いすゞ自動車はKDDIと協力して開発した、商用車ベースのテレマティクスシステム「みまもりくんオンラインサービス」を2月25日に発表、同日より出荷を開始した。このシステムはトラックを運用する物流会社向けのもので、初期導入価格は一台あたり7万8000円。このほか月額4500円がみまもりくんオンラインサービスのランニングコストとして必要になる。
初年度契約目標は1500台。サービス開始当初は、いすゞの大型車ラインアップであるGIGAシリーズ(長期排ガス規制対応機種以降の25トンから16トンサイズの車両)のみの対応で、中小型ラインアップにも数年後には対応する予定だ。
大手トラックメーカーであるいすゞ自動車は、ハードの供給だけでなくソフト面からも、排気ガスや事故などのトラック輸送に起因する問題を解決し、トラック輸送に付加価値を与えるために、以前から車両管理システムを開発してきた歴史がある。車両制御データを利用した運行診断システム「みまもりくん」もスタンドアローン形式のものはすでにサービスを提供している。
今回、KDDIが提供するパケット通信と組み合わせることで、オンラインによるリアルタイム監視が可能になったわけだが、システムの開発は、いすゞがサービス全般の企画運営、車載端末の開発、車両データ分析プログラムの開発はいすゞが、パケット通信網とネットワークセンターはKDDIと、それぞれが得意とする分野を受け持つことで進められた。
すでにテレマティクスシステムがいくつか登場しているが、これまでは乗用車とターゲットとしたものがほとんど。それらのシステムで扱われるのはDVDやMP3再生といったエンターテイメント的機能と、「目的地情報」「緊急連絡情報」「気象・交通状況などの環境情報」などの、GPSやパケット通信でアクセスするインターネットから入手できる外部情報を組み合わせて利用するサービスが主なものであった。
今回いすゞが発表した商用テレマティクスシステムは、これらの情報に加えて、アクセルやギア段、ブレーキングといった車両制御データも車載したセンサーから入手して活用できるのが特徴。エンジン、サスペンション、トランスミッションなどの各制御用ECUから入手できるデータは、各車両メーカーごとにフォーマットやプロトコルが異なり、その情報も公開されていないため、IT関連メーカーが独自で開発するテレマティクスシステムで利用することは非常に難しかった。
一部、車両メーカーが開発するテレマティクス(例えばトヨタのG-BOOKなど)でも、車載センサーから取得した制御データを利用する試みが進められているが、その本格的実用化にはもう少し時間がかかる見通しだ。みまもりくんオンラインサービスでは、車両制御データをユーザーやいすゞのメンテナンスセンターとリンクすることで、アクシデント発生前のメンテナンス喚起や、効率のよい運転操作の指導、事故発生警告などのサービスを可能にしている。
車両制御データを扱えるようになったみまもりくんオンラインサービスでは、「運行時間分析レポートサービス」「車両位置お知らせサービス」「事故多発地点警報サービス」(これは、あらかじめ登録しておいた事故多発ゾーンにトラックが接近すると、車載システムのパネルが警報を発して運転者に注意を促すもの)といった、位置情報を利用する従来タイプのサービスに加えて、急激な減速をECUが感知したときに登録したアドレスに警告メールを送信する「事故かも?警報サービス」や、ECUからの情報を解析してトラックの特性に最適な省燃費運転方法を提案する「省燃費運転レポートサービス」などが用意されている。
システムの構成は中枢となる「みまもりユニット」とKDDIの「通信端末」。システムの通信機能が「通信端末」として組み込まれるため、みまもりくんオンラインサービスのユーザーはシステム契約時(実質的にはシステムを搭載した車両の車体契約時)に、auのパケット通信サービスも契約し、基本使用料と通信料を別に支払うようになる。
みまもりくんオンラインサービスで利用できるパケット通信はcdmaOneの通信速度14.4Kbps。料金プランはPacketOneの月額基本料金900円の1パケットあたり0.1円となる標準プランのみで、定額制のプランや下り64Kbpsの高速オプションは利用できない。
いすゞでは、このシステムを車両から排出されるNOx量を把握して環境改善につながる運転方法の指導や、車両パーツのメンテナンスコストと新規車両導入コストを比較したコンサルティングツールなどへの展開も考えている。
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