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再び世界を変えるために――WWDC 2014でAppleが見せた“3つの強み”神尾寿のMobile+Views(2/3 ページ)

いよいよ開催された「WWDC 2014」。今年もMac向けの「OS X」、iPhone/iPad向けの「iOS」、Appleのクラウドサービス「iCloud」の新しい発表が中心だったが、Appleはどのような未来を示したのか。キーノートの内容をひもといていきたい。

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OS XとiOSの連携強化、あわせて使わなければ損なレベルに

 OS X “Yosemite”では、iOS 8との連携も強化。これまで以上に「MacとiPhone/iPadをあわせて使う」ことによるメリットが出るようになる。

 例えば、新たに実装される「Instant Hotspot」機能では、Mac側のWi-Fi設定からインターネット共有機能を呼び出し、iPhoneやiPadをカバンに入れたままでテザリングを開始・終了することができる。またiWorkなどで作業中のデータを近くのiPadやiPhoneに共有・引き継ぐ「Handoff機能」などもある。

photophoto Handoff機能のデモ
photophoto Instant HotspotではOS X側からiPhone/iPadのテザリング機能を呼び出せる

 さらに電話やSMS/MMSといったiPhone固有の機能も、OS XとiOSの連携によってMacからも利用できるようになる。なかでも便利そうなのが電話連携機能となる「Make and Receive Call」だ。これを使うと、電話の着信時にMac側のスピーカーフォンで着信・通話したり、Mac上のブラウザやメールに記載された電話番号をクリックしてダイレクトに電話をかけることが可能になる。日本ではNTTドコモが率先して通話相手を選ばない完全音声定額サービスを導入したが、これに加入したiPhoneと組み合わせれば、“Macから簡単に電話を利用できる”のはかなり便利そうだ。

 前述のiCloud Driveとあわせて、OS X YosemiteとiOS 8は極めてシームレスかつ快適に連携するようになる。今後は、これまで以上に“Macを持っているならばiPhone/iPadを買わなければ損であり、iPhone/iPadを持っているならばMacを買わなければ損”ということになるだろう。

より洗練され、完成度が増した「iOS 8」

 2013年のiOS 7で、デザインはじめ大規模な刷新を行ったiOS。その後継となるiOS 8は、使い勝手を向上させるための細かな機能追加を行う形での進化となった。

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iOS 8
photophoto iOS 8ではUIデザインで数多くのリファインがなされた

 デザインと機能の洗練という部分では、「通知センター」や「Mail」の機能強化、「iCloudフォトライブラリ」の統合などが注目すべきところになるだろう。

 例えば通知センターでは、ドロップダウンした通知画面からメッセージの返信や各種操作が行えるようになり、「Mail」ではメールリスト上でのスワイプで従来以上の細かな操作をしたり、書きかけのメールを縮小表示するといったことができる。iCloudフォトライブラリはこれまでのフォトストリーム機能の強化版ともいうべきもので、Mac/iPhone/iPadなどすべての機器で写真ライブラリの同期を行うというものだ。写真の検索機能なども強化されているため、iPhoneで「写真をあまり整理せず、撮りためる」人には使い勝手がかなりよくなるはずだ。

 また、文字入力周りの機能が強化されることもiOS 8の特徴だ。新たに実装される「QuickTypeキーボード」では、予測変換ならぬ予測タイピング機能を持ち、過去の利用状況から入力された文字に続く単語が候補として表示されるだけでなく、メールやメッセージのやり取りでは相手の言葉に合わせて適切な返答となる言葉の候補が出てくる。デモンストレーションは英語で行われたため、日本語環境における予測精度がどれほどになるかは不明だが、実際に使ってみたら便利そうな機能であることは間違いない。さらにQuickTypeキーボードの予測タイピング機能は学習機能も併せ持つため、使えば使うほど、より賢く個々のユーザーの利用状況に合ったものになるという。文字入力は日常的に使う部分だけに、日本語版QuickTypeキーボードのできばえにも期待したいところだ。

photophoto 予測タイピング機能の「Quick Type」。日本語での精度が気になるところ

 今回のキーノートでもう1つ、力を入れて紹介されたのは「iMessage」(メッセージアプリ)の機能強化だ。iOS 8では従来のテキストベースのメッセージ交換に加えて、ボイスメッセージやセルフィ(自分撮り)でのビデオメッセージのやり取りができるようになる。さらにこれまでの1対1のメッセージ交換に加えて、グループトーク機能も実装される。UIデザインもよく考えられていて、テキストメッセージからボイスメッセージに切り替えて返信したりといった操作が簡単に行える。会場ではこれらiMessageの新機能が紹介される度に、拍手と歓声が上がった。

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iMessageではボイスメールやビデオメールが統合された

 日本ではメッセンジャーアプリとしては「LINE」が広く普及しており、国民的なコミュニケーションインフラといっていいほどの圧倒的な地位を占めている。そのためiMessageの出番はアメリカに比べるとあまりないが、今回のボイメールやビデオメール機能の統合は、LINEにはない部分だ。このあたりが日本市場でどう受け止められるかは注目といえるだろう。

ヘルスケア、スマートホームなど新分野のAPIを整備

 iOS 8では「ヘルスケア」と「スマートホーム」という2つの新分野に向けて、開発者向けのAPIが整備された。

 まずヘルスケア分野ではユーザー向けの「Health」アプリが用意され、さまざまなヘルスケア機器との連携やデータ管理がしやすくなる。他方で開発者向けには「Healthkit」と呼ばれる開発キットが提供されて、Healthと連動したアプリや製品が作りやすくなる。

photophotophoto iOS 8ではヘルスケア関連のAPI群やOS標準アプリが整備される

 スマートフォンを活用するヘルスケア市場はアメリカではかなり注目されており、製品やサービスが増えている。しかしその一方で、連携可能なアプリや機器、サービスがバラバラになると、ユーザーにとって一元的な健康管理がしにくいという問題もあった。今回Appleが「Health」と「Healthkit」によって、ヘルスケア分野のプラットフォームを整備したことで、新たな製品・アプリ・サービスが開発しやすくなり、この市場が活性化するのは間違いない。

 ヘルスケアと同様に、新市場創出効果が大きそうなのが、家電連携を中心にしたAPIを整備する「Homekit」である。これは照明や空調、ホームセキュリティ、監視カメラなどとの機器連携用APIを整備してプラットフォーム化するもの。このHomekitを用いれば、iPhone/iPadと連携した家電や住宅設備が作りやすくなる。またSiriからの操作も想定されていて、「そろそろ寝る」や「部屋を涼しくして」といった自然言語による会話によって家電を操作できるという。まるでSFに出てくるようなハイテクな家が、iOS 8のHomekitを活用することで作れるようになるのだ。

 ほかにも、iPhone 5sから導入されている指紋認証システム「Touch ID」のAPIが公開されてサードパーティのアプリやサービスで利用できるようになり、ゲーム開発用のAPI群やツール類が大幅に強化されるなど、iOS 8にあわせてiPhone/iPadアプリの可能性は大幅に拡大する。翻ればこれは、iOS 8そのものの魅力がそれだけ増すということだ。これまでもiPhone/iPadは革新的で質の高いアプリやサービスの存在が大きな魅力だったが、iOS 8ではそれがさらに拡大しそうだ。

photophoto Touch IDとHome Kit
photophoto ゲームアプリ向けの開発環境も強化。本格的な3Dゲームがさらに高速にレンダリングできるようになるほか、カジュアルゲーム向けの開発キットも用意された

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