事例で学ぶAIガバナンス
「責任あるAI」チームを再編した米Meta ビッグテックですら手探り、AI倫理に“最適解”はあるのか(2/3 ページ)
MicrosoftにもレスポンシブルAIチーム再編の過去が
これは同社が実施した、約1万人を対象としたレイオフの一環として行われたものだった。一方でMicrosoftには、レスポンシブルAIに関する専任部署「Office of Responsible AI」も設置されており、こちらの組織は活動を継続していると同社は発表している。
しかしOffice of Responsible AIが担当しているのは、AIに関する原理・原則の策定であり、それを製品開発レベルで実行に移すのが倫理・社会チームの役割だった。そのためレスポンシブルAIの実現という点では、一歩後退なのではないかと批判されたのだ。
またこの解雇が行われたタイミングは、MicrosoftがOpenAI、さらには生成AI全般に対して多額の投資を行い、それに社運を賭けるかのような決断を下していった時期と重なっていたため「生成AIという先端技術の製品化にブレーキをかけかねない存在だった、倫理・社会チームが邪魔になったのではないか」と推測する声も見られた。
ただTechCrunchの報道によれば、同社の倫理・社会チームは22年の時点で組織改編の対象となっていた。そのため23年に解雇が実施したときには、ごくわずかな人数しか残っていなかったようだ。倫理・社会チームのメンバーが22年時点でどこに再配属されたのかは明らかではないが、Microsoftは生成AI活用への大幅なシフトを進めている。Meta同様、生成AI関連の開発組織に組み込まれた可能性も高い。
いずれにせよ、こうしたMicrosoftの動きがあったことで、Metaの発表に対しても「コストを削減したいだけなのではないか」「製品の安全性や倫理性より、製品化のスピードを重視したのではないか」といった臆測が生まれることとなったのである。
生成AI時代に求められる、「レスポンシブルAI」実現方法の再考
生成AIや基盤モデルなど、新しいタイプのAI、AI導入手法が登場したことで、既存のAIガバナンスは大幅な見直しを迫られている。
企業が特定の目的に合致した、オリジナルのAIを自社開発する形式であれば、モデルの透明性や品質を維持し、その出力結果に一定の責任を持てる。しかし外部の企業や組織が開発した生成AIモデルを利用し、それを土台としてAIアプリケーションを実現する、すなわち基盤モデルによる生成AI開発の場合、モデルがブラックボックスとなってしまいがちだ。
そこで実現されるアプリケーションも、以前とは比べものにならないほど汎用的であったり、幅広いインプットを許可するものであったりする場合が多い。これまでは一定の形式であると想定できた「推論データ」が、ユーザーがありとあらゆるスタイルやフォーマットで入力可能な「プロンプト」になってしまったわけである。
その結果、既存のAIガバナンスで規定していた、透明性や説明責任を実現するプロセスがうまく機能しなくなる事態が起きている。それどころか、そもそも既存のプロセスが適応できないという場合も多い。
最近では、大規模AIモデルを開発する際の倫理性や合法性も重視されるようになった。実際に米スタンフォード大学は、主要基盤モデル間の透明性を評価したスコアリングシステムと、それによる評価結果を発表している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で学ぶAIガバナンス
AIを本格的に業務に取り入れ、大きな効果を得たいと考える企業の数は日本でも着実に増えている。一方、米国企業に比べて「AIガバナンス」の導入は遅れていると指摘する声もある。AIを開発・利用するに当たり、どのようなガバナンスが必要になるのか。実際の事例を基に考える。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
資さんうどん、従業員の退職理由などが外部から閲覧可能に 委託先の勤怠システムに設定不備
-
2
NEC、委託先の情報漏えいで謝罪 「セキュリティ事業を手掛ける企業として反省」
-
3
Google、「Gemini 4 Carbon」発表 「Argon」公開から2週間、サイバー防御能力などを強化
-
4
渦中のGMO、熊谷代表の発信は“火に油”か? 「経営トップが自ら広報」の功罪
-
5
JALの予約システムに不正アクセス 約9万人分の予約情報が漏えい 一部ではパスポート番号も
-
6
Apple、初のタッチ対応「MacBook Pro」発表 新型OLED搭載、国内価格は49万9800円から
-
7
VTuber「兎田ぺこら」グッズにSNSで風評被害→示談成立 「保護者同伴で謝罪などがあったため」
-
8
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
9
「ツイキャス」不正アクセスで停止 復旧までに「相応の時間」
-
10
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR