「iOS 6」で変わること/シャープ夏モデルの進化点/細分化が進むLTE定額サービス:石野純也のMobile Eye(6月11日〜6月22日)(2/2 ページ)
6月11日にAppleがWWDCで「iOS 6」が発表し、マップや「Passbook」などの新機能が注目を集めた。18日にはシャープが夏モデルの詳細を説明し、新たな技術やUIが紹介された。20日にはドコモが月額4935円のXiパケット定額プランを発表。今回はこれら3つのニュースを取り上げたい。
シャープが夏モデルを発表、独自UIの「Feel UX」はシリコンバレーオフィスの成果
6月18日、シャープは2012年の夏モデルを発表し、あわせて同社のスマートフォンに搭載される「Feel UX」の狙いを解説した。シャープの夏モデルは、4キャリアから発売され、全12機種を投入する予定で、内訳はスマートフォンが9機種、フィーチャーフォンが2機種、PHSが1機種となる。スマートフォンは、NTTドコモ向けが「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」「AQUOS PHONE SV SH-10D」「AQUOS PHONE st SH-07D」、KDDI向けが「AQUOS PHONE SERIE ISW16SH」「AQUOS PHONE CL IS17SH」「AQUOS PHONE SL IS15SH」、ソフトバンクモバイル向けが「AQUOS PHONE Xx 106SH」「PANTONE 5 107SH」「AQUOS PHONE 102SH II」と、各社から3モデルずつが発表された。
ラインアップは、ハイパフォーマンス、スタンダード、ベーシックの3つラインになり、フラッグシップのAQUOS PHONE ZETAやAQUOS PHONE Xxには「S-CG Silicon液晶システム」を搭載。これは、「高い光の透過率を実現した液晶パネル」(シャープ、通信システム事業本部 グローバル商品開発センター副所長兼プロダクト企画部長、河内巌氏)で、逆に考えると、同じ明るさであれば消費電力を抑えることにも貢献する。また、同液晶にはメモリを内蔵。「メモリとCPUの制御をきちっと行うことで、省エネ効果が発揮できる」(河内氏)のも特徴だ。対するスタンダードラインに位置づけられるAQUOS PHONE stやPANTONE 5は、コンパクトでポップなデザインが目を引く。前者は音楽プレーヤー、後者は放射線測定センサーという一芸的な機能も搭載されている。「だれとでも定額」でニーズのあるPHSに再参入したのも、夏モデルでのトピックといえるだろう。
一方で、「ラインアップをそろえるだけではグローバルパワーにまだ勝てない」と河内氏が言うように、競争環境は激化している。そこでシャープは「人の完成に近づけることを追求する」(河内氏)という「Feel Logic」をコンセプトに打ち出した。その1つを構成するのが、夏モデルの多くに搭載される「Feel UX」というUIだ。Feel UXはホーム画面とアプリトレイというAndroidの基本をゼロから見直し、新たに縦スクロールの3ラインホームを採用。アプリ、ウィジェット、ショートカットというビューを設け、それぞれはタブや横フリックで切り替える形となる。開発はAppleやソニーなどをクライアントに持つ、米国のfrog社が担当。同社のVice President ポール・ビュー氏が「スマートフォンの成否を決める最も重要なものはアプリケーション。ここへのスムーズなアクセスを提供する」と述べているように、初めてAndroidに触れるユーザーでも迷わず使えるというのがこのUIのコンセプトだ。「デバイスが店頭でどのように展示され、ユーザーはどのような印象を持つか。(そう考えると)ロック画面には豊かなポテンシャルがある」とビュー氏が述べているように、ロック画面に写真を大きく配置して、フリックで切り替えられるのも特徴だ。天気予報などの情報も、ここに表示できる。
frog社の選定は、シャープが米国・カリフォルニア州のサンノゼに置いた拠点が行った。グローバル展開を見すえた体制変更の成果が、徐々に出てきていることがうかがえる。Feel UXは、「グローバルモデルにも採用していく」(河内氏)という。シャープのスマートフォンの“顔”になる存在で、今後のモデルにも標準で搭載される予定だ。ただ、現時点ではまだ荒削りな部分も多い。例えば、AQUOS PHONE ZETAなど、画面内にソフトキーを置いた機種では、ホーム画面表示時とアプリ表示時でキーの内容が変わってしまうため、慣れれば便利な半面、間違ってブラウザやメールを立ち上げてしまうことがあった。ウィジェットで情報をサッと確認しつつアプリを立ち上げたいというニーズにも、3ラインの形式だと応えることができない。ホーム画面の背景に、自分で撮った写真を表示したいというユーザーもいるはずだ。
もちろん、シャープもこうした声には耳を傾けており、今後も継続して改善を行っていくという。実際、キャリアの発表時に置かれていた試作機では、ホーム画面の背景は色を選択できるだけだったが、今回触った機種では内蔵の写真を利用することもできた。既存のAndroidユーザーは戸惑うおそれもあるが、「AQUOS PHONE 104SHで好評だった『SHホーム』もダウンロードで提供する」(河内氏)予定だ。また、バージョンアップを行っていけば、新規ユーザーと既存ユーザーの両方を満足させるものにできるかもしれない。現時点ではまだ最初の一歩を踏み出したところだが、海外市場のトレンドを踏まえ、UIへの取り組みを強化したことに対しては、ポジティブに見ている。海外市場も含めた今後の展開も期待して見守りたい。
ドコモが3GバイトまでのXi向け定額サービスを投入、多彩な料金の登場に期待
ドコモは6月20日に、LTE方式のXi向けに新たなパケットプランを投入すると発表した。名称は「Xiパケ・ホーダイ ライト」で、月額料金は4935円。従来の7Gバイトまで利用できる「Xiパケ・ホーダイ フラット」から、上限が1050円安く設定された。現在、「Xiパケ・ホーダイ フラット」および「Xiパケ・ホーダイ ダブル」が、9月30日までの「Xiスタートキャンペーン2」で定額/上限4935円になっているが、これと金額は同等ということになる。3Gバイトを超えた場合は、速度が128Kbpsに制限され、2625円を追加で支払うと、2Gバイト分の通信量を追加できる。提供は10月からで、データ端末向けには「Xiデータプラン ライト にねん」なども用意される。
Xiパケ・ホーダイ ライトは、ドコモの取締役 相談役の山田隆持氏(発言当時は代表取締役社長)が夏モデルの発表会などで検討を明らかにしていたプラン。「スマートフォンを使っている人の最左翼がらくらくホン、最右翼がXiスマートフォンで、その中間のところも検討したい」(山田氏)と述べていたものが、正式に発表された格好だ。
「料金は他社との競争」と山田氏が言うように、今後、他社が追随する可能性もある。ソフトバンクモバイルは2012年秋以降に開始するLTEサービス向けに、7Gバイトで5985円というプランを発表している。同社や料金についてはまだ発表のないKDDIがドコモに対抗してくるのか、注目したいところだ。また、500Mバイト(らくらくスマートフォン専用)、3Gバイト、7Gバイトという区切りだけでは、すべてのユーザーのニーズには応えられないだろう。事実上LTEでは定額制が廃止になる中、今後はプランの細分化も十分ありえることはユーザーとしても念頭に置いておきたい。
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