UIの刷新とクラウド化で生まれ変わった「ドコモメール」の狙いとは:NTTドコモに聞く(2/2 ページ)
10月24日にようやくサービスをスタートさせた「ドコモメール」。メーラーのUI刷新やメールのクラウド化が特徴だが、ドコモメールにはどんな狙いがあるのか。またサービス発表から開始までに時間を要した理由とは。ドコモ担当者に聞いた。
チャット形式のUIは採用しない?
ドコモメールでは「LINE」のような、チャット形式のUIは採用せず、あえてシンプルなメーラーという形に落ち着いた。一方で、メッセージアプリの主流は、こうした見せ方になりつつある。実は、チャット形式の導入も「検討の視野には入れていた」と太口氏は語る。
「もともと、SMSでも同じようなインタラクティブUIを実現できていることもあり、当然検討の視野には入れていました。ただ、まずしっかりとした品質のものをお客様にお届けすることを最優先にしました。もちろん、こうしたUIをまったく無視しているわけではありません。今後、我々が別のアプリを提供したり、IMPAに対応したメーラーをサードパーティが開発することもあり得ます」
このように、新たなUIへの挑戦もIMAP対応でしやすくなったようだ。
「七分で良し」とはいかない――サービスの開始を延期した理由
ただ、冒頭で述べたように、サービスの提供は発表から1年後になってしまった。「なぜ、ここまで時間がかかったのか」といぶかしがる向きもあるはずだ。太口氏の言葉からは、延期の理由は、ドコモメールの仕組みやサーバ側というより、アプリ側の品質向上にあったことが分かる。
「一言で言うと、アプリの品質が延期の理由です。特に操作の反応速度については、気を配りました。当初から、普通にお使いいただく場合は問題のないレベルになっていました。ただ、過負荷がかかったときはどうか。例えば、メールのデータがたまってくると、十分なパフォーマンスを発揮できないことが見えてきました。今のドコモメールアプリは、受信フォルダで2万件までハンドリングできます。spモードメールからそういう仕様だったものを引き継いだのですが、結果的にはメールアプリのデータベースの持ち方を、根本的に変えなければいけないことになりました」
2万件というメール件数については、太口氏と同じ部署の山口朋郎氏が「spモードメールは、各受信ボックスごとに2万件のメールを保存でき、合計で8万件だったので、ドコモメールでも受信ボックスに8万件までメールを保存できることを検討しました」と補足する。
メールの数が増えてきたとき、パフォーマンスが維持できない。spモードメールからの改善を目指したドコモメールでは、ここにも万全を期す必要があった。ドコモは、代表取締役社長の加藤薫氏が社長に就任した際、「七分で良しとせよ」という方針を掲げた。これは、完璧を目指してサービスの投入が遅れるより、ある程度の完成度で世の中に出しサービスをブラッシュアップしていくという考え方だ。ただ、ドコモメールについては、これに当てはまらなかったという。
「(加藤社長が掲げている)『夢と使命』というワードがあり、使命の方に七分はありえません。メールもそうですし、音声通話もそうです。当たり前のように使う機能については、最低限が100%です。『七分で良し』は、それ以外のいろいろなサービスにトライして順次改善していくという意味で、ドコモメールはそれとは別の種類のものです」(太口氏)
延期を重ね、万全を期して投入したドコモメールは、「おおむねご好評をいただいている」(太口氏)という。一方で、その間にもメールのライバルともいえるLINEのようなスマートフォン向けのコミュニケーションサービスは、着々とユーザー数を増やし、社会に定着してきた。その意味で、開発発表した1年前より、競争環境は激化している。また、太口氏が「お客様に利便性と価値を感じていただけるアプリ、サービスになっているが、そこに安住することなく、磨きをかけていきたい」と語っていたように、iPhoneへの完全対応を筆頭に、すべきことはまだまだある。今回リリースされたドコモメールをベースに、どこまでユーザーのニーズに応えていけるかが、今後の行方を占う鍵になりそうだ。
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