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ミュンヘンのLinux移行計画、ソフト特許への懸念で中断

» 2004年08月05日 07時56分 公開
[IDG Japan]
IDG

 独ミュンヘン市が、ソフトウェア特許をめぐる懸念を受けてLinuxへの移行計画を中断した。

 同市CIOのワイヘルム・ホーグナー氏によれば、7月に予定していたLinux移行プロジェクト「LiMux Project」の競争入札は中止になった。同氏は8月3日夕、LiMux Projectのメーリングリストでこの発表を行っている。

 同市の決定は、オープンソースプロジェクトを阻止する目的でソフトウェア特許が利用される可能性があるとの懸念が欧州と米国で高まっていることを示すものだ。オープンソースプロジェクトは知的財産のライセンス料がかからないことを前提としており、知的財産権訴訟を起こされた場合にそれをかわせるだけの資金も、武器となる特許も持っていないのが普通だ。

 欧州特許条約に基づきEUでは現在、ソフトウェア特許は認められていない。しかし現在EUで審議されている法令によって、この状況は激変する可能性があるとの見方が優勢だ。ソフトウェア特許法令は、米国式のソフトウェア特許に道を開くものだと言われている。

 緑の党の関係者が7月30日、この状況を指摘する申し立てを行い、EUのソフトウェア特許法令がミュンヘン市のLinuxプロジェクトに与える影響を分析するようミュンヘン市長に訴えた。

 この訴えによれば、市が提案したLinuxクライアントソフトはざっと分析しただけでも、50を超す欧州のソフト特許に触れることが分かったという。この分析は、欧州でソフトウェア特許に反対する運動を展開しているFoundation for a Free Information Infrastructure (FFII)が行った。

 こうした特許を保有する会社がミュンヘン市当局に対して停止命令を申し立てる可能性があり、市のコンピュータシステムが事実上停止に追い込まれるか、ライセンス料の支払いを命じられる可能性もあると訴えでは指摘。同市はこれに応え、法的・経済的リスクを完全に分析し終えるまで、Linuxプロジェクトを中断すると表明した。

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