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インタビュー

UIの刷新とクラウド化で生まれ変わった「ドコモメール」の狙いとはNTTドコモに聞く(1/2 ページ)

10月24日にようやくサービスをスタートさせた「ドコモメール」。メーラーのUI刷新やメールのクラウド化が特徴だが、ドコモメールにはどんな狙いがあるのか。またサービス発表から開始までに時間を要した理由とは。ドコモ担当者に聞いた。

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 2012年10月に発表された、「spモードメール」のクラウド化。その目的は、UI(ユーザーインタフェース)の刷新と、サーバ側にメールを置くことによる利便性の向上にあった。名称も「ドコモメール」に改めることが当時発表された。ところが、サービスの提供開始は順調にいかなかった。もともとは2013年1月に投入されるサービスだったが、提供時期は3月に延期。その後、さらなる延期を発表し、ようやく10月24日にドコモメールは船出することとなる。

 紆余曲折を経て始まったドコモメールだが、サービス提供後は、順調に対応端末を拡大しており、本稿執筆時点では65機種で利用可能となった。12月17日にはiPhoneにも対応する。では、ドコモメールはなぜ“難産”になってしまったのか。あらためて同サービスの意義と、提供開始が遅れた経緯も聞いた。

spモードメールとは完全に決別したUIを採用

 ドコモメールは、従来からスマートフォン向けに提供していたspモードメールを、2つの点で改善するものだった。1つは、UIの刷新。spモードメールは従来型ケータイのインタフェースをある程度は引き継いでいたが、それがゆえにスマートフォンのメーラーとしてはやや中途半端な形になっていた。スマートフォンならではのUIの流儀に沿うという点でも、spモードメールは完璧ではなかった。例えば、Androidの場合、メールが着信すると通知にその旨が表示されるが、タップして開くのはメーラーのボックス選択画面になる。ユーザーがメールを開くためには、そこからさらに2タップが必要と、操作が煩雑だ。このように不評だった部分をドコモメールで改善したかった。こう力説するのは、スマートライフビジネス本部 スマートライフ推進部 コミュニケーション担当部長の太口努氏だ。

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NTTドコモの太口氏

 「spモードメールアプリのUI、UX(ユーザーエクスペリエンス)を一新したかったという目的がありました。spモードメールでは、メールを見るだけでも階層を深くもぐっていかなければなりませんでした。必要な操作に、すぐたどりつけるようなUIにしたというのが、ドコモメールの大きな特徴です」

 太口氏がこう語るように、ドコモメールはspモードメールとは完全に決別したUIを採用した。上に例として挙げた問題点も解消されており、ドコモメールでは通知上である程度メールの中身まで読むことが可能だ。ほかにも、迷惑メールの報告がメーラー上からすぐにできたり、メールを書いたあと送信ボタンをワンタップで押せたりと、改善点は枚挙に暇がない。スマートフォンのメーラーとしては、十分な完成度といえるだろう。spモードメールでも着々と改善してはいたが、レスポンスも、ドコモメールで上がったような印象を受ける。

photophoto メールが着信すると通知に表示されるが、ここにも件名や本文の一部が表示される(写真=左)。タップすると、該当するメールが開く仕組みだ(写真=右)
photophoto 送信ボタンが画面上部に表示されており、UIが分かりやすくなった(写真=左)。迷惑メール報告も、設定ボタンからワンタッチで行える。このように、メニューが整理され、より直感的に使えるようになった(写真=右)

クラウド化によって、マルチデバイスでメールを送受信できる

 ドコモメールを開発したもう1つの目的が、クラウド化だ。spモードメールでは受信した端末は、すべて端末側のストレージに保存されていた。これに対し、ドコモメールは基本的に、メールはサーバ上に常時保管される。端末で受信する設定もできるが、あくまでそれはサーバ上のメールのコピーするという扱いだ。太口氏は次のように語る。

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メールがクラウドに対応。本文はサーバ上に読みに行く形となるが、ローカルに保存しておくことも可能だ

 「簡単に言うと、お客様のメールをドコモのサーバでお預かりし、保存するということです。これによって利便性が向上します。例えば、『docomo ID』を使ってマルチデバイスでメールを送受信、閲覧できるようになります。そういうニーズにお応えできるのが1つです。また、お客様が機種変更されたり、端末を紛失したりした場合でも、メールはサーバ側に残っています。これによって、引き続き新しい端末を用いて、メールのやり取りをしていたけます。このサービスの継続性も、ドコモメールで提供できる価値だと思います」

 メールをクラウド側に保存し、さまざまなデバイスから参照可能にするというのは、Gmailをはじめとするメールサービスで実現されている。太口氏が「デバイスフリー」と述べているように、ドコモもこの方向にかじを切ったということだ。Android用のドコモメールアプリには、「シーケンスを軽くしたいため、HTTPの上に独自のシーケンスを載せている」(同)というが、デバイスフリーにあたってはインターネットサービスで一般的なIMAPにも対応する。

 「ドコモメールのプロトコルそのものはHTTPで、シーケンスをある程度独自にしています。IMAPは技術的には枯れていますが、シーケンスの頻度が高く、負荷も少なくありません。そこを軽くしたいという目的で導入しました。マルチデバイス対応後も、ドコモメールのアプリには、引き続きこのプロトコルを使っていきます。これに加えて、サーバ側でIMAPをサポートするというイメージです。ブラウザからも読めるよう、Webメールも提供します」(太口氏)

 IMAPは、PCやスマートフォンで一般的に利用されるメールの方式だ。これによって、ドコモが導入したばかりのiPhoneへの対応も容易になった。iPhoneのドコモメールは、現在のspモードと同様、端末標準のメーラーで利用する形となる。Androidのようなアプリについては、「選択肢としてアプリを作ることもあるが、大掛かりになるので、どういう実現方法が最短なのかを検討している」(太口氏)とやや慎重な姿勢だ。また、現在はフェッチで指定した時間ごとにサーバにアクセスしているが、ドコモメール開始にあたって着信通知にも対応するという。

photophoto iPhoneのspモードメールは、プロファイルをインストールし、標準のメーラーから利用する。この仕組みは、ドコモメールにも受け継がれるという

iPhoneでのプッシュ配信は難しい?

 一方で、残念ながらAndroidや従来型ケータイのようなプッシュ配信には未対応。太口氏は「新着通知という形になるので、ポーリング(フェッチ)と併用していただければ」と話し、着信と同時に本文が受信される仕組みは導入されない。iPhoneでプッシュ配信を実現するには、いくつかの選択肢がある。例えば、auのように、サーバをExchangeにして標準のメーラーアプリを使うのがその1つ。Appleがサードパーティ用に用意したプッシュの仕組みを組み込んだアプリを開発するという手もある。キャリアとしては一般的な、MMSも1つの方法と言えるだろう。太口氏は、こうしたさまざまな選択肢を「検討中」と話すにとどめた。iPhoneは取り扱いを始めたばかりということもあり、ドコモとして、何が最適な解かはまだ見えていないようだ。

 IMAPの利用が可能になることで、マルチデバイス対応とは別のメリットも生まれる。サードパーティが、ドコモメールを送受信できるメーラーを簡単に作れるのは、マルチデバイス対応の副産物といえるだろう。ドコモ自身も、ドコモメール以外のアプリを「いろいろ考えようとしている」(太口氏)ところだ。ドコモでは、spモードメールと並行して、複数のアカウントを同時に扱える「CommuniCase」を提供していた。このCommuniCaseについても、「一部の方にはマルチアカウントが好評なため、ドコモメールに対応するかどうかは検討していく」そうだ。

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