麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」
テレビメーカーの画質回帰、その背景にある2つの新規格とは――IFA振り返り(3/3 ページ)
画質指向への回帰――その背景にある2つの規格
麻倉氏: 3つめのトレンドは、画質指向が戻ってきたことです。3Dテレビのように、これまでテレビメーカーは1つの方向を見る傾向があります。今回は中でもサムスンが「画質に力を入れてるぞ」とアピールし始めました。もちろん、これまでも画質に関する展示がなかったわけではありませんが、ブースの奥の方にあったのです。ところが今回は、巨大な湾曲テレビのオブジェのすぐ横に広い色域やピーク輝度、ローカルディミングに関する展示が並んでいました。
――なぜ、今になって画質をアピールし始めたのですか?
麻倉氏: 1つには4Kへの転換期を迎え、画質にトライしていると明確に打ち出したいのでしょう。4K――Ultra HDの新世代放送やメディアには、色域を広げた「BT.2020」やダイナミックレンジを拡大するHDR(ハイダイナミックレンジ)への対応が期待されています。それに向け、新しい規格にアプローチしていることを訴求するための画質指向でしょう。カーブドでも画質は良いのだというアピールしなければならないこともあるでしょう。サムスンが高画質指向に転換したことで、今後はほかのメーカーにも影響を与えるかもしれません。
――欧州でも4K/8Kの放送が始まるのですか?
麻倉氏: IFAの会期中にドイツテレビプラットフォームという次世代放送推進機構が開催したセミナーに参加したのですが、これが参考になりました。日本は前のめりで4K/8Kを推進していますが、ドイツは堅実に、4Kを「フェイズ1」「フェイズ2」という2つの区切りで推進する方針です。現在はUHDTV1のフェーズ1を始めるところで、HEVCコーデックで4K放送を行うのがポイントです。続いて2017~2018年のフェーズ2ではHDRとハイフレームレートに対応します。フレームレートは100Hzもしくは120Hzの2つをサポートすることが決まりました。つまり3年後くらいには、そうした放送が始まり、対応するテレビが市場に出回ることになります。
もう1つ、次世代Blu-ray Discの技術仕様が7月にほぼ決まったことが挙げられるでしょう。おそらく来年の「2015 International CES」で発表され、秋には対応するプレーヤーやタイトルが出てくるはずです。
4K BDでは、3層/4層の大容量メディアを使い、高効率のHEVCコーデックで記録します。さらにHDRをサポートしました。従来のBDが求める画面輝度は0~200nits(カンデラ/平方メートル)でした。それを最大2000nitsまで上げることになります。また各色8bitから10bitになりますから、見た目としては明るくなるといより、“明るい部分にも階調がちゃんと付く”のがメリットでしょう。今までは白トビしていたところに絵が見えてくる。つまり、人間の目が普段見ているような映像に近づくのです。
これまで、人が目で感じる映像を作れなかった理由は、ディスプレイの性能とメディア容量でした。次世代BDでは、それを再現できるディスプレイとメディアを作ろうとしています。
――なるほど。次世代放送と4K BDでテレビ側の進化も求められるわけですね
麻倉氏: 国内でもソニーや東芝は最近、画面のピーク輝度を上げる技術を展開していますよね。秋の新製品ではHDRを想像させる言い方になります。4K BDが見えていくる来年の秋に向け、そうした傾向はより強まり、本格化していくでしょう。
――ほかに印象に残ったテレビ関連の展示はありましたか?
麻倉氏: フィリップスのアンビライトですね。テレビ画面の後ろにライトを付け、壁にさまざまな色の明かりを投影するインテリア指向のテレビですが、今回はなんと動画を入れてきました。
――どういうことですか?
麻倉氏: これまでは映像信号の中で強い色を明かりとして投影していたのです。例えば海の映像が映っていれば青の光、一面のひまわり畑なら黄色といった具合です。しかし、IFAのカンファレンスで見た次世代版のアンビライトでは、雲の映像が映っているときは背後に雲っぽい模様が投影されるのです。一瞬、画面が大きくなったかと思いました。ほかにも、例えば人物が画面に映っていたら影のような明かりを投影するなど、面白いデモも行っていました。
この次世代アンビライトはまだ開発中で、フィリップスも「まだこれから」と言っていました。AVファンの中には「なんだそれ」と思う人もいると思いますが、壁掛けテレビと間接照明はとても似合いますから、インテリアとしても面白いと思います。
ヤマハの「Relite」など、音と光という似たアプローチの製品もあります。欧州の文化や考え方は、われわれからは少し分かりにくい面もありますが、やはりトータルで“文化”を感じましたね。
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