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AMDの革命的な半導体製造技術の粋“APM”とは?(2/2 ページ)

» 2004年12月10日 23時10分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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――昨年、AMDはAPMの新しいバージョンについて話をした。新バージョンが導入予定のFab36やプロセッサ以外の分野ではどうか。

 「APMはウエハーサイズとともに進化してきました。1980年代終わりから1995年にかけての150ミリウエハーではAPM 1.5、95年以降の200ミリウエハーではAPM 2.0です。Fab30のほか、オースチンのFab25、そして会津若松のSpansion(AMDと富士通合弁のフラッシュメモリ製造合弁企業)の工場でも導入しています」

――1995年と言えばFab25が立ち上がった時期と重なる。しかしFab25の立ち上げは当初よりも遅れ、さらに創業当初は歩留まりがなかなか向上せず悩んだ。K5ファミリのパフォーマンスは上がらず、K6では市場に受け入れられつつも歩留まり低下から思ったような出荷ができず、クロック周波数競争でも遅れを取るなどAMDの最悪期だったと言っていい。製造部門の不調はビジネスチャンスとテクノロジ企業としての評価を失うことにもつながった。その後、Fab30が立ち上がってからの改善は目覚ましかったが、新世代のAPMを導入したFab25を擁したAMDが、なぜそのような迷路に入ってしまったのか?

 「APMは製造装置やラインの構成に強く依存するため、ウエハーサイズの変更と同時に新しいアイディアが詰め込まれ、革新的に進歩します。Fab25では新しいAPMが導入されただけでなく、他にも新しい最適化されていない技術が多数・同時に導入されました。“やってはいけないこと”を多数導入してしまったこともあり、歩留まり向上が滞りました。しかし、“やってはいけないこと”も出尽くし、それらを繰り返さないよう新規Fabやプロセスの開発時に予防対策を施すようになり、Fab30では成功しています」

 「またAPMは導入後も、ソフトウェアや装置の改良などで少しづつ進化していきます。現在のAPM 2.0は熟成し、すでにやるべき事はやり尽くした感がありますね」

――300ミリウエハーを導入するFab 36ではどのような取り組みを行っているのか?

 「2005年から稼働する300ミリウエハーにおいてAPM 3.0が稼働します。APM 1.5の時代、内部開発したソフトウェアは30%しかありませんでしたが、APM 3.0では70%を内製として製造ライン全域の製造管理を実現します。すべての装置が単一のバックプレーンでまとめられ、1カ所で制御可能なように接続されているため、新しい技術の導入はさらにスピードアップできるでしょう。APMは」

 「もともとAPMは、インテルよりも規模が小さいAMDでも、インテル並に早い時期に新しい技術を導入したり、新設計の半導体チップを素早く立ち上げられるようにできないかと考え、ひねり出したアイディアです。我々はインテルのように最新装置を次々に導入するような事はできません。そこでソフトウェア開発によって、その差をカバーできないかと考えたわけです。それが現在では、企業力を高める革命的な技術にまで成長しました。今ではAPMによって、インテルとも対等に渡り合えると言えるレベルに達しています」

――インテルはさまざまな場所に製造工場を分散して建設しているが、AMDは1カ所に集中している。中でもドレスデンへの投資集中は顕著で“メガFab”化している。これは戦略的なものなのか?

 「AMDは歴史的に、1カ所で集中的に堅牢性の高い技術開発を行ってきています。会津若松の工場も既に3つになっていますし、オースチンでも継続的な投資が行われています。これは従業員、技術者のスキルを重視しているからです。AMDのメソッドは他の半導体製造企業とはやや異なる特殊性があり、そのAMDメソッドが根付いている場所で継続していく事に意味があります。良い技術だけで成功できるのではなく、良い技術と良い人材があってはじめて成功すると考えるからこそ投資が同じ場所に集中するのです」

――AMDの90ナノメートルプロセスはリーク電流が少ないとの評判だが、プロセスの微細化とともに顕在化してくる消費電力の問題に、AMDはどのように取り組んでいくのか?

 「我々は130ナノメートルプロセスでSOIを一足先に導入しました。そこで徹底して製造プロセス側からの低消費電力化アプローチをほどこしました。そのため、90ナノメートルプロセスでも、電力消費に関してある程度の余裕を持つことができたのです。また低誘電率素材による層間絶縁皮膜(low-k)に関しても、やはり2003年中に導入して経験を積んでいました。今後は45ナノメートルで高誘電率素材のゲート間絶縁皮膜(High-k)を導入する予定です」

――SOIの発展と新絶縁皮膜の両立は難しい問題だが、AMDは今後どのようなアプローチで進んでいくのか?

 「静的な電力消費、動的な電力消費、その両方を下げるハイブリッドのアプローチです。我々は既に、消費電力を上げずにパフォーマンスを上げていく技術を見つけています。SOIの改良もその1つですが、ほかにもさまざまな有望な技術があり、それらを複合的に活用していきます。サンフランシスコで開催されるInternational Electron Devices Meeting (IEDM)の席上で、我々の省電力化テクニックに関して発表する予定です」

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