「実質0円終了」の功罪――通信キャリアとメーカーに与える影響を考える:石野純也のMobile Eye(2月1日~12日)(2/2 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3キャリアはいずれも増収増益と好調だが、総務省の要請で販売適正化のガイドラインが出されたことで、各社は実質0円の販売を自粛している。こうした市場動向の変化を各社はどう受け止め、どんな影響をもたらすのだろうか。
メーカーにとっては受難の時代になるか
一連の販売方針の変化を受け、業界にはどのような変化が起きるのか。まず、キャリアにとっては、あまり大きな変化はないかもしれない。端末の販売量は減る可能性が高いため、コストは削減されるが、その分は、料金やキャンペーンでユーザーに還元してくるだろう。1つの端末を従来通り2年程度使い続けるのであれば、ユーザーにとっては大きな負担増にはならないかもしれない。また、ドコモは機種変更を優遇するキャンペーンを行うなど、既存ユーザーに向けた施策を展開している。2年契約が終わるごとにMNPをしていたユーザーを除けば、マイナスの影響は少ないだろう。
端末の価格が上がり、料金の値下げもわずかにとどまれば、大手キャリアからMVNOへ流出する流れが加速する可能性もある。既にその傾向は出始めており、ドコモの純増数の4割から5割程度をMVNOが占めているという。ソフトバンクは、自社のサブブランドであるY!mobileでこれに対抗。孫氏も「ソフトバンクグループの中で伸び盛りなのがY!mobile」と、太鼓判を押した。
一方で、有力なMVNOが少ないKDDIは「解約率の上昇の1つは、MVNOに出ていること」(田中氏)と、その影響が徐々に数値に表れている。傘下のUQコミュニケーションズがUQ mobileを運営しており、歯止めをかける思惑があるものの、思い切った手を打つには「まだ少し時間がかかる」。今後、各社の打ち出す値下げがどの程度になるのかにもよるが、ユーザーの期待値を下回れば、この傾向に拍車が掛かりそうだ。
それ以上に大きな影響を受けそうなのが、端末メーカーだ。あるメーカー関係者は、「キャリアの在庫が減らないため、新規の発注が抑えられている」と話す。すぐに影響が出るわけではないものの、夏モデルや冬モデルと納入台数が減っていけば、収益減がボディーブローのように効いてくる。割引を減らすことで、ハイエンドモデルの割合が減り、ミドルレンジモデルが増えれば、そのぶん、売上も落ち込むことになる。
スマートフォンが成熟期を迎え、世界的に見ても、販売台数の伸びは鈍化している。MM総研の発表した調査結果によると、2015年の携帯電話出荷台数は、前年度比6.6%減の3577万台。ここには、メーカーが直接販売するSIMロックフリーモデルが含まれていないため、合計するとほぼ横ばいといえそうだが、販売方法の変化によって、減少の幅が大きくなることもありそうだ。メーカーとしては、SIMロックフリーモデルで落ち込んだ分をカバーするなど、積極的な対策が求められる。
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