au夏モデルの独自性/au WALLET提供の狙い/ソフトバンクが発表会を行わない理由:石野純也のMobile Eye(4月28日〜5月9日)(3/3 ページ)
5月7日にはKDDIが夏商戦向けの新機種やサービスを発表し、話題を集めた。スマホやタブレットはもちろんのこと、特に力を入れて発表したのが電子マネーサービスの「au WALLET」だった。一方でソフトバンクモバイルは当面発表会を行わないという。
発表会を当面行わないというソフトバンクだが……
夏モデル全8機種に、au WALLETやキャリアアグリゲーションといったサービス、技術までを華々しく発表したKDDIに対し、ソフトバンクモバイルは動きが静かだ。4月24日には、3辺狭額縁のIGZOディスプレイを採用した「AQUOS Xx 304SH」を発表しているものの、発売は5月下旬なので店頭に並ぶまでにはもう少し時間がかかる。同社は、夏モデルといった形で、まとめて端末を紹介する発表会を見送る方針だ。代表取締役兼CEOの孫正義氏によると、その理由は次のようなところにあるという。
「これまで、商品発表会を年に2回、3回とやってきたが、それは20機種、30機種そろえる必要性があったから。今はiPhoneと数機種のスマートフォン、その数機種もみんなAndroidになる。スマートフォン以外(従来型ケータイ)は、技術の進化がほとんどなくなり、過去に発表されている機種を焼きまわしているにすぎない。iPhoneについては、(発表会を)Appleがやっている。Androidについては、(機種間の)機能の差がそれほどない。発表会という形式の役割は終わったと認識している」
iPhoneの発表は確かにメーカーのAppleが行う。iPhoneはキャリアブランドで販売される端末ではないので、それは当然だ。一方で、Androidについても、他社とラインアップがそれほど変わらなくなった。それをあえてキャリアが発表会を開いてまで推す必要はなくなったというのが、孫氏の考えだ。iPhone比率が3キャリアの中で最も高いソフトバンクならではの、合理的な判断ともいえるだろう。
とはいえ、Androidの機種に差がなくなったかといえば、必ずしもそうではない。むしろ、ラインアップを決めるのはキャリアであり、ある程度は仕様の要求も出しているのが現実だ。KDDIのisai FLのように、共同開発で他キャリアにない機種をそろえる手も残されている。「差がなくなった」というより、「差をつけられなかった」のが現実ではないだろうか。XperiaやGALAXYといった、他社にあるブランドもなく、横並びになったどころか、むしろAndroidのラインアップは手薄にすら見える。
端末以外のテーマでも話題性に欠いていた。キャリアアグリゲーションやVoLTEといったLTE関連の新サービスは、すぐにスタートしない。キャリアアグリゲーションが始められないのは、900MHz帯を利用したLTEの開始が遅れていることも影響しているようだ。同周波数帯はMCAなどの既存ユーザーが帯域を空けないとソフトバンクが利用できない。孫氏によると、「お金を用意して、機器を渡して、説得してと、非常にまどろっこしいプロセスが必要になる」という。結果として、春に開始予定だった「プラチナバンドのLTE」が「夏ぐらいからは電波が吹けると思う」(同)と遅れてしまった。
孫氏が「キャリアアグリゲーションは900MHz帯と2GHz帯で行うことができる」と述べていたように、ソフトバンクモバイルはこれらの周波数帯を足し合わせて、速度を上げることを計画していたようだ。ところが、900MHz帯でLTEがスタートしていなければ、当然ながらキャリアアグリゲーションはできない。また、VoLTEについても導入の表明はしているものの、時期が明らかになっていない。新機種はもちろん、それを支えるネットワークの話題にも乏しかったというのが実情だ。
このように要素を挙げていくと、夏商戦では、あえてソフトバンクモバイルが発表会を開く意義がなかったようにも見える。孫氏は「“状況が変わるまで”当面は見送ると」と述べていたが、端末やネットワークがそろった段階で「状況が変わった」ことになるのかもしれない。そして、以前から孫氏が述べているSprintとの共同調達が実現すれば、再び発表会を開く可能性は高くなりそうだ。
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