日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)は4月5日、次世代HDDの高密度記録技術として、230Gビット/平方インチの面記録密度を達成した「垂直磁気記録技術」を開発したと発表した。同社では2005年後半に記録容量120Gバイト程度の2.5インチHDDを製品化の予定という。
HDDの垂直磁気記録技術は、1977年に岩崎俊一東北大学名誉教授が基本原理を提唱したもので、HDDメーカーそのほかの研究所で、以前から研究開発が行われてきた。製品レベルの実用化については、2004年12月には東芝が1.8インチHDDに搭載して2005年4〜6月期に商品化すると発表しており、今回のHGSTの発表はそれに次ぐものとなる。
現在のHDDの記録方式は「面内記録方式」というもので、プラッターと呼ぶ円盤表面の磁気記録層に、リング型記録ヘッドによって平行な方向で磁界をかけて情報(ビット)を記録する。これに対して垂直磁気記録方式では、単磁極型記録ヘッドを使い、磁気記録層に垂直な磁界をかけることで記録する仕組み。
これまで記録密度を高めるために、プラッターの磁気記録層を構成している微細磁性粒子を小さくするということが行われてきた。しかし、小さくすればするほど粒子内に蓄えることが可能な磁化エネルギーが小さくなり、HDD動作などによる熱エネルギーが加わることで磁化の方向が乱れる「熱揺らぎ」という現象が発生してしまう。また面内記録方式では原理的に記録媒体上に一種の磁石として記録されたビットのS極とN極が“S-N N-S S-N N-S”といったように反発する向きに並ぶため、高密度になって微細になればなるほど不安定になってしまう。
現在の面内記録方式HDDの記録密度はおよそ100Gビット/平方インチになっているが、120Gビット/平方インチを超えると書き込んだ情報を正しく読み取ることが難しくなり、実用的な限界に達すると考えているという。
これに対して垂直磁気記録方式では、磁気記録層に垂直方向に磁化させるため、S極とN極が互い違いに並ぶ形となり、記録した情報が保持されやすい。
HGSTでは今回、記録媒体磁性層改良や、プラッター表面の平滑性改良、磁気ヘッド開発などにより230Gビット/平方インチの記録密度を得たが、この密度は現在発表されているものとしては最高の値となっている。
発表会で説明したHGSTのワールドワイド アドバンスト テクノロジ ラボラトリ、シニアダイレクタの高野公史氏によると、昨年から88Gビット/平方インチの記録密度の2.5インチHDD(容量100Gバイト)を試験的に製造して、ノートPCに組み込んで使用するなどのフィールドテストを世界各地で行っている。このフィールドテストの結果を踏まえて、2005年後半に100Gバイト/平方インチ程度の記録密度を持つ2.5インチHDD(容量120Gバイト程度)を製品化する予定という。
2.5インチHDDの後は、3.5インチHDDやマイクロドライブ(1.0インチHDD)、1.8インチHDDにも順次垂直磁気記録方式を導入していく予定。2007年までには記録密度で230Gビット/平方インチの製品を投入する予定で、3.5インチHDDで約1Tバイト、1.0インチHDDで約20Gバイトになるという。高野氏によると、実証データでは230Gビット/平方インチどまりだが、今回発表した技術のままでもおよそ300Gビット/平方インチは達成可能としており、さらに研究開発が進めば現在の面内磁気記録方式の10倍にあたる、1Tビット/平方インチも可能としている。
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