すべては“カワイイ”のために PHSからスマホへ生まれ変わった超個性派モデル「HONEY BEE 101K」:開発陣に聞く「HONEY BEE 101K」(3/3 ページ)
女子高生に人気のPHS「HONEY BEE」。そのコンセプトはそのままに、Androidスマートフォンへ生まれ変わったのがソフトバンクモバイルから発売された「HONEY BEE 101K」だ。京セラに、開発経緯などを聞いた。
スペックも個性的
ソフトバンクモバイルのAndroidスマートフォンは、この冬春モデルでバリエーションが一気に増え、選択肢が広がっている。もちろん、その中でHONEY BEE 101Kがもっともデザインが個性的だが、下り最大21Mbpsの高速通信サービス「ULTRA SPEED」に対応するなど、機能面でもかなりハイスペックだ。
「想定ユーザー層の女子高生たちはかなり忙しい生活を送っています。メールのコミュニケーションはほぼリアルタイムですし、動画サイトなどリッチメディアの利用頻度も高い。そのため、通信機能は高スペックである必要がありました」(横田氏)
スマートフォンなら重たいデータはWi-Fiで――と提案したいところだが、これにも想定ユーザー層特有の課題があった。女子高生はまだ学生のため、自宅で無線LANが使えるかどうかは保護者次第という面がある。キャリアが提供する公衆無線LANも、生活圏内のすべての場所で使えるわけではない。必然的に、3G通信への依存度が高くなったという。
また約515万画素CMOSを採用したアウトカメラに加え、インカメラにも約200万画素と高解像度のCMOSを採用した。もはや説明不要だと思うが、これは自分撮りを考慮したため。ちなみにPHSのHONEY BEE 3は、アウトカメラもインカメラも同じ画素数(約35万画素)という構成だ。
一方、ユーザー属性から搭載されない機能もある。例えばおサイフケータイは「クレジットカードを持つ女子高生が少ない」(横田氏)ため、搭載が見送られた。もちろん、クレジット契約がいらないおサイフサービスもあるが、なくても気にしないという。そしてワンセグも、「彼女たちはあまりテレビを見ない」(横田氏)ため、搭載されなかった。視聴時間が拘束されるテレビよりも、動画共有サービスなどの利用頻度が高く、仲間内の話題になりやすいという。またバッテリーについても、むやみに大容量化して連続待受時間を長くすることはしなかった。
「これはフィーチャーフォンでもいえることですが、ケータイをヘビーに使う女子高生になると、逆にあまり連続待受時間を気にしません。バッテリーがなくなったら、どこかで充電して過ごします。そのため、彼女たちは充電器を常に持ち歩いている。もちろんバッテリーは長く使えた方がよいのでしょうが、使い方を工夫してその問題をクリアーしてしまう。そのため、電池の持ちに対する優先度は低いようです」(横田氏)
ユーザー層がどのようにケータイを使い、どのような製品を期待しているのか。それをこと細かに分析しないと、こうしたメリハリのあるスペックにはならなかっただろう。先に紹介したボディやUIのデザインも含め、開発陣は常に「女子高生の1日」を意識しながら企画を進めたと振り返る。
「みんなで集まって『これはカワイイ、カワイクない』という会議を何度も行いました。検討して出てきたアイデアに対し、社内からも『これはカワイイ、カワイクない』というリアクションが返ってきた。京セラのスタッフはみんなHONEY BEEのファンなので、みんなでイメージを共有して開発した端末です」(佐藤氏)
「HONEY BEE」スマホ1号機としての存在感
さて、京セラといえばKDDIやウィルコムへの端末供給が多く、ソフトバンクモバイル向けにはこのHONEY BEE 101Kが第1号機。なぜ、HONEY BEEの原点ともいえるウィルコムや関係の強いKDDIではなく、ソフトバンクモバイルから登場したのだろうか。
横田氏は、「ウィルコム様は『だれとでも定額』など音声通話にフィーチャーしたサービスと端末がメインのビジネスモデル。こちらでは、今後もPHSのHONEY BEEが引き続き位置付けられます。またKDDI様向けには、ユーザー層がより広くWiMAXにも対応した『DIGNO ISW11K』がある。HONEY BEEの世界観を思い切り表現したスマホに関しては、ソフトバンクモバイル様が高い興味を示してくれました」と、同社から発売された経緯を明かしてくれた。
ちなみに、かつて京セラはドコモにも音声端末を供給し、現在もFOMAの通信モジュールを担当している。W-CDMA対応スマートフォンの国内投入はHONEY BEE 101Kが初めてだが、横田氏は「(2008年に事業承継・統合した)旧三洋電機のノウハウもあり、まったく問題なかった」と、通信規格の違いによる不安はないことを強調した。
2008年2月の初代HONEY BEE発売から丸4年。HONEY BEEはスマートフォンになってさらにユーザー層を拡大しようとしている。HONEY BEEというPHSの一大ブランドがスマートフォンになった101K。その世界観を崩さないため、京セラ社内はもちろん、ソフトバンクモバイルというキャリアも一体となった異例の取り組みが続いた。日本初のケータイ業界でここまで愛されているブランドは、ほかに例を見ないのではないだろうか。
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