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» 2004年05月27日 14時07分 UPDATE

PC業界に迫る「買い替えサイクル依存」見直しの時

Y2K対策以来の大規模なPC買い替えサイクルが訪れている。しかし市場の飽和でこのサイクルは長引いており、新たな施策が必要になると懸念する声も広まりつつある。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 OSの旧式化によって、2000年問題以来となる大規模な買い替えサイクルがPC業界に訪れている。しかし長期的に見ると、この業界の継続成長のモデル自体がほとんど時代遅れになっているとアナリストは指摘している。

 Gartnerの最新の予測によると、2004年の世界のPC出荷台数は、前年比13.6%増の1億8640万台になる見通し(5月21日の記事参照)。そのうち半分以上(約1億台)はPCの買い替えによるもので、来年には買い替えによる購入は1億2000万台に上るとGartnerは予測している。今年と来年の分を合わせた買い替えによる出荷分は、2000年問題の影響を受ける恐れのあるシステムを、企業がこぞって廃棄した1998年と1999年の記録的な台数を上回る見通しという。

 Gartnerによれば、この楽観的な予測は年初来の出荷台数に基づいている。Gartnerのクライアントプラットフォーム調査部門の主席アナリスト、ジョージ・シッフラー氏は、買い替えに踏み切る主な動機は、さらに高性能なPCが必要であったり、新機能を求めるといったものではなく、Microsoftの旧版OSの技術サポート終了によるものだと指摘する。「今では、導入済みPCの30%以上が3年以上前のものだ。こうしたPCは、ほとんどではないにしても多くが、既にサポートが終了しているか終了間近の旧版Windowsを搭載している」と同氏。

 これまでPC業界は、企業の3〜4年ごとのPC買い換えに依存してきた。企業によるPC購入台数は毎年、全体の3分の2を占める。市場が飽和状態になっており、また皮肉なことに企業が現在のPCに満足しているため、現在このサイクルは狂っているとアナリストらは説明している。

Longhornとマジノ線

 技術サポートの期限切れを除外すれば、古いPCを買い換える理由はほとんどないとGartnerは指摘する。シッフラー氏は、Windows XPの後継版「Longhorn」がメインストリームになる2008年まで、次の買い替えサイクルは起こらないだろうと主張する。Microsoftがそれまでの間にリリースすると発表した製品は、セキュリティとパッチ管理の改良が中心のXP Service Pack 2だけで、あとは“リフレッシュ”版XP「Windows XP Reloaded」が検討されているくらいだ。RedMonkのアナリスト、ジェームズ・ガバナー氏は「本当に胸躍る次のアーキテクチャは、Longhornだ」と話す。

 しかし企業に関して言うと、Longhornは製品というよりも、むしろMicrosoftの技術プランを言い表した言葉だ。「企業にとって、Longhorn関連の計画は時期尚早だ。しばらくは企業にとってLonghorn導入は現実的な話ではないだろう。どうせ誰もOSの最初のリリースは採用しないのだ」とガバナー氏。

 現在Microsoftが最優先事項に挙げているセキュリティの新機能は、買い替えを促す効果があるかもしれないが、Longhornなどの新システムで本当に安全性が改善されているということを買い手に納得させることが問題となるだろう。「どのように宣伝されようと、新たな環境が既存の環境よりも安全だという保証はない。セキュリティで問題になるのは一番弱いところだ。マジノ線の前面がどんなに堅固でも、戦車はその周囲を通過できるのだ」とIDCのアナリスト、ロジャー・ケイ氏。

 最近開かれたハードウェアカンファレンスWinHECで、Microsoftは64ビットコンピューティングが間もなくデスクトップで現実的なものになり、買い替えサイクルを変えるかもしれないと一部の人たちを説得したと業界観測筋は話している(5月6日の記事参照)。しかしアナリストによると、本当に問題なのは企業が定期的な買い替えサイクルに縛られることを良しとしていないことだ。つまりPC業界は、成長を持続する新たな方法を見出さなくてはならなくなる。

 例えばMicrosoftは、伝統的なモデルから、物議を醸しているサブスクリプション制のSoftware Assuranceなどの構想に移行している。「Microsoftは、旧来の買い替えサイクルから離れて、製品全体を相互に関連する総体として売り込む方向にシフトしている。同社はサーバ製品やサブスクリプション製品の方を推進している」とIDCのグループコンサルタント、クリス・イングル氏。

ミドルウェアを武器にするIBM

 IBMはミドルウェアを強調することで、この流れを変えようとしている。ユーザーはミドルウェアによって、PCでもモバイル機器でも同じデータへアクセスできるようになる。この動きは図らずも、これまでのデスクトップソフトにおけるMicrosoftの牙城を脅かすことになるかもしれない。Red Hatも、また別の見方でデスクトップに取り組み、新しいデスクトップ用Linuxソフトを企業向けサービスとしてのみ提供している。

 「今のPC市場は成熟している。企業はほかのところに目を向けようとしている」とシッフラー氏。Gartnerは、長期的に見ると、この業界の成長率は過去に打ち立ててきた2けた台を大幅に下回り、1けた台の後半で堅調に推移するだろうと見ている。

 Gartnerは、PC事業は今後もあまり変わりないように見えるだろうが、買い替えサイクルが(おそらく3年から4年へ)長期化することで、新市場の獲得で手に入れた勢いが薄れることになるとしている。結果として(PC関連)企業は、ビジネスモデルを抜本的に改革し、効率的なサプライチェーンやインストールベースの維持に力点を置く必要に迫られているとシッフラー氏は言う。「各社はまだ、現在の状況に適応している段階だ」

 Red HatなどのLinuxベンダーは、現在の買い替えブームによって浮上したチャンスを活かしたい考えだ。同社の社長兼CEO(最高経営責任者)、マシュー・ズーリック氏は、最近Techworldの取材に対し、「現在、大規模なハードの買い替えサイクルが進行している。これは大きなチャンスだ」と話している。

 しかし、Microsoft顧客をLinuxデスクトップに乗り換えさせることは、石から血を絞り出すかのごときものだとシッフラー氏は語る。「Linuxは特定の市場には合っているかもしれないが、一般的なものではない」と同氏は述べ、Microsoftの豊富なアプリケーション群との競合などが障壁になると指摘する。

 顧客はWindowsに対するLinuxのコストメリットを検討しているふりをするかもしれないが、これは大抵、Microsoftからもっと有利な取引を引き出すためのものだとシッフラー氏は主張する。「顧客は明らかにMicrosoftの価格付けに不満を持っている。しかし、Linuxがその答えになるという確信は私にはない」と同氏。

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