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HD DVDは“ハリウッドの9カ条”に完全対応する──東芝とNEC、新コーデックの効果を披露(2/3 ページ)

» 2004年01月17日 00時44分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ・互換性

 既存DVDとの互換性を重視すべきとの要求。これはソフトのHD化が行われた後も、既存のDVDが売れ続けると予想されているため。HD DVDの場合、記録層の深さや光学特性をDVDに近くしているため容易。Blu-ray Discではコスト面での不利があると言われているが、問題は時間が解決するかもしれない。

 ・インターネットとの接続、インタラクティブ性

 HD DVDの中でインターネットへの接続をどのように利用するかは検討中。これはBlu-ray Disc陣営も同じ。異なる言語の字幕をダウンロードしたり、新しいボーナスコンテンツにアクセスしたり、コピーが広まった場合に特定IDのディスクを無効にするなどの使い方が検討されているようだ。

 ・オーサリングの容易さ

 既存DVDのオーサリング手法、ノウハウをそのまま引き継げること。HD DVDは既存DVDと互換性を重視したオーサリングが可能。ただしBlu-ray Disc側はJavaや3Dグラフィックを採用するなどして、よりインタラクティブ性を追求しており、ツールの開発が進めば差は無くなるだろう。

 ・信頼性の確保

 HD DVDはオープンなDVDフォーラムで作られており、互換性や信頼性などの面で有利と主張している。ただしBlu-ray Discにはまだ公開されていない情報も多く、最終的には両規格で大きな差が生まれるとは考えにくい。

まだ未完成画質?のH.264。WMVは評価できず

 放送などリアルタイムの固定ビットレート/ワンパスエンコードでの高画質が求められる分野ではMPEG-2を採用。最高24MbpsのフルHDフォーマットがHD DVDで利用できるようになる見込みだ。一方、ゆっくりと高画質のエンコードが行える映画の圧縮では、H.264とWMVを用いた可変ビットレートのエンコードを用いることで長時間記録を可能にする。この場合、7Mbps以上のビットレートを想定しているという。

 Blu-ray DiscのROM規格は、正式採用されるコーデックを含め、まだ完全には決まっていないが、1層で25Gバイト、2層で50Gバイトになることが明らかになっている。HD DVD ROMの、それぞれ15Gバイトと30Gバイトに比べると大きく見劣りする。その分、従来のDVDと同じ生産技術を応用できるメリットで、生産コストを抑え、プレーヤーも安価に発売できるが、同じコーデックならば記録時間は短くなる。

 しかし前述したように、HD DVDのビデオコーデックには、MPEG-2の2倍以上のパフォーマンスと言われるH.264とWMVが採用されている。NECの第1ストレージ事業部統括マネージャ早津亮一氏は、コーデックの実力差を3倍と見積もる。つまり、H.264やWMVならば、MPEG-2の1/3のビットレートでも同等画質を実現できるというわけだ。その結果、MPEG2を用いるトータルパフォーマンスは、HD DVDの方が上となる。

 だが、後述するが、これは机上の空論にしか過ぎない。Blu-ray側も、ROM規格にH.264を盛り込む可能性があるからだ。

 さて、今回の発表における目玉は、MGMタワー内にあるシアターでのH.264とWMVのパフォーマンスデモである。まずはH.264から。2種類の映画についてオリジナルマスターと12Mbps、8.5Mbpsに圧縮した1080pの映像を比べさせてもらった(なお比較に使った映画タイトルは、題名を含め公開してはならないことになっている)。1本目はアメリカの典型的な風景と宇宙空間。2本目はパリの街を疾走する改造市販車が中心の映像だ。

 まず1本目は、オリジナルマスター自身がかなり高画質。ただしフィルムグレインは消え、道路などの細かいテクスチャで起伏が無くなったように見えた。12Mbpsであれば、気を付けて見なければ、それほど気にはならないかもしれないが、8.5Mbpsでは明らかな差がわかってくる。

 2本目は、オリジナルマスター自身がアップコンバートされた映像のように、多少、ボケた印象で、あまり画質が良くなかった。8.5MbpsのH.264では、オリジナルマスターに比べて、輪郭の甘さが協調される印象だ。動きの非常に激しいカット割の映画は不得手という印象を受けた。フィルムグレインがかなり弱くなっているのは、1本目と同じである。12Mbpsでも軽減はされるが、基本的には同傾向を示す。

 さて、注目はWMVだろう。WMVはInternational CES会場で見せていた「マトリックス・リローデッド」の映像と、これまでにも何度か使われていた「トイ・ストーリーズ」の映像。このうち、マトリックスの映像はPentium 4/2.6GHzで再生させ、24インチ液晶ディスプレイに出力したものだったため、細かな品質のチェックはできなかった(基本的にはH.264と同様こグレインが消える傾向が強いが、シャープさや解像感の高さはWMVの方が上)。

 トイ・ストーリーズに関しても、オリジナルマスターが完全デジタルでグレインなどのノイズ成分がないツルツルの映像であるため、コーデックの比較評価を行う材料としては不適切。映像の質は非常に良く、MPEG-4を起源とするビデオコーデックの中では、もっとも美しいことは疑わないが、果たしてハイビットレートのMPEG-2と比べてどうか?というと、辛い面もありそうだ。

 ただ、ハリウッド関係者を招いて行われた画質テストでは7.7MbpsのWMVも25MbpsのMPEG-2には敵わないものの大差はない、という結果も出ている。個別のコメントでは“ノー”を出す人間も多かったようだが、かといって圧倒的に落ちる、というわけでもないようだ。

製造のしやすさか、将来を見据えた大容量か

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