「給与維持の週休3日制」AI効率化で実現 しかし社員が喜ばず……なぜ? 「ライザAI」提供企業で起きたこと(2/3 ページ)

「金曜日が怖い」から1カ月 社員に起きた変化

 戸惑いとともにスタートした週休3日制ではあったが、平均年齢が30代前半と若いことに加え、「スタートアップなので、新しいことへの適応が早い」(佐々木CEO)という強みから、導入から約1カ月で新しい勤務サイクルが定着してきた。

 佐々木CEOは「平日に休んだことがないので、何をしていいか分からず、最初の2週間くらいは『金曜日が怖くて仕方がない』という社員もいた。でも1カ月もすると慣れてきて、従来通りに業務が回っていくようになった」と手応えを話す。

 その変化を支えたのは、生成AIの進化と社員同士のノウハウ共有だ。

 例えば、ソフトウェア開発の現場では、AIに指示を出してプログラムを生成するツールの活用が進んでいる。従来は企画担当者と複数のエンジニアが約3カ月かけて開発していたような小規模アプリケーションも、今では企画担当者1人がAIを使い、約1カ月で形にできるという。佐々木CEOは「プランナーが自分の頭の中にあるものをAIに伝えれば、アプリケーションが出来上がる。コミュニケーションコストの削減につながり、生産性が大きく上がっている」と説明する。

 同社のSlackでは、社員がそれぞれ利用するAI同士が会話をして、システムへの機能追加や仕様の確認などを進めるケースもあるという。もちろん、完成形がある程度想定できる業務など、AIに任せる業務は人が見極める。さらに、社員間で「自分はこういう使い方をしている」などとAIの活用法を共有する動きがより活発になったという。

 生産性の向上を裏付ける定量的なデータはまだないものの、取引先への納期やサービスの品質に、制度導入による大きな支障は出ていない。佐々木CEOは、肌感覚では「20%どころではない、それ以上の効率化ができている」と語る。

 同社ではリモートワーク制度を設けておらず、社員が出社し、ノウハウを共有しながら仕事に取り組む。佐々木CEOが目指すのは、長時間働くのではなく、限られた時間に集中して成果を出す企業文化だ。「だらだら仕事をするのは格好悪い」という意識を社内に根付かせ、効率化を当たり前にしたいという。

増えた休日は「感性を磨く時間」に

 週休3日制には、業務効率化とは別の狙いもある。AI時代に求められる人材を育てることだ。

 佐々木CEOは、AIの進化によって人間の仕事の一部が代替され始めている中、これから重要になるのは、AIに何を作らせるのかを考え、判断できる人材だと指摘する。

 「人間がAIと比較される立場にいるうちは、仕事を奪われるリスクがある。これからはAIに指示を出す側、つまりマネジャーになる必要がある」と語る。

 特に同社が取り組むエンターテインメント分野では、人の心を動かす体験を生み出す力が欠かせない。そのためには、自ら多様な経験を重ね、人は何を面白いと感じ、何に感動するのかを理解することが重要だと考えている。

 そこで社員には、増えた休日を自由に過ごしてもらう一方、「もし余力があれば、自分の感性を広げるような時間に使ってもらえたらうれしい」と伝えている。実際、金曜日に映画館で複数の作品を鑑賞する社員や、旅行先の食文化に興味を持ち、料理が人を楽しませる仕組みに関心を持つようになった社員もいるという。

 一方、業務内容が趣味の延長線上にあり、あえて休日を利用してAIツールに長時間触れてみる社員もいる。金曜日を丸一日使い、ひたすらAIとの対話を繰り返す。良い面も悪い面も含めて、人がAIとの会話に引き込まれるメカニズムを探っているのだという。

 「自分がどんな体験をお客さんに届けたいのか。それを明確にイメージし、言い切れることが、マネジャーの仕事に求められる能力だと思う」と佐々木CEO。社員が多様な体験を重ね、発想の幅を広げることが、人材としての競争力につながると期待している。

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この記事の著者

長嶺真輝
長嶺真輝

ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。 2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。 Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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