BYDの軽EV「RACCO」は買いか? 補助金込みで200万円切り、競合の日産・ホンダが受ける衝撃(3/3 ページ)
中国で進む競争が日本にも持ち込まれる?
とはいえRACCOの日本市場投入が、日本の軽EV市場に本格的な競争を持ち込むのは間違いない。補助金の適用条件や金額は地域によって異なるものの、200万円台前半から購入可能な価格帯を実現したことで、ユーザーにとって、選択肢が大きく広がった。
日本市場への影響で言えば、特筆すべき点がもう一つある。それは、中国で進む「クルマを中心とした生活エコシステム」の競争が、日本に持ち込まれるきっかけになるかもしれない点だ。
あえて言うまでもないことだが、BYDは現在、中国のEV産業の急成長を象徴する存在になっている。95年、中国・深センでバッテリーメーカーとして創業したBYDは、現在では電池技術を核に、車両開発、生産までを自社で手掛ける垂直統合型の自動車メーカーへと進化した。25年には、EVおよびPHEVを含むNEVの世界販売台数で500万台規模に達し、テスラと並ぶグローバルEVリーダーの一角を占める存在となっている。
26年に開催された北京国際モーターショーでは、BYDはコンパクトEVから高級ブランド「仰望」まで幅広い商品を展示し、多層的なブランド戦略を展開した。普及価格帯のEVから、高級SUVやスーパーカー領域までカバーする商品展開は、中国自動車産業の変化を象徴している。
しかし、中国市場に目を向けると、状況は大きく変わりつつある。中国ではNEVの普及が急速に進み、都市部ではEVが特別な存在ではなく、日常的な選択肢になった。その結果、市場は成長期から競争激化の段階へ移行している。
現在の中国市場では、BYDだけが優位に立っているわけではない。通信大手Huaweiは、現地自動車メーカーとの協業による「鴻蒙智行(HIMA)」を展開し「AITO」「LUXEED」「STELATO」「MAEXTRO」など複数ブランドを通じて、ソフトウェアを核としたSDV(Software Defined Vehicle)戦略を推進している。
中国のスマートフォン大手であるXiaomiは、スマホや家電を含むAIoTエコシステムを背景にEV市場へ参入し、スポーツセダン「SU7」を投入。スマートフォン由来のユーザー体験を自動車へ拡張しようとしている。
さらに、ソフトウェア企業のUCWebを創業・売却した経験を持つ何小鵬(He Xiaopeng)氏が率いるXPENGは、EV専業メーカーとしてAI技術や高度運転支援システムを強みに存在感を高めている。
つまり、中国自動車産業の競争軸は、単に「EVを作ること」から、「クルマを中心としたデジタルエコシステムを構築すること」へ移りつつある。車両単体の性能だけではなく、車載OS、OTAアップデート、AIによるサービス、エネルギーマネジメント、家庭や都市との連携といった領域が競争力を左右するようになっていると言ってもいい。
こうした流れの中、BYDも単なるEVメーカーからスマートモビリティー企業への進化を目指しており、一連の流れがRACCOを橋頭保(ほ)として日本にも持ち込まれるかもしれない……というわけだ。
余談だが、興味深い日中の違いとして日本メーカーが「安全性と成熟度」を重視しているのに対し、中国メーカーは「ソフトウェアによる進化」を前提にADAS(運転支援システム)を設計している点が挙げられる。RACCOは現時点の装備だけでなく、購入後も機能が進化する可能性を含めて評価すべき一台と言える。
RACCOは試金石 日本市場でブランド築けるか
これまで日本の軽EV市場は、日産「サクラ」が大きな役割を担ってきた。そこにBYDが参入し、さらにホンダなど国内メーカーも競争に加わることで、ユーザーの選択肢は確実に広がっていく。
競争が活発化すれば、価格、性能、サービスのすべてで市場全体が進化する。地方ではガソリンスタンドの減少が進む一方、自宅充電を前提としたEVは、日常の移動手段として現実味を増している。
RACCOの登場で最も重要なのは、200万円台前半という現実的な価格帯に、実用的なEVの選択肢が増えたことだ。そして、RACCOが普及すれば中国で主流になっている「クルマのスマートモビリティー化」競争が、日本に持ちこまれる公算が大きい。
つまりRACCOは、日本の軽EV市場に価格競争と技術競争をもたらすだけでなく、中国EVメーカーが日本市場でブランドを築けるかを占う試金石になる一台と言えるだろう。
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