2016年、iPhoneの牙城を崩すスマートフォンは登場するのか:ITmediaスタッフが選ぶ、2015年の“注目端末&トピック”(編集部田中編)
2015年の携帯電話販売ランキングを見ると、ほぼ「iPhone 6」と「iPhone 6s」でトップが独占されていた。このままだと2016年もiPhoneの1人勝ちになりそうだが、果たしてiPhoneを脅かす端末は登場するのだろうか。その可能性を探りたい。
2015年もさまざまなスマートフォンが発売されたが、販売数やシェアの面で「iPhone 6」と「iPhone 6s」に勝るモデルは表れなかった。ITmedia Mobileで毎週掲載している「携帯販売ランキング」(GfK Japan提供)を見ても、1年にわたってランキングはiPhone 6とiPhone 6sが席巻し、その中で「Xperia Z3 Compact」「Xperia Z4」「Xperia Z5」が一矢報いたに過ぎなかった。
この調子でいくと、2016年もiPhoneの1人勝ちになりそうだが、果たしてiPhoneを脅かす端末は登場するのだろうか。その可能性を探りたい。
ライフスタイルを変える可能性を秘めたスマホは?
まず1つが、「ユーザーのライフスタイルを変える革新的な技術」を搭載していることだ。2012年11月に発売されたシャープの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は、販売ランキングで8週連続1位を記録した。SH-02Eは、ディスプレイに「IGZO」を初めて搭載したのが大きな特徴で、バッテリーの持ちが改善されたことでユーザーの支持を集めた。当時のスマートフォンはまだ成熟されておらず、バッテリーの持ちに悩まされる人が多かった。SH-02Eは、こうしたデメリットを解消する画期的なモデルだった。
現在は、CPUやOSの進化に伴い、バッテリーの持ちは底上げされ、スタミナの強さはシャープの専売特許ではなくなった。ほかに「ディスプレイ」「カメラ」「CPU」など、スマートフォン全般の機能が進化し、どのメーカーの端末を使っても、ある程度の満足感が得られるようになった。それだけに、差別化が難しくなりつつある。
スマートフォンで世界初の4Kディスプレイを搭載した「Xperia Z5 Premium」は、スペック面で久々に突き抜けたモデルだったが、実際に使ってみると、5.5型のサイズで「4Kならでは」の体験を得るのは難しく、フルHDディスプレイとの違いが肉眼で分かりにくかった(ディスプレイ自体はとてもキレイなのだが)。4Kコンテンツがそろっていないこともあるが、現状では、残念ながらIGZOのようにライフスタイルを変えるほどのインパクトは感じられなかった。
スペック以外で光明を感じたのが、シャープの「エモパー」だ。スマホがユーザーに話す機能といえば、iOSの「Siri」が有名だが、エモパーは、適度なタイミングでスマホ側から話しかけてくれるのが大きな違い。この「スマホから話しかけること」が重要で、Siriのように能動的に話しかけるサービスの場合、よほど好きな人でないと毎日使わないだろうし、検索したり機能を呼び出したりするツールとしての側面が強い。エモパーは端末が勝手に話しかけてくれるので、ユーザーは気負う必要がないし、キャラクターには人工知能による感情がプラスされているので、「愛着」が生まれやすくなる。
ただ、エモパーは実際に使わないとその良さが分からないので、IGZOを搭載したSH-02Eのように、短期間での爆発的なヒットにはつながらないだろう。しかし継続して“ファン”を増やしていければ、iPhoneに奪われたシェアを少しずつ奪還できるかもしれない。エモパーは順調にバージョンアップを重ねており、ライフスタイルを変える可能性を秘めていると感じている。
シャープは「フレームレス」をもっと強く推すべき
