危機管理広報のプロが分析

涙に叱責に持論……GMO熊谷代表の謝罪会見、どこがまずかった? 危機管理広報のプロが分析(2/5 ページ)

涙や社員への叱責も、ニュースになってしまう

 言葉だけではありません。会見中の表情や振る舞いも、報道機関にとっては重要なニュースの材料です。今回、熊谷代表は、自身が長年大切にしてきた経営理念や、顧客の笑顔を第一に考えてきたという思いを語る中で、涙を見せる場面がありました。経営トップや登壇者が謝罪会見で涙を見せる場面は過去にもあり、その都度、大きく取り上げられてきました。

 例えば、1997年の山一證券の自主廃業会見では、野澤正平社長が社員への思いを涙ながらに語った場面が、今も多くの人の記憶に残っています。一方、14年の野々村竜太郎元兵庫県議による号泣会見は、その独特な振る舞い自体が大きな話題となりました。両者は会見の性質も背景も異なりますが、登壇者が涙を見せる場面は、報道機関にとって注目度の高い映像になりやすく、それ自体が新たな報道材料になります。

 ただし、同じ涙でも、何について涙を流しているのかによって、社会からの受け止められ方は大きく異なります。

 今回の熊谷代表の涙は、私には、被害者への謝罪というよりも、自身の経営理念やインターネット産業への思いを語る中で感情が高まった場面のように映りました。そのため、被害者や社会に対する謝罪の気持ちを伝えるという点では、必ずしも効果的ではなかったように感じています。

 もう1つ、特に残念だったのが、会見中の社員への注意です。資料の表示が円滑に進まなかった場面や、説明者のスーツのボタンが開いていた場面で、熊谷代表から社員やスタッフに対して、叱責とも受け取れる言葉が発せられました。

 謝罪会見の最中に、メディアや社会が見ている中で、経営トップが社員を叱責する。これは広報の観点から見れば、絶対に避けたい振る舞いです。資料の表示に時間がかかったとしても、その間を別の説明でつなぐことはできたはずです。スーツのボタンについても、その場で注意することが、謝罪会見の目的にどれほど寄与したのでしょうか。そもそも、謝罪会見は社内会議ではありません。

 そして気になったのは、熊谷代表が経営理念の説明の中で、社員を「パートナー」と呼ぶなど、上下関係を感じさせない組織づくりについて紹介していたことです。そうした理念を説明しておきながら、会見中に社員へ強い口調で注意する場面があれば、理念と実際の振る舞いとの間に違和感を覚える人もいるでしょう。

 企業や経営者のイメージというものは、時として一瞬の振る舞いによって形成され、独り歩きしてしまうものです。実際に、今回も社員への叱責シーンが複数のテレビ番組やニュースで取り上げられていました。経営トップ自身が、本来の情報漏えい問題とは関係のないニュースを新たに作ってしまったことは、非常にもったいないことだと思います。

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

この記事の著者

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR