不動産とITのナゾ

斜めの屋根、三角形の家……なぜ「フシギな物件」は存在するのか(2/2 ページ)

 建物の上部が三角柱状に切り取られた戸建て住宅やマンションを見たことがあるかもしれない。これには建築基準法の「道路斜線制限」などが関係している。道路斜線制限とは、道路に面した建物の高さを、道路側から引いた斜めの線で制限する規則のこと。近隣の日照や通風を妨げないようにすることが目的だ。

 低層の戸建てのためのエリアである「第一種低層住居専用地域」では、ほかにも高さや建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)、容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)など多くの制限がある。例えば、「高さ10メートルを超えてはいけない」といった規制だ。

 もちろん、行政は多くの人が快適に住めるように規制を作っている。しかし、家を建てる人は「敷地の中で、可能な限り広い家にしてもらいたい」と希望するのが常だ。「全体最適」と「個別最適」。相反する両方の要望を何とか満たそうと、建築士や不動産業者が苦心した結果、「変な間取りや形」の家が生み出されていくというわけだ。

フシギな間取りは心霊現象とは無関係だが……

 24年に公開され、注目を集めた映画「変な家」は、奇妙な建物を起点としたミステリーだった。「十角館の殺人」(講談社)など「奇妙な間取り」にまつわる小説やドラマは多い。変な家、変な間取りは、不合理に見える形や構造から、人に不思議な気持ちだけでなく、ちょっとした恐怖や好奇心を誘発するのかもしれない。

 阿蘓氏は「もちろん、フシギな間取りが心霊現象を起こしたり、事件につながったりすることはない」と笑う。ただ、「設計能力が低いために、不合理な間取りになっている物件は散見される」と指摘する。デザイン性や床面積の大きさなどを重視した結果、「水回りを2階にまとめたため、帰宅後すぐ手を洗えなくなった」「リビング階段をつけたら冷暖房効率が落ちてしまった」といった例も少なくない。

「間取りの成功」にITは役立つか

 23年に国土交通省が実施した「住生活総合調査」によると、今後の住み替え意向がある世帯が既存住宅(中古住宅)を購入する際の条件では、「希望する広さや間取りであること」が「希望する立地にあること」に次ぐ2位にランクインした。自宅は家族と長い時間を過ごす場所だけに、「間取りの失敗」「不合理な間取り」は住人の満足度の低下など大きなリスクを伴う。

 最近では仮想現実(VR)やCGを活用した「建築VR」が登場。ユーザーがVRヘッドセットを装着し、室内外を歩き回ったり視点を変えたりすることで、図面やパースでは分かりにくい広さや高さ、素材の質感などを直感的に把握できるようになった。設計者と施主が同じVR空間を見ながら仕上げやレイアウトを検討するため、施工前のイメージと完成後の建築物のギャップが小さいといわれる。

 「フシギな間取り」でも、そうでない間取りでも、本当に大事なのは、居住者が長期的に満足できるかどうか。住人にとっての「成功した間取り」作りには、建築士らの協力はもちろん、急激に進化するITも貢献できるかもしれない。

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