フェスの“案内AI”、正体は「Acrobat」――大阪・ジャイガで稼働したPDF製の即席チャットbot(2/3 ページ)

フェスの案内係は「PDF製チャットbot」だった

 一方のPDFスペースは、ブースの外で働いていた。複数のPDFやWebページを1つの作業スペースに集め、AIアシスタントに内容を質問できる機能で、2025年12月に日本語提供が始まった「Acrobat Studio」に含まれる。個人向けプランは月額3300円だ。回答には出典の番号が付き、元の資料のどの記述に基づくかをたどれる。

ジャイガ向けに用意されたPDFスペース。左に8つのファイルの要約、右のAIアシスタントが出典番号付きで回答する

 ジャイガでは、公式サイトのFAQやアクセス案内、日別のタイムテーブル、会場マップなど8つのファイルを読み込ませ、リンクを公式サイトとSNSで告知した。Acrobatを契約していない来場者も、リンクを開けばブラウザからそのまま質問できる。

協賛募集フォームに一般客の質問が集まっていた

 導入の背景には、主催のキョードーエンタテインメントが抱えてきた問い合わせ対応の課題があった。会場で取材に応じた同社セールスプロモーション部の前田穂乃香氏によると、問い合わせは開催5カ月前の3月ごろから届き始める。公式サイトに置いているのは協賛や飲食出店の希望者向けのフォームだが、そこに届くメールの6〜7割はアクセスや持ち物を尋ねる一般客からの質問で、本来受けたい協賛の相談が埋もれていた。

取材に応じたキョードーエンタテインメント セールスプロモーション部の前田穂乃香氏と杉山芽生氏

 前年まではフェス全体を統括するプロデューサーが自ら返信しており、その数は300件規模に及んだ。出演アーティストのブッキングと並行して深夜や早朝のメールに答え、一度返信するとさらに質問が返ってくる。公式サイトのQ&Aページは年々項目が増え、目的の答えを探すより先にメールを送る人が多かったという。電話窓口の「キョードーインフォメーション」も、受付は平日12時から17時に限られる。

 PDFスペースの導入が決まったのは本番の2週間前だった。Adobe側の提案は、公式サイトに載せている情報をPDFにしてアップロードするだけでよいというものだ。チャットbotを一から用意すると誰が情報を入れるのかが問題になるが、PDFスペースならファイルを置けばAIが中から答えを探してくれる。

 実際には、Webページのデザインごと出力したPDFはうまく認識されず、テキストを抽出して作り直した。本番3〜4日前には、メールで実際に届いた質問と回答をまとめたPDFを追加している。

 当日は運営側の道具にもなっていた。前田氏は「たまに回答が違う部分もあるが、ほぼほぼ合っている。スタッフが分からないことがあったら、そちらに振って回答してもらっている」と話す。持ち場ごとに分かれたスタッフが担当外の質問を受けたとき、その場で調べる手段として機能していた。

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