ドコモ端末のSIMロック解除期間制限、現時点では「緩和予定なし」
2015年5月以降にキャリアが発売した端末は、購入から180日または6カ月経過すればSIMロック解除が可能だ。この制限について、ソフトバンクは緩和を検討している。対するNTTドコモは、現時点で緩和は検討していないという。なぜなのだろうか?
NTTドコモが10月28日開催した報道関係者向けの第2四半期決算説明会において、同社の吉澤和弘社長が「SIMロック解除の条件」緩和に関する質問に回答する場面があった。
結論からいうと「現時点では検討していない」とのことだ。なぜなのだろうか。この質問の背景を含めて解説する。
「SIMロック解除」を取り巻く現状
MVNOを含む移動体通信事業者(キャリア)は、2015年5月以降に自社が発売する携帯電話の「SIMロック解除」に原則として応じている。これは、総務省が定める「SIMロック解除に関するガイドライン」にもとづいた措置となる。
このガイドラインでは、キャリアが「端末の割賦代金等を支払わない行為又は端末の入手のみを目的とした役務契約その他の不適切な行為を防止するために、事業者が最低限必要 な期間はSIMロック解除に応じないことなど必要最小限の措置を講じる」ことを認めている。そのため、キャリアはSIMロック解除に一定の条件を定めている。
NTTドコモが定めている主な条件は、以下の通りだ。
- 原則として端末の購入から6カ月経過した日から手続きに応じる
- 端末購入に使った回線(契約)で手続きをしたことがある場合、最新の手続きから6カ月経過した日から手続き可能(最短で購入当日から解除可)
- 端末購入に使った回線を解約した場合、解約日から3カ月以内であれば購入者(元契約者)本人がドコモショップに来店して手続き可能
ソフトバンクが期間条件の緩和を検討
端末を買ってすぐSIMロック解除して転売し、行方をくらまして携帯電話料金や端末の分割支払金(割賦)の支払いを逃れる――そういうった不正契約を防止する観点から、ドコモを含む各キャリアではSIMロック解除に関して期間制限を設けている。
しかし、端末を一括で購入した場合、基本的には端末代金の支払いは済んでいる。そうなると、期間による一律の制限は似つかわしくない面もある。その観点から、期間ではなく端末代金の支払い状況と連動させるべきであるという意見も存在する。また、このような期間制限そのものがキャリア間の乗り換えを阻害する要素になりうるという指摘もある。
さまざまな観点・意見もあってか、総務省が10月から開催している「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、先述ガイドラインに関する動向も議題の1つとなっている。その第1回会合で、ソフトバンクが一定条件下で緩和を検討していることを明らかにした(参考記事)。
ソフトバンクの検討している緩和策は、料金を長期間にわたってしっかりと支払っているなど、不払いリスクが低い契約者に対してはSIMロック解除の制限期間を180日から短縮する、というものだ。
ドコモが期間短縮に難色を示す理由
このソフトバンクの意見表明を踏まえて、今回吉澤社長に投げかけられた質問は「ドコモとしてソフトバンクの動きに追随することはあるのか?」というものだ。
質問に対し、吉澤社長は現時点においてSIMロック解除の期間制限の短縮は検討していないとした。その理由は以下の通りだ。
- SIMロック解除をしたことがあれば、購入から180日を待たずにSIMロック解除できる
- ドコモ回線を使うMVNOについては、SIMロック解除をしなくても端末をそのまま使える
- (端末の転売を目的とする)不正契約は当然考えられる
- 解除に関する日数制限を緩和すると、買ってすぐにSIMロック解除をして端末を転売し、通信料金や割賦残債を支払わずに逃亡する恐れを排除できない
3と4は、先述した不正契約防止の観点から来るものである。これらはドコモ以外の全てのキャリアに当てはまる期間設定の理由でもある。
1と2は、ドコモならではの理由だ。1つの回線(契約)で180日以内に(半年程度で)端末を買い換える人はそれほど多くない。現状の期間制限ルールでも「機種変更したらすぐSIMロック解除をしたい」という人のニーズはある程度満たせる上、そもそもSIMロックを解除しなくても(あるいはできなくても)ドコモ端末は大半のMVNOで使える。確かにその通りだ。
しかし、例えば、急きょ海外出張に行くことになり、現地で割安なプリペイドSIMを調達して使おうと考えた場合、端末の購入タイミングによってはSIMロックを解除して使えない、ということになる。たとえ、料金の支払いに問題がなく、端末代金を支払い済みであったとしてもだ。
そのことを踏まえてか、吉澤社長は「お客さまの意見を聞きつつ、どういう落としどころが良いのか考えていきたい」とし、将来的な検討に含みを持たせた。
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