MVNOを含めた戦いはドコモの独り勝ち――3キャリアの決算を読み解く:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
大手3キャリアの第3四半期決算は、増収増益と好調だ。一方で格安スマホへの流出は続いており、解約率の低下が大きなテーマとなっている。今回の決算はから読み取れることは?
auのユーザー数は減少傾向、MVNOも含めて反転攻勢を狙うKDDI
収益面では順調に成長しているものの、各種指標で陰りが見えているのがKDDIだ。田中孝司社長は、「ARPAの方は順調に成長しているが、auに関していえば、ID数は減少している」と語った。数値で見ると、その意味がよく分かる。モバイルの契約者数は、第3四半期で3万6000の純増だが、ここからMVNOの増分を除くと、15万4000の純減となっている。auを利用するユーザー自体が減っているということだ。
「MVNOとMNOの両方の軸で見ると、ガイドラインが出て、MNOからMVNOへの顧客流出がおこっている。先にマイナスが出たが、MVNOを足すと、プラスマイナス0の近くまで来ている」(田中氏)
ガイドラインの影響で解約率は前年同期比で低下しているものの、0.78%とドコモに比べると、やや高い水準にあるのも懸念材料といえるかもしれない。業績で見ると、売上高4兆2380億円、営業利益2610億円と前年同期比で増収増益だが、「端末が売れないと奨励金が減り、それがそのままヒットしてお金を使わないために、(営業利益増分の)250億につながった」(田中氏)という側面があり、今後を楽観視できない状況だ。ドコモとは異なり、端末の販売台数も通期で前年からマイナスになっている。
これに対し、KDDIは第3四半期から「UQ mobile」「J:COM MOBILE」といった傘下のMVNOのユーザー数を合算して、「モバイルID数」として公開。「auのID、プラスMVNOでの成長目指す」(田中氏)と、MVNOを成長戦略を担う一翼に位置付け直した。第4四半期からは、2月に買収が完了したビッグローブのMVNOユーザーも、このモバイルID数に含まれる。ただし、ケイ・オプティコムの「mineo」などは、この数字に含めない方針。これは、モバイルIDが「ユーザーとのタッチポイントを示す数字」だからだ。
ビッグローブについても、MVNOはドコモのネットワークを使用しているが、「われわれの観点では、タッチポイントが増えていくことになる」(田中氏)という。各種コンテンツサービスや、金融サービス、au WALLETなどを含めた「au経済圏」を、MVNOに拡大していくというのが田中氏の打ち出した戦略になる。田中氏が「われわれは、ライフデザイン事業を持っているので、これをビッグローブのタッチポイントで販売してもらう」と語っていたのは、そのためだ。
ただし、現時点でauのサービスは、基本的にはキャリアに閉じたものになっており、「auスマートパス」や「auビデオパス」などは、MVNOユーザーが利用できない。ドコモがdマーケットのコンテンツをキャリアフリーにして、MVNOがその販売を取り次いでいるのとは対照的だ。auのサービスとのタッチポイントという視点でモバイルID数を掲げるのであれば、最低限、自社グループのMVNOにau IDを開放するのは急務といえるだろう。
関連記事
- 格安スマホへの対抗、タスクフォースの影響は?――ドコモ吉澤社長が語る
NTTドコモが2016年度第3四半期の決算を発表。増収増益で業績は好調だが、格安スマホやタスクフォースへの影響はどれだけあるのか? 吉澤社長が語った。 - au+MVNOで成長を目指す、ビッグローブ子会社化でタッチポイント拡大――KDDI決算
KDDIは、auとMVNOの契約数を合わせた「モバイルID数」の成長を目指す。ビッグローブの子会社化によって、これまでアプローチできなかった層へauの商品を訴求する。一方でMNOからMVNOへの顧客流出をどう食い止めるかが課題となっている。 - ARM買収で「圧倒的世界一を取れた」、下り200Mbpsの次世代衛星通信で「通信革命を」――孫社長
ソフトバンクグループが2016年度第3四半期の決算会見を開催。孫正義社長はARM買収についてあらためて振り返り、通信の分野で“圧倒的世界一”になれたと語る。米国のベンチャー、ワンウェブが開発する次世代衛星通信サービスも支援する。 - ヤフー、Googleとの連携を強めるY!mobile――“新しさ”でソフトバンクとすみ分け
Y!mobileの2017年春商戦向けサービスや新機種が披露された。サービスはヤフー、端末はGoogleとの連携を強化。ソフトバンクとは“新しい取り組み”で差別化を図る。 - 火花散らすY!mobileとUQ mobile――それでもドコモがサブブランドを展開しない理由
Y!mobileとUQ mobileが激しい戦いを繰り広げている。競争の主戦場はサブブランドやMVNOに移りつつあるが、ドコモはどう出る?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.