【特別目的会社(Special Purpose Company:SPC)】 ここでは、アニメや映画などを製作する資金を調達し、ライセンスを一元管理するために設立される株式会社や有限会社のことをいう。「資産流動化に関する法律」(SPC法)上のSPCとは異なる。
アニメ作品や映画などでおなじみの「製作委員会」。資金力のない製作会社が資金を調達し、作品を世に問う手段として比較的古くから採用されてきた。
参加するのは原作の版権を持つ出版社、放送するテレビ局、プロモーションを引き受ける広告代理店など、コンテンツに本業として関連した企業がほとんど。製作資金を負担しつつ、プロモーションや商品化といった役割を分担する形で参加するため、共同事業体的な側面が強い。
作品の著作権は各社が出資比率に応じて共同で保有し、キャラクター商品化権や興業権などの「窓口権」は参加した玩具会社や映画配給会社がほぼ独占できるなど、得られる権利は強力だ。
しかしその分、当初に定めた目的外で作品を利用する際には各社の同意が必要など、新規分野への迅速な展開が難しいというデメリットもある。例えばインターネット普及以前の作品をブロードバンド配信しようとしても、1社が反対したらとん挫することになり、チャンスを逃しかねない。
また製作委員会は民法上の任意組合であり、組合員は無限責任を負う。資金に対する情報開示が不十分との指摘もあり、投資に対し金銭による配当のみを求める機関投資家などは参加しにくい。
・製作委員会方式とSPCの比較
- | 製作委員会 | SPC |
---|---|---|
投資契約 | 任意組合 | 匿名組合 |
著作権の帰属 | 組合員の共有 | SPC |
投資家の責任 | 無限 | 有限 |
窓口権 | 個々の組合員 | SPC |
資金の流れの透明性 | 低い | 高い |
金融機関からの直接融資 | 否 | 可 |
組成コスト | 安い | 高い |
JDC「コンテンツビジネスの資金調達スキーム」(九天社)から抜粋
コンテンツ関連業界以外に資金調達先を広げるために考え出されたのがSPCを使ったスキームだ。
この場合のSPCは、特定のコンテンツの管理のために設立される法人。維持が容易な有限会社が選ばれることが多い。
SPCは投資家から一括して資金を集め、著作権も集中管理する点で製作委員会方式と異なる。商品化権などはSPCの判断でメーカーなどに許諾する形を取るため、新事業にも柔軟に対応できる点が特徴だ。
投資家はSPCと匿名組合契約を結んで投資を行い、コンテンツが生んだ収益から配当を受け取る形になる。出資額の範囲内でのみ責任を負う有限責任となる上、資金はすべてSPCを経由させることで資金の流れをガラス張りにでき、純投資目的の投資家も参加しやすい。
SPC自体が金融機関から融資を受けられるメリットもある。本業のプロで結成される製作委員会と比べ、コンテンツ業界以外からの資金を呼び込みやすくなるというわけだ。
ただしSPCの設立登記など、スキームの設定と維持に比較的手間と費用がかかるため、大型かつ長期にわたるプロジェクト向きとなる。
JDCは2003年、ベストセラー児童書「かいけつゾロリ」(ポプラ社)のアニメ化にSPCを活用したスキームを設定。最近ではGDHが米国向けアニメ「アフロサムライ」についてSPCを設立した。
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