携帯電話はどのようにつながるのか? 「圏内」になるためのステップ:IIJmio meeting 16(3/3 ページ)
IIJが7月15日に東京でファンミーティング「IIJmio meeting」を開催。エンジニアの佐々木太志氏が「スマートフォンがつながる仕組み」と題して、携帯電話がつながる裏の仕組みを紹介した。ケータイが「圏内」になるために、どんなステップを経ているのだろうか?
RRCが確立すると、スマホはeNodeBとの接続が確立したメッセージを返すが、それと同時にコアネットワークへの接続要求となるAttach Requestも出す。Attach RequestはeNodeBを通過し、MMEという設備に送られる。
他社のスマホの電波でもここまでは進めるが、MMEはSIMカードが接続可能かどうかを認証する設備で、HSSにアクセスする。認証や暗号化のためのパラメータが順次戻っていき、最終的に、このSIMカードが契約的に問題なく使えるSIMカードだとなると、端末とMMEまでの暗号化のトンネル、さらにインターネットに抜けるための暗号化のトンネルのようなものが作られていく。これでようやく圏内になる。
そして、ここまできてやっと、どのAPNに接続するかの確認が行われ、最終的にインターネットに接続できるようになる。
なお、MMEは国境を超えて、SIMカード発行事業者のHLR/HSSに問い合わせをかけるケースがある。「IPX」といわれる中継事業者を経由して、世界中の携帯電話事業者のHSSがネットワークにつながっており、MMEはSIMカードのHPLMNを見ながら各事業者に問い合わせる。これが国際ローミング接続だ。
フルMVNOとして、コアネットワークにも深く関わる
これまでIIJを始めとするMVNOは、携帯電話のコアネットワークのうちPGW周りしか運用してこなかったので、「それ以前の接続については、正直、ドコモさんやKDDIさんがちゃんとやってくれる」(佐々木氏)という前提だったという。しかし、SIMロックフリースマホのトラブルシューティングや緊急地震速報の問題検証などで、無線アクセスやコアネットワークの挙動を知らないと困ることが増えたそうだ。
IIJは2017年度以降、「フルMVNO」となってHLR/HSSを運営するようになるので、「特にコアネットワークの技術は他人ごとではなく、より深く関わらなくてはいけないようになってくる」(佐々木氏)。日本のMVNOにとっては前人未到の領域となり、「正直、よく分かっていない」が、「ユーザーに迷惑を掛けず、しっかり安定運用するために、エンジニアは技術の習得が課題になっている」と語った。また、HLR/HSSは新しいサービスを作っていくことも大きな目的だ。「新しいサービスを提供するためにも、自分たちの血肉にしていかないといけない」と、佐々木氏は気を引き締めていた。
関連記事
- IIJが「フルMVNO」に取り組む2つの理由 佐々木氏が解説
ドコモのHLR/HSS(加入者管理機能)と連携し、「フルMVNO」となったIIJ。同社がフルMVNOを目指した理由は2つあるという。ネットワーク本部 技術企画室 担当課長 佐々木太志氏が詳細を語った。 - IIJ、2017年度に“フルMVNO”サービスを提供――今までと何が変わる?
8月29日、NTTドコモがIIJの加入者管理機能「HLR/HSS」の連携を承認した。IIJは国内初の「フルMVNO」となり、2017年度下期に商用サービスの開始を目指す。フルMVNOになることで、どんなサービスを提供できるようになるのか? - 「HLR/HSS」を開放すると「格安SIM」ではなくなる?
今後、MVNOが発展するうえで大きなキーワードとなるのが、「加入者管理機能」を意味する「HLR/HSS」。これを大手キャリアが開放することで、MVNOのサービス拡張が可能になるが、まだ課題も多い。開放のメリットと課題をIIJ佐々木氏が説明した。 - MNOとMVNOの関係
MVNOは、基地局やコアネットワークを持たない特殊な携帯電話会社です。これらの設備は、既存の通信キャリア(MNO)から借りています。今回はそんなMNOと、MVNOの関係について解説します。 - データ通信やテザリングができない――au回線のMVNOサービスで起きている問題
au回線を使ったMVNOサービス(格安SIM)が使えない、テザリングができない、速度が出ない……といった問題に直面したことのある人は多いのでは? その詳細と原因をIIJが解説する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.