デザイン面で「突き抜けたな〜」と久々に感じたのが、シャープが2014年から投入している、フレームレスデザインの「AQUOS CRYSTAL」シリーズだ。しかし、2015年の新機種は「AQUOS CRYSTAL 2」がソフトバンクから発売されたのみで、前年ほど盛り上がらなかった。フレームレスデザインは手にした瞬間「おお!」と思えるほどのインパクトがあるのに、ソフトバンク専用にしておくのはもったいない。シャープのハイエンド機は「CRYSTAL」に統一して、ドコモやKDDIでも展開すれば、XperiaやGalaxy、そしてiPhoneをしのぐインパクトを与える可能性があると思う。
フラッグシップは年に1回がいいのでは
iPhoneとAndroidスマホの大きな違いの1つが、販売サイクルだ。iPhoneは年に1回、新機種が登場するのに対し、日本で発売されるAndroidスマホは、年に2回、夏と冬の商戦でモデルチェンジを果たすものが多い。
日本でiPhoneの牙城を崩す最も近い存在といえる「Xperia」について考えてみよう。ソニーモバイルはフラッグシップモデルの投入を「年に1回」に変更したかと思いきや、ふたを開けてみれば、2015年は「Xperia Z4」(グローバル版はXperia Z3+)と「Xperia Z5」という2機種が登場した。
- →Xperia Zシリーズの完成形に――ソニーモバイルが「Xperia Z4」を発表
- →ソニーモバイル、「Xperia Z5」シリーズ3機種を発表 世界初「4K」液晶搭載のプレミアムモデルも
- →Xperia Zシリーズは終わりを迎えるのか?――「Xperia Z4」で感じた“疑問と期待”
短期間にフラッグシップモデルが登場すると、当然ながら販売台数は分散されるし、「1年に1台」の方が、完成度の高さがより明確になる。
Xperia Z4のデザインは個人的にシリーズで一番好きだが、Z3からのアップデートが乏しいうえ、Snapdragon 810に起因する(と思われる)発熱がひどく、中途半端な出来になってしまった感がある。とある量販店で、「Xperia Z3の真の後継機、Xperia Z5が登場!」といった切ない案内を目にして、なおさらそう思ってしまった。
Xperia Z4は出さずにZ5で勝負をかけるか、あるいはZ4は出しても、冬にZ5は出さずZ5 Premiumのみで勝負をかけてもよかった。サムスンのGalaxy SとNoteシリーズのように、Xperiaも無印の「Z」と「Premium」の2ラインを、年に1回ずつアップデートする方法も考えられる。
また、2013年の「Xperia Z SO-02E」と「Xperia A SO-04E」のように、ハイエンドとミッドレンジを交互に出す方法も有効だろう。実際、Xperia Aはドコモの2013年夏商戦で“ツートップ”の一角に位置付けられ、ドコモの優遇施策も手伝い、販売ランキングで8週連続1位を記録した。2014年もミッドレンジの「Xperia A4 SO-04G」は発売されたが、Z4と同時期だったため、販売台数が分散したことは否めない。
フラッグシップを年に1回にしてほしいもう1つの理由は、周辺機器が拡充するからだ。iPhoneを使い続ける理由として、「ケースがたくさんあるから」という声をよく聞く。これはiPhoneの形状が2年に1回しか変わらず、多数のケースを開発できることが大きい。一方、半年に1回のモデルチェンジだと、おのずとケースも増えない。とある周辺機器メーカーから「ようやくXperia Z4用のケースが完成したのに、もうZ5が発表されてしまって……」という嘆き節を聞いたが、同様に感じている関係者は多いだろう。
端末の寿命を延ばすことで周辺機器が増え、それによって、端末を購入する動機も高まるのではないだろうか。
2016年は対等な条件でiPhoneと勝負できる?
折しも、総務省主催のタスクフォースで携帯電話の販売奨励金が見直すべきとの結論が出た。2016年は、これまでiPhoneで優遇されていた「月々サポート」「毎月割」「月月割」などのサポートが、同スペックのAndroidと大差なくなるかもしれない。つまり端末価格の安さでiPhoneを購入していた人が、Androidに流れる可能性が出てきた。それでもiPhoneのブランド力は強大だが、条件が平等になれば朗報だろう。2016年は、端末の真の実力が問われる年になりそうだ。
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