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2004年を彩ったIT業界10大トピック(2/2 ページ)

» 2004年12月29日 13時25分 公開
[IDG Japan]
IDG
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EU、Microsoftに独禁法違反の裁定

 欧州連合(EU)がMicrosoftに対して下した独禁法違反の裁定は、ソフトウェアの巨人であっても法的トラブルの脱出口をすべて金で買えはしないということを知らしめた。Microsoftは幾つかの州、企業、組織に金を払うことで、独禁法絡みの各種の訴訟や申し立てを和解に導いているが、EUは2004年3月、Microsoftに対し、4億9720万ユーロ(6億1300万ドル)の罰金の支払いと、Windows Media PlayerをバンドルしないWindowsの提供を求めた。米国における独禁法訴訟和解のときよりはるかに厳しいこの裁定に対してMicrosoftは控訴した。この訴訟はまだ何年も続くだろうが、Media Playerを永久に個別製品として提供するよう強いられた場合、Microsoftはビジネスモデルの変更を余儀なくされるかもしれない。

Intelの悲惨な1年

 かつて、スマートな経営戦略の遂行と業界随一のイノベーションを誇ったIntelが、次のような一連の出来事を経て、2004年を終えようとしている。デスクトップとサーバ用プロセッサのロードマップ大幅改訂、家電・通信製品の売り上げ見通し下方修正製造面での幾つかの失態、同社に対する敬意の減少、そして株価の下落だ。裏返せば、Intelの強力な市場支配にAMDが侵食してきたともいえそうだ。Intelは、ライバルAMDが同種の製品で初期の需要喚起に成功していることへの対策として、2004年2月、当初の主張を翻す形でのローエンドサーバ用64ビットプロセッサ投入を余儀なくされた。強いて言うならこれは、競争が実際に技術を進歩させるのだということを証明した例かもしれない。

Googleをめぐる熱狂

 8月のGoogleのIPOは、2004年、最も話題に上ったビジネスニュースの一つ。ほろ苦いドットコム時代の記憶と、慎重さを保ちつつも楽観的な景気観測を呼び覚ますかのような出来事だった。インターネット検索サービス大手のGoogleへの関心の高さは、投資家が市場への資金注入を増やし始めるサインなのか? その答えはまだ出ていないが、IPO直後のGoogle株の伸びは大きく、同社はその後、良好な業績を報告している。また、同社の1GバイトメールサービスGmailは、多くの類似サービスを生んだ。一方、失態も幾つかあった。例えば、10月の決算報告による混乱。予測を下回ったのか上回ったのか(実際には上回っていた)アナリストを悩ませた。GoogleのIPOは、ドッコムブーム再来の前触れとはいえないかもしれないが、技術と市場のポジショニングが正しければ、今の時代でも投資家を魅了できるということを示している。

特許をめぐる懸念

 EUの特許法案採決をめぐる騒動は、知的財産の所有権をめぐる懸念と混乱を露呈した。この法案は、欧州委員会の当初案ではソフト特許を許可する内容だったが、欧州議会によるその後のバージョンでは、ソフト特許を認めない方向に修正がかけられている。そして年の瀬も押し迫り、別の立法機関である欧州閣僚理事会での採択の延期が明白となった。政治圧力によって、どちらのバージョンを採択すべきかのコンセンサスが打ち砕かれた結果とみられている。概していえば、大企業は特許支持派であり、特許問題にあまりリソースを割けないオープンソース陣営や小規模企業は特許反対の立場を取っている。だがこの問題に関しては、米国の大企業も不安感を抱いている。例えば、米大手企業でつくるある団体は法的な問題を割ける目的で、破産したソフト企業Commerce Oneの資産の競売に際し、Webサービス特許を共同で買い取ることを真剣に検討しているという話もあった。

SCO訴訟は自滅、Linuxは爆発的成長

 2003年にSCO GroupがIBMに対して起こした訴訟は、多くのユーザーに、知的財産をめぐるSCOの主張によってLinuxの成長が妨げられるのではないかとの不安を与えた。SCOは、IBMがソースコードをLinuxに不正流用したと主張している。2004年に入り、SCOは訴訟の範囲を広げてNovellのほか、AutozoneやDaimlerChryslerといったユーザー企業の提訴にも踏み切った。現状、対IBM訴訟でSCOが勝訴する可能性もまだ消えてはいないものの、SCOが成功する可能性は薄れたように見える。DaimlerChryslerに対する訴追内容は、その大部分が判事によって退けられ、また対IBM訴訟でも、SCOはゲーム終盤での戦略転換ともいえる動きを見せ、申し立てを著作権侵害に変更した。さらに、SCOはLinux向けの知的財産ライセンス契約に、多数の顧客を集めることができずにいる。対IBM訴訟の公判開始は2005年末になる見通しだが、この訴訟がLinuxの成長を鈍らせる要因となっているようには見えない。IDCは、世界のサーバ出荷台数に占めるLinuxの割合は2003年の15.6%から、2008年には25.7%に拡大すると予想している

COMDEX中止――パーティーは終わった

 バスの長い行列、おしゃべりなタクシー運転手、巨大な展示ホール、若き億万長者のロックスター的輝きに満ちたパーティー――こうしたすべてはこれからも各種の展示会を彩り続けるかもしれないが、2004年開催中止となったCOMDEXではもうない。2001年、同時多発テロとドットコムバブル崩壊の影響で来場者が4割減となったCOMDEXだが、その後も来場者数が回復することはなかった。1980年代にComputer Dealers Expositionとして誕生したこの展示会、おそらくは1990年代半ばから後半が絶頂期だったが、ドットコム時代の到来とともにあぶく銭で活気づいた新産業に押し流された。何にも増して、COMDEXの消滅は、PC革命で始まり、インターネットの爆発的成長で頂点を極めた一時代の終わりを象徴している。この先は多分、合理的な再生に向けた道が開けていくのだろう。

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