ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)「mixi」内の日記を書籍化した「59番目のプロポーズ」(6月15日発売、1575円)は、他のブログ本とは一線を画す。縦書きの文芸本で、表紙には「ネット」や「ブログ」という文字がない。mixiのファンコミュニティーで募集した文章を帯に採用。コミュニティーでキャンペーン手法を募っている。出版社と筆者とファンが、1つの“文芸作品”を、一緒に作り上げている。
筆者のアルテイシアさんが日記を書き始めたのは昨年12月(関連記事参照)。軽妙な文章と濃い内容が、mixiに参加する編集者や作家の間で評判になり、1月ごろから、出版のオファーが次々に来た。
美術出版社の大下健太郎社長もオファーを出した1人。作家の友人から勧められてこの日記を読み、とりこになったという。「(アート関連本がメインの)美術出版社とは微妙に合わない分野だが、ぜひうちから出したいと思った」(大下社長)。社長自ら神戸に出向き、大手出版社など10社もの競合がひしめく中アルテイシアさんを口説き落とした。
「文章が軽快で面白く、内容のある本。ブームに乗っただけのブログ本と思われたくない」(大下社長)。純粋な文芸本として発刊しようと、表紙からは「ブログ」や「ネット」という文字を廃した。タイトルは、アルテイシアさんがニックネームに利用していた「59番目のプロポーズ〜愛戦士編〜」の案を却下。「59番目のプロポーズ」だけにして、ネットユーザーやガンダムファン以外にも受け入れてもらえるよう気を配った。
読者の力も借りた。mixiのファンコミュニティーには、ファンの1人が「59番日記ベストセラー化計画」のトピックを立ててプロモーション企画を募集。いくつかは実際に行うことにした。帯の言葉は、ファンコミュニティーでもっとも人気が高かったものを使った。
初版の部数は「かなり強気」。書店に驚かれるほど刷ったという。それも「mixiでの読者の反応を見ていて、自信がついたから」(大下社長)。
書店は今、次々に発刊されるブログ本に飽き飽きしており「ネット関連の本」と聞いただけでいやな顔をする店もあるというが、59番目のプロポーズは「実際に読んでもらうと、書店員も納得してくれた」(大下社長)。注文の数も順調に伸びているという。
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