au+MVNOで成長を目指す、ビッグローブ子会社化でタッチポイント拡大――KDDI決算
KDDIは、auとMVNOの契約数を合わせた「モバイルID数」の成長を目指す。ビッグローブの子会社化によって、これまでアプローチできなかった層へauの商品を訴求する。一方でMNOからMVNOへの顧客流出をどう食い止めるかが課題となっている。
KDDIの2016年度第3四半期は、前年同期比で増収増益を達成。モバイル通信料の収入は4490億円で、前期比で1.7%の増加となった。
決算会見で田中孝司社長は、(総務省の方針で実質0円が禁止されたことで)販売奨励金が減ったこと、KDDIグループのMVNOが拡大したことにより「全体の業績が上向いている」と振り返る。販売奨励金と販売手数料の減額によって650億円のコスト削減となった。こうした状況を受け、KDDIは業績予想を上方修正する。
KDDIは、auとMVNOの契約者を合算した「モバイルID数」を新たに開示し、今後は同ID数の成長を目指す。モバイルIDのMVNOにはKDDIの連結子会社のみを入れており、第3四半期の時点では「UQ mobile」(UQコミュニケーションズ)と「J:COM MOBILE」(ジュピターテレコム)が該当する。
MVNOの契約数は第3四半期で10万超の純増数を記録し、累計契約数は2016年12月時点で35.7万に上る。MVNOでは特にUQ mobileに力を入れており、MVNOの新規契約で30%のシェアを目指す。また1月31日にはビッグローブがKDDIの子会社となり、第4四半期以降は、ビッグローブが提供するMVNOサービスも(ドコモ回線のサービスも含めて)モバイルID数にカウントしていく。
そのビッグローブは、「ビッグローブ光」で200万超、MVNOサービスで40万超の契約数を抱えており、これらの顧客基盤をKDDIが手に入れたことになる。田中氏は「ビッグローブの子会社化によって、われわれではアプローチできなかったタッチポイントを獲得できた」とメリットを話す。
ビッグローブが抱えるユーザーを、auのタッチポイントに送客し、利用者の拡大を狙う。具体的にはコマース事業(au WALLET Marketやショッピングモール)、エネルギー(auでんき)、コンテンツ(ビデオパスやブックパス)、金融(生命保険や損害保険)、IoTなどの商材を、ビッグローブのユーザーにも訴求していく。
田中氏によると、ビッグローブのポイント交換サービス「Gポイント」を、auのWALLETポイントと連携させる仕組みも検討しているという。
BIGLOBE SIMでauのサービスを販売する手法も想定され、田中氏も「(ビッグローブとUQには)売ってほしい」と述べていた。ビッグローブのMVNOサービスは現在ドコモ回線を使ったものが中心だが、au回線を使ったサービスも期待される。
au WALLETプリペイドカードとクレジットカードの契約数は2016年12月時点で2040万枚に上る。特にau WALLETクレジットカードの契約者は、それ以外のユーザーに比べてauの解約率が低く、KDDIにとっての優良顧客となっている。一方でカード事業の業績について田中氏は、「黒字化にはもう少し時間がかかるが、特にクレジットカードは順調に伸びている。(プリペイドとクレジットを)両方足してプラスになるのは時間の問題」と述べた。
iPhone 7/7 Plusの販売については「昨対比ではプラスになっている。学割も始まって月2980円からiPhone 7を使えるので、春商戦では販売増になるといい」と期待を込めた。
2016年に実質0円が禁止になったことの影響については「(具体的な数字は)算出しづらい」(田中氏)としつつも、「ガイドラインが出てから明らかに(大手キャリア間の)流動が止まったが、MNOからMVNOへの顧客流出が起きている」と危機感を募らせた。グループ内のUQ mobileが成長してモバイルID数は向上しても、KDDIにとって大きな収益は見込めないため「新たなサービスや商材で埋めていかないといけない」とした。
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