は売れていますね。格安SIMとセットなのが大きいようです。
新村氏 あとは安いからというのもありますね。あのスペックで2万円を切りますし、解約金などの縛りもないので。
―― ZTE Blade Vec 4Gは、NTTレゾナントの「goo SimSeller」と共同で販売されていますよね。グループ内で販売網も強化していくと。
新村氏 NTTレゾナントさんは、一次代理店の契約も結んでいて、うちのSIMも積極的に販売するというスタンスでご協力いただいています。その流れでZTE端末も調達いただいて、goo SimSellerの商品をNTTコムストアで売る契約もしています。
―― 最後に、今後の意気込みをお願いします。
新村氏 ユーザーさんに満足してもらえるレベルは、市場の変化によって変わってくると思うので、それを見ながらサービスを強化していきたいと思っています。大手キャリアを含めた選択肢として、そん色ないレベルに近づけていきたいですね。だからといって、(大手キャリアと)同じレベルのゴールを目指しているわけではありません。「安かろう悪かろう」からは脱して、「こういう仕様でだから安いんだね」というのが、受け入れられるレベルを目指していきたい。
あわせて、販売チャネルと、「ジブンゴト化」してもらえるユーザーへの認知の向上は進めていきたいです。今のユーザー層はリテラシー高い人と初心者の両極端になっていて、その中間層が置き去りになっているので。戦略PRで醸成していくのが大事だと思っています。
音声サービスを始めて、さらにMVNO業界を盛り上げてほしい
OCN モバイル ONEがシェア1位を獲得できている背景には、「NTTブランド」の力によるところも大きい。OCN モバイル ONEで音声サービスが始まれば、固定とモバイルの両方で音声を提供しているNTTのブランド力で、さらにユーザーを獲得できるはずだ。
NTTコムは実店舗を持っていないのでMNPの手続きが不便になるが、IIJのビックカメラと対抗してヨドバシとタッグを組んで、カウンターを設置するなど、方法はいくらでもあるはず。キャリアと並ぶ選択肢になるには、やはり音声は不可欠。2台目需要だけでなく、NTTコムが1台目を本気で取りに来るようになれば、MVNO業界がさらに盛り上がることは確実だ。
一方、NTTコムが音声を始めると、ドコモとのすみ分けが難しくなりそうだが、ドコモとNTTコムが「ソフトバンクモバイル」と「ワイモバイル」のような関係になれば(実際、ワイモバイルもソフトバンクの通信網を利用している)、通信キャリアの勢力図を変える事態にまで発展するかもしれない。
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