契約純増数と端末販売数が対照的なドコモとKDDI――その理由は?:石野純也のMobile Eye(10月24日~11月4日)(3/3 ページ)
ドコモとKDDIの2016年度上期は、増収増益と好調だった。一方で契約純増数と端末販売数は、ドコモの方が伸びている。なぜ2社でここまで差がついてしまったのだろうか?
ガイドラインの影響が相対的に少ないドコモ
また、ドコモは総務省のガイドラインから受けた影響が、他の2社に比べ、相対的に小さくなっている。吉澤氏も「第1四半期は計画に対して少し販売数が落ちたと思っていたが、第2四半期になってからは、ほとんど計画通り。その意味で(ガイドラインの影響は)あまりない」と述べていた。数値を見ても分かる通り、ドコモの端末販売台数は、第2四半期で728万5000万台となり、前年同期の627万6000台をむしろ大きく上回っている。第1四半期も、販売台数は616万5000台で、前四半期の576万6000台より増加した。
ガイドラインは過剰な値引きを禁止したものだが、そのターゲットは主にMNPだ。もともとドコモはMNPでは防戦を強いられており、2015年あたりからようやく反転の兆しが見えてきたところ。そのため、MNPが沈静化しても、他の2社より端末販売に大きな影響が出づらい。ユーザー数もすでに7000万を超えているため、機種変更需要だけでもかなりのボリュームが見込める。吉澤氏が「ものすごい影響を与えることはない」と語っていたのは、そのためだ。FeliCaや防水、防塵(じん)に対応したiPhone 7、7 Plusも販売に貢献し、「入荷が潤沢になり、今では6sを7が超えている」状況だという。
とはいえ、契約者数を見ると、ドコモの7294万3000に対し、KDDIは3857万5000と、2倍までの差はついていない。一方で、端末販売台数に関しては、ドコモが627万6000に対し、KDDIが208万と、3倍近い開きがある。ガイドラインの影響だけでは、この差を説明するのは難しい。ドコモが培ってきたショップ網やスタッフなどの販売力も、ここにきて功を奏した可能性もある。価格だけに頼らない売り方ができているということだ。
結果として、総務省のガイドラインは、ドコモが他社と競争する上での、追い風にもなっている。吉澤氏が「『(実質)1万円だからいいんだろ』というのは、本来の趣旨からするとちょっと違う。(略)土曜、日曜などの休みのときに購入を条件としない奨励金が出たり、上位のデータパックを契約すると奨励金が出たり、そういうことをやって端末を安くするのがまかり通るような抜け道はなくした方がいい」と運用の厳格化を求めているのは、そのためだ。ドコモとしては、「すぐに2万円、3万円、4万円にはならないと思うが、そういった動きはしていきたい」(同)といい、徐々に端末の価格は上げていく方針も示している。
決算ではドコモとKDDIのどちらも増収増益だが、置かれている環境は対照的になりつつある。その意味では、MVNOの台頭や総務省のガイドラインが、キャリア3社の競争環境を大きく変えつつあるといえるのかもしれない。
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