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Intel、来週のIDFでデュアルコアCPUをデモ

» 2004年09月02日 19時20分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Intelは製品の遅れやロードマップの変更に悩まされた混乱の一年を忘れようとしており、来週サンフランシスコで開催のIntel Developer Forum(IDF)では、マルチコアの未来に期待をかけることだろう。

 同社は2005年中にマルチコアプロセッサを投入する計画について、さらなる情報を提供すると見られている。マルチコアプロセッサでは、1つのシリコンチップに複数の処理エンジンを搭載する。

 半導体業界は発熱問題を受けて、クロックスピードの向上によらない新しい性能改善の方法の模索を余儀なくされている。そうした背景から、ほかの半導体メーカーは既に、デュアルコアCPUを投入しているか、投入計画を発表している。8月31日にはAMDが、2005年半ばに投入予定のデュアルコアOpteronプロセッサのデモを行った(8月31日の記事参照)

 Intelは5月にPentium 4の後継版「Tejas」とXeon DPの後継版「Jayhawk」の開発計画を中止したが、それに代わる技術の詳細を明かしていない。同社は開発中止の理由についてはコメントせず、マルチコアプロセッサを予想よりも早く投入できることが分かったとだけ話していた。

 アナリストは、90ナノメートル(nm)製造プロセス導入に伴って発熱問題が発生したことを受け、Pentium 4とXeonに採用されているNetBurstアーキテクチャは、性能を向上させるのにクロックスピードに頼りすぎていると考えた。

 Prescottコアをベースにした最新Pentium 4は、最大で115ワットの電力を消費する。これだけ大きな電力を、さらに回路幅が小さく、電流リークが起きやすいプロセッサに流すことはできないとアナリストは考えている。

 デュアルコアあるいはマルチコアプロセッサなら、半導体メーカーは、個々のコアのクロックスピードを比較的低くしても性能を向上させられる。Intelはハイパースレッディングでマルチコア化に向けた下地を作っている。ハイパースレッディングとは、PCまたはサーバのOSに対して、シングルコアプロセッサをデュアルコアプロセッサのように見せかける技術。

 Intelが将来版プロセッサの詳細な設計情報、あるいはコードネームすら明らかにするかどうかはまだ分からない。同社のコーポレートテクノロジー部門副社長フランク・スピンドラー氏は、IDFのプレビュー会見の際にマルチコア計画の詳しい説明は避けたが、来週はもっと詳しい情報を提供すると約束した。

 同社は基調講演でデュアルコアプロセッサのデモを行う計画だとスピンドラー氏は話した。ただし、どのようなタイプのシステムを披露するかについては明かさなかった。

 Microprocessor Reportのケビン・クレウェル編集長は「Intelはデュアルコアについて話さなくてはならない。それがIDFにおけるメインの議題だ」と語る。Intelベースの製品を構築する来場者は、来年自社の製品に載るであろうデュアルコアプロセッサについて、もっと詳しいことを聞きたがっていると同氏。

 とは言え、同社が実際にデュアルコア技術についてどれだけ明らかにするかは疑問だとInsight 64の主席アナリスト、ネイサン・ブルックウッド氏は言う。デュアルコア製品が登場するまで1年あまりあるため、Intelは今回のIDFではさわりだけ話して、もっと詳しい話は来年2月のIDFまで取っておくかもしれないと同氏は指摘する。

 既に複数の情報筋が、初のデュアルコアPentium 4とXeonは引き続きNetBurstアーキテクチャを採用すると示唆している。その後、Intelはもっと消費電力を抑えた、Baniasベースのアーキテクチャに移行すると見られている。BaniasはノートPC向けのPentium Mプロセッサの基盤となっているアーキテクチャだ。

 企業向けサーバに関しては、Intelは既にデュアルコアItanium 2「Montecito」とデュアルコアXeon MP「Tulsa」の計画を発表している。いずれも2005年にリリースが予定されている。

 このほか来場者が気にかけている大きな話題としては、今年Intelを悩ませた一連の製品リリースの遅れや製造上の問題がある。先に発売したチップセットに欠陥が生じたほか、デジタルTV用のLCOSチップ4GHz版Pentium 4の投入が延期となった。こうした問題を受け、CEO(最高経営責任者)のクレイグ・バレット氏は7月に、社員に苦言を呈するメールを送った(7月28日の記事参照)

 IDFの来場者の多くはIntelのリリーススケジュールをベースに製品計画を立てており、Intelのスケジュールに遅れが生じたら、それが業界全体に波及効果を及ぼす可能性もあるとEnvisioneering Groupの調査ディレクター、リチャード・ドハティ氏は指摘する。

 IDFの特徴である派手なビデオやデモの中で、今年Intelを見舞った問題が再び起きることはないと来場者を安心させる必要があると同氏。「彼らの主な心配事は『(デモが)素晴らしくて目がくらむ。でも、この通りに行かなければ、私は来年のIDFに派遣されないかもしれない』ということだ」

 IDFは9月7日、Intelの社長兼COO(最高執行責任者)ポール・オッテリーニ氏の基調講演で幕を開ける。同氏はマルチコア技術がどのようにデジタルホームと企業を向上させるか、そして無線ブロードバンド規格WiMAXへの投資について語る予定だ。

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