熊本地震、冷房失った高齢者の死亡リスクが30日で5%上昇か 九州大、AIとデータで推計

 熊本地震で、住宅被害により冷房機能を失った高齢者の30日間死亡負荷がモデル上5.34%上昇する可能性がある――九州大学大学院工学研究院の馬奈木俊介主幹教授の研究室らが8月5日、こんな推計を発表した。

 衛星や国勢調査など複数のデータとAIを活用し、災害時に冷房や電力を優先配備すべき地域と必要量を推計する手法を構築。平時から高齢者や災害弱者が集中する地域を特定し、防災投資やインフラ分散に役立てることも提言している。

機能的住宅喪失と高齢者曝露。(a)地理的に限定された公式の住宅喪失証拠と、シナリオ総数の制約に用いたスナップショット (b)震源距離等から推計される住宅喪失の地図 (c)それに関連する65歳以上住民の中央曝露
冷房喪失による死亡リスクの分布。(a)30 日間の過去シナリオにおける期待高温日数、(b)有効な冷房がない場合、影響を受ける高齢者10万人あたりの増分死亡リスク、(c)30 間死亡負荷の相対増加。県で重み付けした中央対比と移転効果の区間

 同研究室と、研究室発のAI ESG(環境・社会・ガバナンス)スタートアップaiESGが発表した。

 衛星観測データ、国勢調査の人口分布、建物・避難所情報、自治体の被害報告、気象データなどを組み合わせ、震源からの距離と、周辺にある建物の数や分布を基に住宅被害を推定。その結果を約3万7000の小さなエリアに落とし込み、地域ごとに65歳以上人口の冷房ニーズ、必要な電力量、同一の屋外気温の下での「有効な冷房あり」と「なし」の死亡リスク差を推定した。

 中央シナリオでは、機能的に喪失した住宅は303.5棟、影響を受ける高齢者は約246人と推計

。これらの保護には、ピーク冷房能力34.6kW、1日あたり622.5kWhの電力が必要になる。有効な冷房がない場合、モデル上の30日間死亡負荷は5.34%上昇するという。

 大規模災害の直後は道路寸断や通信障害で被害の全容把握が遅れ、支援が届きにくい「情報の空白」が生じるが、空白期でもデータに基づいて支援の優先度を判断するための科学的根拠を提供する手法として開発した。「引き続き状況を注視してまいりますので、ご意見・ご提案があればお寄せいただきたい」としている。

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