小寺信良のIT大作戦
「Meta VR Glasses」で見えてきた、コンピューターディスプレイの未来(2/4 ページ)
筆者は15年から、PCの拡張ディスプレイとして40インチの4Kテレビをそのまま使うという手法を取っている。当時はPC向けで40インチクラスのディスプレイがそれほどなかったこと、テレビの主流が50インチ以上となり、40インチ前後のテレビが値下がり傾向にあったこと、PCがHDMI出力を備え、4K解像度出力対応になってきたことなどの条件が整ったのが、ちょうどその頃だった。
そこからもう10年ぐらいこの方法で仕事しているのだが、マルチディスプレイとして画面をたくさん用意するより、1枚の広いディスプレイを使うというスタイルの方が効率的だと感じている。ディスプレイごとの色温度やコントラスト調整が不要だからだ。
しかし昨今、ヘッドマウントディスプレイをPCの拡張ディスプレイとして使用するという例が出てきた。既に20年発売の「Oculus Quest 2」では、VR空間内にPCディスプレイを持ち込むことができており、「仮想空間を仕事場にする」ということを実現できていた。
だがこの手法が実際に役に立つことを広く認知させたのは、23年に発表された「Apple Vision Pro」だ。ヘッドマウントディスプレイでいったんは視界を遮断するが、そのディスプレイに内蔵されているカメラで現実世界を撮影し、スルー映像として表示する。PCのディスプレイは、そのスルー映像の中に浮かんだ状態で表示する。これを「空間コンピューティング」(Spatial Computing)という言葉で表現した。筆者もこうした取り組みには非常に興味があるところだが、最安モデルでも64万9800円という価格に、とても手が出せなかった。
他方で、似て非なるアプローチもある。22年頃から急速に成長してきた、メガネ型ARディスプレイだ。Nreal(現XREAL)の「Nreal Air」が火付け役となり、これまでは業務向けであったこれらの製品が、コンシューマー市場でも広く認知されるようになっていった。
これはUSB Type-C接続でPCやスマートフォンに接続し、シンプルな拡張ディスプレイとして利用する製品だ。元々は動画コンテンツを仮想的な大画面で楽しむための製品だが、サングラス型で気軽に装着でき、価格もこなれている。
解像度はフルHD程度なのでそれほど高解像度ではないが、 PC接続での仮想的な画面サイズは130インチ程度で、かなり大きい。コンピューターが作り出した仮想空間の中にディスプレイを入れ込むのではなく、半透明のグラスにより現実空間を透かして見ながら、そこにディスプレイ画面を表示する。
空間コンピューティングの入り口に立つ
現在ARグラスは競争が激しい分野であり、多くのメーカーが参入しているところだが、先日レビュー用に「RayNeo GT Max」をご提供いただいた。そもそもは映像コンテンツを視聴するための製品だが、USB Type-C接続で映像伝送できる機器であれば拡張ディスプレイとしてPCやスマートフォンに接続できる。PCから見れば、ただの拡張ディスプレイとして認識される。
電源はUSB Type-Cから供給されるので、グラス側はバッテリーを持たない。挿せばON、抜けばOFFというシンプルな製品だ。試しにこれで原稿執筆してみたところ、異様なほどに効率が上がることに気がついた。
仮想的には約6m先に130インチ相当の画面があることになるが、解像度はフルHDしかないので、そこは4Kの40インチテレビとは比較できるものではない。当然、1画面に多数のアプリが展開できないので、原稿執筆用のCURSORをフル画面で起動している。CURSORは同じ画面内でAIが起動でき、エディタ画面にはタブとしてWebブラウザも展開できるので、これだけあればなんとかなる。
効率が上がる原因は、3つあるようだ。1つは、視界がかなり遮断されるので、気を散らすものがないということである。もちろん視線を落とせば、手元のキーボードぐらいは見える。だがこの環境が、まるで暗いほら穴の中で仕事しているようで、妙に落ち着くのである。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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