速度は十分だがサービスの拡充が必要 日本通信のソフトバンクSIMを使って感じたこと:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンク回線を使ったMVNOサービスがついに始まった。日本通信や、同社をMVNEとするMVNOが料金プランを発表。このソフトバンクのSIMはどこまで使えるのか? 実際に契約をして検証した。
対象となるiPhoneは限定的でサービスの拡充が必要
では、ソフトバンクのSIMロックがかかったiPhoneで使えるという売りは、どこまで魅力的なのか。iPhone 6s以降については、SIMロック解除の対象になっているため、料金を下げようと思った際の選択肢は、ソフトバンク系のMVNOだけではなくなる。購入から半年経てばSIMロックを解除でき、どのキャリアのSIMカードでも選択できるからだ。この場合、どうしてもソフトバンクのエリアでないと困るという特殊なケースを除けば、料金プランがより安く、事業者も多彩なドコモ系MVNOを選ぶのが自然だ。
となると、このサービスに魅力を感じるのは、ソフトバンク版のiPhone 5、5s、5c、6、6 Plusの所有しており、今後も同じ端末を使い続けたいユーザーになるだろう。しかも、今のプランだと、音声通話を使わないでいいというユーザーに限定される。必然的に1台目の端末にはしづらく、2台目の予備端末として使ったり、子どもに渡す際の通信として使ったりはできるが、対象となるユーザーは少なくなりそうだ。どちらかというと、現状のプランはiPad向きといえるが、iPhoneに比べ、セルラー版iPadの市場は大きくない。
日本通信はソフトバンク系MVNOの“潜在市場”を427万契約と推計していたが、これは、「ドコモと同じMVNOの浸透率を、(ソフトバンクのスマートフォンユーザーの数)に掛け合わせたもの」(福田氏)で、あまり精緻な市場予想とはいえない。ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileに流れた(流れる)ユーザーや、すでにドコモ系MVNOに移ったユーザーの数も考慮されていないため、市場の規模はもっと小さくなるかもしれない。
ソフトバンク系MVNOにとっては、「iPhone SE」の存在も逆風になるかもしれない。Y!mobileとUQ mobileは、3月25日に、Appleが新たに発表した32GB版と128GB版のiPhone SEを発表した。Y!mobileの場合、価格は32GB版が実質2万5920円、128GB版が3万8880円(MNPの場合)。UQ mobileは32GBのみとなり、実質価格は2万5920円となる。1年間限定だが、どちらのキャリアでも、最安プランを選ぶと、端末代を含めて2980円という価格で利用できる(2年目以降は1000円料金が上がる)。
iPhone 6、6 Plusは発売から約2年半がたっており、平均利用期間を考えると、機種変更を考えるユーザーが徐々に増えている状況だ。ソフトバンクの過去のiPhoneを利用しているユーザーが、これを機にiPhone SEに乗り換えるというシナリオも十分考えられる。ソフトバンクのiPhone 5sユーザーにとっても、有力な選択肢になりそうだ。Y!mobileやUQ mobileは、これまでiPhone 5sしか販売していなかったが、iPhone SEをラインアップに加えたことで、「さすがに同じ機種に機種変更するのは……」とためらっていたユーザーも取り込めるかもしれない。
ソフトバンク系MVNOはサービス開始直後で、まだ助走段階といえる状況だが、実際に使ってみた限りでは、早急に内容を充実させていく必要がありそうだ。また、Y!mobileやUQ mobileの動向も踏まえると、ソフトバンクのiPhone頼みになっているのも、心もとない印象を受ける。今ではどのキャリアも十分エリアが広がり、ネットワークでの差別化はしづらいかもしれないが、ドコモ系MVNOと比べてもそん色ないサービス内容にしていかなければ、早晩立ち行かなくなってしまうおそれがある。ソフトバンクのiPhone以外の売りをどう立てていくのかは、各MVNOの腕の見せ所といえる。
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