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» 2005年03月02日 10時07分 UPDATE

日立、大幅に低価格化・小型化したPC用水冷技術をIDFで公開

日立製作所は「Intel Developer Forum Spring 2005」において、2003年に初公開したPC用水冷技術の次世代バージョンを披露する。

[本田雅一,ITmedia]

 日立製作所は、サンフランシスコで3月1日から開催の「Intel Developers Forum Spring 2005」で、大幅に小型化・低コスト化を果たした新型のPC向け水冷モジュールを公開する。

 PC向けの水冷モジュールと言えば、自作ユーザー向けのキットを思い出す読者も多いだろうが、それらと異なるのは自作などでユーザーが組み上げることを想定せず、PCベンダーがシステムに合わせて組み込むことを前提としていることだ。

 日立が供与した技術が台湾企業を通じ、NEC製水冷PCに使われていることはよく知られている。信頼性の高さや静かさでは評価が高く、特に信頼性の高さは同様の技術がNEC製PCサーバにも採用されている事からも分かる。

 しかしNECが採用している台湾・福華電子の従来型水冷モジュールにも、いくつかの問題があった。今回公開されたものは、それらの問題を解決したものだ。

大幅なコストと体積の削減を実現

 第1の問題はコスト。昨年、福華電子への取材では水冷モジュールの単価は90ドル程度とのことだったが、実際には70ドル以下で工場出荷されているようだ。とはいえ、PC単価が下落している中、冷却モジュールの単価としてはまだまだ高い。

 新型水冷モジュールは、コスト高となる銅製パーツをアルミ素材で置き換え、さらに松下電器製の遠心ポンプをシナノケンシ製のピストン型ポンプに変更することで大幅なコストダウンを達成した。

 材質をアルミに変更すると腐食進行が速くなるなど信頼性の問題が出てくるというが、新型モジュールではその問題を解決し、従来と同じ5年以上の動作を保証(実際には8年程度は確実に動作するという)する。製造は福華電子ではなく、エアコン製造大手の台湾日立が担当する。

 またシナノケンシ製の小型ポンプは、単価が松下製よりも安い上、内部気泡の発生に強く気泡混入でポンプが機能しなくなる事がない。このため、旧型モジュールでは気泡がポンプへと向かわないよう、複雑なリザーバタンク構造を採らざるを得なかったが、新型モジュールではシンプルな構造のリザーバタンクでも済むようになった。

 これらの改良の結果、コストレベルでは従来の60%まで削減される。実際に出荷される場合の工場出荷額は明らかではないが、関係者によると「十分にPCベンダーが冷却モジュールとして採用できる程度」には収まるようだ。銅製の強制空冷ヒートシンクなどとは、かなり近いコストになるかもしれない。

 加えて高効率のアルミ製ラジエータを用いることで、冷却システム全体の小型化を達成している。ポンプが新型になったことで冷却液の流量も大幅に増加しているという。担当者はサイズなどを明らかにしていないが、デモ機上で再生されていた説明のアニメーションを見る限り、冷却ヘッドやヘッドへの配管を除くと、リザーバタンク、ラジエータ、ポンプ、送風ファンなどを合わせても5インチドライブベイ1個分の大きさのようだ。最大115ワットまでは、展示のシステムでも対応可能。

 ラジエータ、ポンプ流量とも性能面での余裕はあるため、2個の水冷ヘッドで2カ所を同時に冷却することもできる。

新型BTX用水冷モジュールを組み込んだ試作機 新型BTX用水冷モジュールを組み込んだ試作機。まだチューニング前ながらもかなり高い静粛性を見せていた

 新型モジュールを組み込んだPCは、BTXフォームファクタで製作されている。BTXは1個のファンでストレートにあらゆるパーツの熱を排出できる構造になっていることが特長で、従来よりも静かなPCを作りやすい。しかし水冷モジュールを採用することで、ファンの回転制御をさらに抑えることが可能になる。特に大きな負荷がかかったときの騒音で、大きな差が出るという。

 デモ機はまだ電源ファンやケース自身の送風ファンの回転数制御を細かく行っておらず、製品レベルでは従来の水冷モジュールよりも、さらに静かなPCを作ることが可能になる。

 モジュールの製品への採用に関しては「ノーコメント」との事だが、デモ機の体裁は完成度が非常に高い。そこから類推すれば、水冷モジュールの出荷が始まるという秋以降にはメーカー製PCへの搭載も可能性としてはありそうだ。ただし製造元が以前のモジュールとは異なるため、現在のOEM先であるNECが採用するかどうかはわからない。

マルチメディアノートPC向け水冷モジュールも

 以前、液晶パネル裏にラジエータを搭載した水冷ノートPCを発売して話題を呼んだ日立製作所。その後は追加モデルの発表がないが、デスクトップPC用プロセッサを搭載したいわゆる“デスクノート”や、高速GPUと高速プロセッサなどを内蔵させるマルチメディア機能満載のノートPC用にも水冷モジュールの試作を展示した。

ノートPC用水冷モジュールの試作機 ノートPC用水冷モジュールの試作機(撮影のためカバーは外している)

 ポンプが新しくなっているほか、ラジエータに空冷ファンが2個装備されたのが、従来型との違い。ただし空冷ファンは通常、ほとんど回ることがなく、連続した高負荷時に回るだけだという。水冷モジュールのみで100ワットまでの熱を放出できるため、キーボードやシャシー底面からの廃熱も含むと、かなりの高性能プロセッサやGPUにも耐えられそうだ。

MEMS技術を応用した熱拡散技術

 ただし、さらに先を考えると、単純に水とラジエータで放出するだけでは間に合わない。そこで開発しているのが、微細加工技術を用いた熱拡散板(ヒートスプレッダ)である。

微細な流路が内部に作られたマイクロチャネル方式のヒートスプレッダ 微細な流路が内部に作られたマイクロチャネル方式のヒートスプレッダ。機械加工で作った試作品のため1個50万円もするが、その効果は非常に大きい

 機械加工の限界と言われる0.1ミリの溝を複雑な形状で両面に彫った金属板を別の金属板1枚でサンドイッチし、そこに水を封入する。これに微細な振動を与えると、内部で水が流れ、熱が拡散する。

 先端の微細加工が必要なため、現在試作しているヒートスプレッダは1枚50万円ものコストがかかっているそうだが、将来的にはこれをMEMS技術で製造することで安価に製造が可能になる。この製作そのものは、さほど遠くない将来に可能になる模様だ。

 ただし、ヒートスプレッダに微細振動を与えるアクチュエータのコストがまだ高いため、現在、アクチュエータをMEMSで製造してヒートスプレッダに内蔵させる技術開発を行っているという。この技術はおよそ2〜3年のレンジで実用化されるもので、プロセッサダイの縮小とともに訪れる熱密度の問題を解決する事になるかもしれない。

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