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P2Pやスパイウェア対策――米IT関連法案、制定のめどは?(1/2 ページ)

» 2005年01月18日 18時57分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米連邦議会には昨年、実に多くのIT関連法案が持ち込まれた。スパイウェアやデジタル著作権など、あと一息というところまでいった法案もある。しかし、提出された多くの法案のうち、一部は上院または下院を通過したものの、法制化までこぎ着けたものはほとんどない。一方で、米連邦通信委員会(FCC)、米連邦最高裁、そして米司法省はフル回転だった。

 以下、米IT関連法案をめぐる昨今の主な話題の中から6つを選んで解説する。ここに挙げるトピックは、その多くが今年も審議の対象となる見通しだ。2005年中に法制化までこぎ着けるテーマが幾つあるかの予測も示す。

インターネット税とIP電話

 ブッシュ大統領は2004年12月、インターネット課税禁止措置を3年間延長する法案に署名した。これによりブロードバンドおよびダイヤルアップ接続サービスは引き続き課税を免れることとなった(例外として一部の地域は、最長で4年間、課税を認められる。これは、課税禁止措置の施行前から課税を認める法律がその地域に存在していたため)。

 IP電話サービスへの課税と規制をめぐる論議は今後も続く。FCCは一貫して、新規台頭産業であるIP電話サービスには規制をかけるべきでないと主張、同サービスを州政府による規制の対象外としている。しかし、こうした優遇措置が、従来の電話会社との比較でIP電話サービス会社に強みを与え過ぎているとの意見もある。

 もっとも、ネット課税禁止措置の延長は、電子商取引の売上税に影響を与えるものではない。オンライン購入に売上税がかかるかどうかは、商品を購入した店が購入者の住む州にあるかどうか、その購入店が各州政府の要請を受けて自主的に売上税を徴収しているかどうかによる。州政府は、何十億ドルもの税収をふいにしたとして、多くのオンライン小売業者に売上税を納めるよう何年も前から圧力をかけている。小売業者による売上税の徴収代行を簡略化すべく、多くの州が売上税法の簡素化に取り組んでいるが、米連邦法上は今のところ、こうした売上税を乗せるのは小売業者の義務ではない。オンライン売り上げが前年比2けた増の成長を見せていることから、業者と個人に対する州政府からの売上税納入の圧力は今後も増すものと予想される。

デジタル著作権

 デジタル著作権絡みの法案の数々についてはこれまでも論じているが、著作権侵害の処罰を重くし、起訴しやすくするための法案(H.R. 4077)、米司法省が著作権侵害者に対し民事訴訟を起こすことを認める法案(S. 2237)、著作権侵害を意図的に誘発する行為を犯罪と見なす内容の、P2Pソフトベンダーを対象にしたと思われる法案(S. 2560)などが提議された。一方、デジタルメディアを公正に使用する権利を明確にし、保護するために出された法案は、H.R. 107のみとなっている。これらのうち幾つかは下院もしくは上院を通過したが、いずれも法制化には至っていない。

 今年、これらの法案の多くが、そのままの形か類似法案の形で、再び提議されることになるだろう。デジタルメディアの使用に対してのしかかってくる制限は、今後さらに増えると予想される。2005年の7月から、DVDレコーダー、テレビ、デジタルビデオレコーダーなどの新製品は、コンテンツ制御フラグをサポートしなければならなくなる。このフラグはデジタル放送と一緒に送られ、フラグ付きの番組が録画可能かどうか、また何回まで録画できるかといった情報を、対応している機器に伝達する。

 法制化審議の一方で、米司法省は2004年、Operation Fastlinkと銘打って、海外の法執行機関と手を組み、ソフトウェア、映画、音楽、ゲームの著作権を侵害したとされる大規模海賊組織を多数摘発した。これまでに、1つの組織の有罪が確定している。また米連邦議会は2004年後半、ある支出法案を可決する際、海賊業者摘発を調整・監督する“著作権の帝王”とも呼ぶべき政府高官職の新設を承認した。

 米連邦最高裁も介入している。P2P企業のGrokster、StreamCast Networks、MusicCityのソフトやネットワークを使ってユーザーが犯した著作権侵害について、これら企業に法的責任はないとする第9巡回区控訴裁の判決をめぐって、最高裁が審理に当たることに同意した。

 米映画協会と全米レコード協会はP2Pソフトのベンダーとユーザーを相手に提訴を続けており、最近では被告にBitTorrentの名も上がっている。

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