ソニーの有機ELテレビ「XEL-1」、新世代画質の秘密(3/3 ページ)
「BRAVIA」にならなかった理由
――次にXEL-1の製品コンセプトについて聞きたいと思います。まず、この独特のデザインについて教えてください
有機ELパネルを見てください。この薄いパネルを生かすことをデザイナーは考えたようです。軽さを演出するために片方持ち。片側に寄せることでアンバランスの中に軽さ――“浮遊感”を演出しました。当たり前ですけど、片側で支えるということは、長く使っていても傾くことはない(=軽い)ことを示しています。
――高級感があって“お父さんの書斎”に似合いそうです。20万円という価格ですが、具体的なターゲット層を教えてください
まず“お父さんの書斎”はあります。そして、もう一つはビデオカメラやカメラなど、パーソナルなコンテンツを“未知の高画質”で見たいという方々でしょう。最近は民生用のデジタルカメラやビデオも性能が上がっていますから、それに対応できるモニターがあると、拍車をかけて入り込んでいけると思います。
――画質モードは「スーパー」「スタンダード」「カスタム」の3つで、シネマ用モードを設けなかったのが残念に思えます
「シネマ」モードについては、2つの考え方ありました。最近の大画面テレビと同じように「シネマ」設定を設けるか、あるいは昔(ブラウン管の頃)のように「カスタム」設定でユーザーに画質調整を解放するか。デフォルトで設定するものをどうするかは製品を訴求する上でポイントになるわけですが、(11インチの)XEL-1で「シネマ」と言ってしまうのはどうでしょう?
XEL-1の場合、画面サイズやスピーカーなど臨場感に関わる部分で、映画を楽しむための要素がすべて盛り込まれているかといえば、そうではありません。ですから今回はカスタム設定を選択しました。もちろん、カスタム設定でもシネマモードと同じように合わせることはできます。
――XEL-1は「BRAVIA」ブランドではありませんが、特別な意味はあるのでしょうか
ブランドに関しては、内部でいろいろな議論が交わされたのは事実です。当面、われわれのビジネスとしては液晶テレビが根幹にあり、明日や明後日、あるいは1年や2年で有機ELにすべて置きかわるかといえば、そうではありません。
有機ELは、いわば“次世代テレビの候補生”的なものですから、相応の育て方があります。そうした意味で、今回はあえてブランドをつけることはしませんでした。
大型化のカギを握る“マスクのいらないプロセス”
――今後の製品展開についてもお話を伺いたいと思います。松尾さんは、大型化に対応するRGB発光体のパターニング技術を開発しているそうですが、どのような道筋を立てているのでしょう
パターニングの方法から言うと、今回のXEL-1は技術としては以前からある「メタルマスク方式」で製造しています。つまり、薄い金属の板(メタルマスク)に微細な孔があいていて、これを通してTFT基板に有機材料を蒸着する方法です。TFT基板にメタルマスクをセットし、“るつぼ”を加熱して有機材料を昇華させます。孔を通った有機材料だけがTFT基板に付着しますから、マスクをずらしながらRGBを形成していく。これが一般的な蒸着といわれる方法です。
しかしメタルマスク方式で大型化すると、マスク自体の変形が発生したり、(パターニング時の)位置精度が得られないといった問題が生じます。他社を含めてもメタルマスク方式で商品になっているのは中型まで。一般的に大型と言われるテレビを作るのは難しいのです。その限界を打破するため、マスクがいらないプロセスを開発しています。
――マスクがいらない製造プロセスとは、どのような方法があるのですか?
候補としては、液晶のように有機ELの発光体を白色に光らせカラーフィルターで色付けする方式、インクジェットでパターニングする方式、そしてレーザー転写などがあります。
ソニーは大型化にフォーカスした技術発表を2004年と2007年に行いました。2004年の12.5インチは白色に光らせてRGBのカラーフィルタで表示する方式、今年(2007年)のInternational CES(→関連記事)ではレーザー転写方式(発光材料をドナーへ成膜後、ドナー背面側からレーザーを照射して、TFT基板上に発光材料を転写することによりRGBの発光層を形成する方式)を使用した27インチの試作機を発表しています。ただ、2004年の方式では大型化は可能ですが、消費電力や色再現性という点が問題になりました。
――では、今後はレーザー転写方式によって大型化を進めるのでしょうか
まだ方式は見えていません。レーザー転写方式を含め、いろいろな方式を見極めつつ、絞り込んでいきたいと思います。大型化や高解像度の製品についても、公表できる時期になったら改めて発表していきたいと考えています。
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