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「Xperia Z1 f」のバッテリーはなぜ長持ちなのか?――Z1 fだけに加えた3つの工夫開発陣に聞く「Xperia Z1 f SO-02F」(後編)

「Xperia Z1 f SO-02F」は「Xperia Z1 SO-01F」よりも小型のバッテリーを搭載しているにもかかわらず、実使用時間はXperia Z1よりも長い。なぜか? 開発者インタビューの後編では、バッテリー持ちの秘密に迫る。

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 「Xperia Z1」の小型バージョンともいえる、NTTドコモのソニーモバイルコミュニケーションズ製スマートフォン「Xperia Z1 f SO-02F(レビューまとめはこちらから)」。開発者インタビューの前編では、サイズ感やカラーバリエーションに関する話を聞いたが、後編ではバッテリーを長持ちさせるための工夫を聞いた。

photophoto ソニーモバイル製の「Xperia Z1 f SO-02F」。ボディカラーは左からピンク、ホワイト、ブラック、ライム

バッテリーを長持ちさせる3つの工夫

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ソフトウェア担当の難波氏

 Xperia Z1 fのスペックで気になったのがバッテリーの駆動時間だ。バッテリー容量が3000mAhのXperia Z1に対して、Xperia Z1 fは2300mAhなので、連続待受時間と連続通話時間はXperia Z1の方が長いが、ドコモが計測した「実使用時間」は、Xperia Z1の約57.7時間よりも約26時間長い約83.6時間を実現している。ディスプレイ解像度の違いだけで、ここまで差がつくのだろうか。

 ソフトウェア担当の難波氏によると、Xperia Z1 fは、Z1にはない3つの方法で高いスタミナを実現しているという。1つめが「省電力ディスプレイ」だ。「Xperia Z1 fのディスプレイにはバッファメモリを搭載しているので、一度読み込んでから画面の更新がないときは、メモリへの読み込みが発生せず、消費電力を抑えることができます」と難波氏は説明する。つまりシャープのIGZOのように、画面が静止状態のときに、無駄な電力を抑えられるわけだ。Xperia Z1 fのディスプレイはシャープ製ではないが、似たような仕組みを採用しているといえる。

 この仕組みを施したのは、Xperia Zシリーズでは初となる。過去のソニーモバイル端末には搭載したことがあったそうだが、Xperia Z1 fでは「よりディスプレイの実力を引き出すように設計している」(難波氏)そうだ。「フルHDでも搭載は可能」とのことなので、今後はXperia Z1のようなフラッグシップモデルへの搭載にも期待したい。

 2つめが「ハイパフォーマンスかつ低消費電力になるCPU制御のアルゴリズム」だ。これは、CPUの高い周波数が必要なシーンで、消費電力を抑えるよう工夫しているという。チップをカスタマイズしているのではなく、あくまでソフト的に制御している。

 3つめが「描画処理の工夫」だ。「具体的なことは言えませんが、ユーザーがよく使うケースを分析して、そこを中心に、描画と通信まわりを改善しました」と難波氏は説明する。なかなかイメージしにくいが、1つめとも2つめとも異なる手法だといい、こちらもアルゴリズムの改善で実現している。

 難波氏が「(これら3つの手法のおかげで)トータルで、1日使って電池が持つユーザー体験を提供できました」と話すように、これらの手法は、待受時や通話時よりも、データ通信をしたりメールを送ったりするときに、いっそう効果を発揮するのだろう。だからXperia Z1よりも少ないバッテリー容量でも、実使用時間はXperia Z1 fの方が長いものと思われる。

 ちなみに、Xperia Z1 fより後に発売されたauの「Xperia Z Ultra SOL24」には、3つの手法は採用していない。現在のXperiaシリーズの中で、省電力性能ではXperia Z1 f(およびXperia Z1 Compact)が最先端を進んでいる。そして「今後のモデルでも継続していきます」(難波氏)とのことなので、フラッグシップモデルの進化も期待できそうだ。

 バッテリー容量を増やせば、その分だけ駆動時間は向上するが、「バッテリー容量を増やすとデザインや薄さを犠牲にしてしまうので、なるべくバッテリーを薄くした上で、省電力にしたいです」と商品企画担当の内田氏は話す。

スタミナモードの仕様を変更した理由

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Xperia Z1 fの「スタミナモード」。電力を消費するアプリのランキングが表示される

 ディスプレイが消灯しているときに、バックグラウンドでの通信を含む動作を制御する「スタミナモード」も、Xperia Z1 fのバッテリー持ちを語る上では外せない機能だ。グローバル版のXperiaではおなじみの機能だが、実はグローバル版と日本版では設定方法が異なる。グローバル版ではスタミナモードをオンにすると、全アプリの動作がオフになり、オフにしないアプリを後から選ぶ仕様だが、日本版ではオフにするアプリをユーザーが1つずつ選ぶ必要がある。つまりスタミナモードを起動しただけでは有効にならない。

 こうした仕様にしたのは「Xperia Z1 fで電池持ちがよくなったので、なるべくユーザーに制約を与えない方がよい」(難波氏)と判断したためだ。Xperia Z1 fのスタミナモードでは、1週間以上端末を使い続けると端末が学習し、「かんたん登録」という欄に、バッテリーを消費しやすい順にアプリが一覧表示される。これにより、動作をオフにすべきアプリを効率よく把握できるわけだ。

 あえてグローバル版から変えたのは「コンセプトが違うからです」と内田氏。ユーザーによってはLINEやGmailなど、「通知が来ないと困るアプリ」があるだろう。グローバル版では「全部オフにしましょう」というスタンスだが、日本版では「この機能が使えるはずだったのに、使えない」という事態にならないよう配慮した。ちなみに、ドコモメールはそもそもスタミナモードに設定できないようになっている(追加するアプリ一覧に表示されない)。

photophotophoto 動作を制限したいアプリに手動でチェックを入れていく(写真=左、中)。ホーム画面からワンタッチで設定できるウィジェットもある(写真=右)

 これまで、小型のスマートフォンはバッテリーが持ちにくい傾向にあった。しかしXperia Z1 fは2300mAhという必要十分な容量のバッテリーを備え、ソフトウェアの工夫によって、より大きなバッテリーを備えるXperia Z1よりも(実使用上は)高いスタミナを実現した。Xperia Z1 fは「小型」と「パワフル」を併せ持ったスマートフォンだといえるだろう。

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